動かなくなった愛犬の
柔らかい頭を撫でながら
いつになったらこの部屋を出て
外の世界を見れるのか考えてる
この声を拾い上げて欲しいの。
指でつまんだ喉の隙間から頑張って漏れようとしている息みたいなこの声を。
「またね」そんなとるに足りない言葉でも、
あの人の「じゃあね」に比べたら、
全力で首、縦に振りたくなる。
桜尾さんの話を聞いて改めて思った。
(人の死って、突然なんだ....)
実際、唯も両親の死でそれを実感した。
自分もいつ死ぬか分からない....。
「白帆さんって、不思議だね。すぐに心を許してしまった。今まであまり人を信じれなかったのに」
(えっ.....)
そんなこと始めて言われた。
そんな力が私にあるんだろうか...。
それから家に着くまで私も彼も
一言も話さなかった......
「あのさ....いきなりよくも知らない男にこんなこと言われるの嫌かもしれないんだけどさ......」
「....?」
「たまに、たまにでいいからうちの店に手伝いに来てくれないかな?」
全く嫌じゃない。
むしろ嬉しい。
初めて人に頼られた。
「もちろん!私で良ければ、いつでもお手伝いしに行きますよ」
彼は笑った。
初めて会ったあの時のように。
まるで花開くように。
―まだ肌寒い5月の初めの物語―
後のヤマトタケル...生名「タケル」と名付けられたその子はすくすくと育った
彼が7歳となった時、すべてが始まった...
銅鏡が爆発した...いや、正確には内側から
人が駆けつけたとき、銅鏡の前に見慣れぬ外套を纏った人が倒れていた
名を神崎 士郎、彼はほとんどの記憶を失っていた
覚えていたことといえば妹(らしい)の名前、ミラーワールドという単語、そして13個のカードデッキの生成方法...
どれもこの世界では理解されなかった...
真っ先に気づいたのは士郎だった
「誰だ...」
いつもと変わらぬ静かな口調で呼び掛ける
「あなたはこの世界の人間ですらない...ましては、私とも違う...あなたは何者なのだ...」
静かに『気配』が答える
士郎が『彼』を捉える
「(やれ)」
そう士郎が念じると『彼』の背後にあった水溜まりから鳳凰型のミラーモンスター...ガルドサンダーが出現し、『彼』に一太刀を食らわせんとする...
『彼』はいつの間にか、士郎の前に立っていた
「残念だ、あなたなら私の理想を叶えられると思ったのだが...」
『彼』は冷ややかな目をして言った
士郎の直感のもとたまたま通りかかった村人にある一枚のカードデッキを投げ、姿を変えさせた
神崎士郎の切り札にして傀儡である黄金のミラーライダー、仮面ライダーオーディン 降臨!
「残念だ...」
『彼』の腰には士郎の見たことのないベルトが巻かれていた
そして...
「変身...!」
『ザクロ!』
『ブラッドオレンジ!』
ロックオン!
カッテングブレードをおろす
『ブラッドザクロアームズ!狂い咲きサクリファイス!』
『ハッ!ブラッドオレンジアームズ!邪ノ道 オンステージ!』
血に濡れた救済者の名を冠する
アーマードライダーセイヴァー 降臨!
後に、数奇の運命に翻弄された2人が巡り合った瞬間だった...
RPGの英雄にだって「闘う」だけではなくて、「逃げる」のコマンドが用意されているんだら、誰だって逃げていいのだろうし、それは死なないための最善の手段かもしれないし、次に闘うための準備なのかもしれない。闘いたくなったら闘う、それくらいでいいんじゃないかな。
―ある暖かい春の日のことだった。
僕はその頃、自慢じゃないけど彼女がいたんだ。
彼女はこの町に住んでいた。すごく綺麗な人だったんだ―
「桜、綺麗だね」
「あぁ」
その日、僕は彼女のいる町に花見にきていたんだ。
それから、彼女が買い物がしたいって言うからショッピングセンターに向かっていたんだ。
それは、突然の出来事だった.....。
信号待ちをしていたら小さい男の子が、ボールを追いかけて道路に飛び出してしまったんだ。
彼女はその子を助けて、自分は車にはねられた。
すぐに病院に搬送されて彼女は治療を受けた。
けど、手遅れだった。
彼女は事故現場で僕が近づいていったら
こう言ったんだ。
''体が勝手に動いちゃって....。ごめんね...。''
本当に正義感の強い人だ、と思ったよ。
なんであの時、僕は彼女を止めなかったんだろう....。なんであの男の子を止めなかったんだろう って今でもよく思うよ...。
僕は本当に駄目な奴なんだ....。
「ごめんね。すごく暗い話だったよね。って、なんで話したんだろう...。この話今まで誰にもしたことなかったのに」
また彼は''切なく''笑った。
ポケットにしまい込んだ 心とビスケット
どちらも長い間 ほっといたせいでヒビが入って
それをいっそのこと 僕は割ってしまって
2つになっちゃったねって、
片方は僕のポケットに
こうやって 何もかも二つにして
分かち合えたらいいなんて 理想論並べて
決して僕は君を守れないけど
ただ君を愛してる そう ただそれだけ
作り笑いが染みついた君の顔
僕に向ける笑顔は 本物?それとも?
きっと答えは後者だろ
「僕が笑顔にしてあげよう」容易くは言えないな
僕には見えない 差し伸べてるはずの君の右手
気づかないうちに 僕もしくは誰かが振り払った
可愛らしい置物があったり、すごく古そうな本が置いてあった。
「そういえば、白帆さん、大学生だったよね。将来の夢とかあるんですか?」
桜尾さんは店の奥で商品の整理をしながら尋ねてきた。
一番聞かれたくない質問だった。
私の将来の夢.....。
私が答えられずにいると、彼が話し出した。
「夢ってさ、いつまでに決めればいいんでしょうね。僕はまだ決まってないんだ。あっ、ちなみにこの店は僕の夢じゃないですよ。邪魔って言われたものたちを売るためにやってるんです。全部売れたら閉めますよ」
「そうですね」
夢......。
「僕はこの店をやりながら見つけていこうと思っているんです。ゆっくり見つけていこうかなって。時間は余るほどあるし」
ゆっくり。
私もそうしていいのだろうか......。
「あっ」
少しの間沈黙があった。
それを破ったのは彼の方だった。
「白帆さん、雨降りそうですよ」
そろそろ帰れ、ということだろうか。
「雲行きが怪しいから。夕立にうたれてしまう」
心配してくれているのか。
でももう少し、もう少しだけ.....
「手伝っちゃ駄目ですか?商品の整理」
彼と話がしたかった。
「えっと....僕はいいけど...大丈夫なの?...その..帰ってやらなきゃいけないこととか....」
「大丈夫です。どうせ家に帰っても暇なだけなので」
「そう。ならお願いしよう」
それから
彼と話した。
お互いの趣味や特技、どんな人間なのかを。
商品の整理をしながら。
「よし。大体綺麗になったよ。ありがとう」
もう外は暗い。
ここからあの団地まではさほど遠くないし、
何より桜尾さんも同じ団地だ。(しかもお隣。)
「鍵、閉めるよ」
ガチャン.....
雨は止んだようだ。まだ少し空気が湿っている。
「♪明日はきっといい日になる~♪」
桜尾さんが小声でいきなり歌いだした。
「その曲、知ってます。いい曲ですよね」
「うん。すごくいい曲だよね」
あっ、またあの顔だ。どこか''切ない''あの顔.....。
「この町で、ある人が亡くなったんだ......」
もう私に心を許してくれたのか、この町にあの店を開いた経緯を話してくれた......。
ゆくえしら
ずの ほとば
しる ひしひしに
おもかげ あこが
れ ソデビームをすれすれ こす
も きみに 吹く風に ゆずしおれも
ん なつのよかん