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群青を思い出せない

群青色のブックカバー
群青色の19時の空
群青色の君のベルト
群青色の僕の描いた絵

忘れてしまった 何もかも
思い出せないの 何もかも

群青色の生命の記憶

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七月時雨 #5

よく知る双眸、立ち姿
影の差す顔は長らく見なかったもので―

少年は、その言葉を呟いたのでした
「ヴァレット……」
飴色の瞳が、ぱたりと瞬きました
にこりと口の端が上がりました



ヴァレットは、ユーリを見据えて言いました
「さぁ、覚えてる?」
少年は、一瞬、意味を理解することができませんでした
「ヴァレット、覚えてるよ」
「覚えてる?」再びヴァレットが問いました
「君の正義という名の罪。」

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サイダー

こんにちは、の続きから
手を取り合って踊りましょう
それじゃあまたね、の後には
夕日が尾を引く
影が伸びゆく
もう夏だ、の呟きは
染め上げていく
サイダー色に
目があって笑い合えたら
すべてわかると思ってしまう
もっと強く、のその前に
はじけてゆく
シャボン玉も君の声も

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贈り物

瞳から流れる雫は宝石よりも美しく
強さを与えてくれるだろう

辛さ、苦しみ、悲しみは
今の自分に足りないものを与えてくれる

笑顔、喜び、幸せは
自分だけでなく他人と分け合うことができる

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七夕

 体育の苦手な女の子がいました。苦手なので、体育が好きになれませんでした。
 体育の苦手な女の子はたいへん美しかったので、天の神様に気に入られ、抜群の運動神経を授けられました。
 ですが、体育は苦手なままでした。女の子は、たとえばバスケなんかのときのクラスのリーダー格の子のぐいぐいくる感じ、それをサポートするとりまきのみごとな連携に圧倒されてしまい、実力を発揮できないのです。
 不憫に思った天の神様は、もう体育をしなくてすむよう、天に呼び寄せました。
 女の子は天の神様のもとで、機織りの技術を身につけ、機織りマスターとなり、やがて織姫と呼ばれるようになりました。
 織姫の仕事は忙しいので、年に一度、誕生日の七月七日しか地上に戻れないそうです。これが七夕の起源とされ、ここから様々なエピソードが派生し、現在に至ります。

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ホントの気持ち

左胸にイヤホンジャックをぶっさして、ホントの気持ちをあなたに届けたい。

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理想へのアプローチ

あの頃は高校生に憧れて、その次は大学生が自由な大人に見えて。そして、着々とその憧れてたものになっていったけど、果たしてあの頃抱いていた理想に自分はどれだけ近づいているのだろうか。

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マニキュア

 化粧を開始する年齢が年々下がり、プチブランドでありながら有名ブランドをしのぐような豊富なカラーバリエーションなんてのも当たり前の世の中、マニキュア人口も増えた。
 昭和二十年生まれのわたしには(昭和で言われても若い人にはわからんか)、役所の職員などが派手なマニキュアをほどこしているのはさすがにいかがなものかと思ってしまうのだが、若い男性もやはり、TPOをわきまえない奇抜なマニキュアなどは好まないようだ。
 まあしかし、つまらぬ事務仕事やつまらぬ男性とのデートをこなさなくてはならぬことを考慮すれば、きれいな爪をながめることに慰めを得ようとするのもわからなくはない。
 最近は、ネイルサロンとかいう所でやってもらうのだろうが、キャラクターのマニキュアなどもあるようで驚いた覚えがある。
 仕事の合間、キャラクターに愚痴などをきいてもらうのだろうか。

「あなたがそのキャラクターなのよ」

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夏休み

 お父さんとお母さんがけんかしてわたしは夏休みにおばあちゃんの家に行くことになりました。
 おばあちゃんの家はエアコンはないけど川が近くてすずしいです。
 おばあちゃんの家は五十年前に建てられた家でたたみです。
 おばあちゃんの家で朝、目をさますと体に赤いぶつぶつができていたのでお父さんと皮ふ科に行きました。
 お医者さんはダニさされだと言いました。
 お医者さんからもらった薬をぬったけど治りませんでした。
 夏休みが終わるころお父さんがむかえにきたのですがお父さんはわたしを見てもう少しおばあちゃんの家にいなさいと言いました。
 どうしてとわたしがきくとお父さんは、お母さんは虫がきらいだからと言いました。
 わたしは虫になっていました。
 お父さんはおばあちゃんに、この子は虫みたいだけど孫だから殺虫剤をかけないでねと言って帰りました。
 おばあちゃんはわすれっぽいです。
 その夜ばんごはんを食べていたらおばあちゃんがわたしに殺虫剤をシューとかけました。
 わたしは霊になりました。
 だからわたしはずっと夏休みです。
 

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無題

はろう ミスター ご機嫌如何。
今年も贈り物をありがとう。
ところで今年の逢瀬の夜も
生憎の御天気になりそうですね。
身の裂かれる思いですけれど
荒ぶる川に貴方を奪われるなんて
そんなことは耐えられませんから、
どうぞ無理をなさらないで。
私はもう1年、
大人しく身を焦がしていようと存じます。

対岸より愛を込めて。


はろう ミセス ご機嫌如何。
今年も贈り物をありがとう。
次第に荒れてゆく空模様に私がどんなに
心を乱されたか、表す言葉が見付かりません。
折角の逢瀬の日です。
どんな蛇神だって斬り伏せる自信があるけれど
貴女の優しい思い遣りを
無碍にするのは躊躇われます。
せめて当日は仕立てて貰った着物を羽織って
貴女との日々へ思いを馳せましょう。

どんな時も滅せない愛を込めて。


はろう ミスター 粗末な嘘ね。
姦しい牛の鳴き声 切り裂くような
歓喜の叫びを ありがとう。


はろう ミセス 騙されないよ。
君の漏らした安堵の吐息が
庭の葦を震わせている。