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LOST MEMORIES ⅣⅩⅥ

「チャールズ、あなたは教えてくれないの?」
今度は普通に聞く。
馳せていた想いから脱け出すチャールズ。
「やはり鎌をかけようとしていたんですね。
そこまで不安はなかっただなんて、ハニートラップもいいところですよ。」
そう言いながらも微笑んだ。
「いずれ時が来れば言わざるを得なくなるでしょう。しかし、今はまだ早いです。
お嬢さまがおっしゃる通り、これはただのイニシエーションではありません。」
チャールズは、ふっと微笑みを消した。

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アオ

ワンツースリーで始めよう
僕らが始めなくたって
勝手に始まっちゃうんだ
これ運命だとか呼ぶんだ
抗うことなんてしないよ
きみは僕の唯一絶対
運命は僕と共同体
だから走り抜けようきみと
追い越せるくらいに速く

止まらない鼓動
抑えられない衝動
止めないで鼓動
抑えないで衝動

静かに燃える炎
何よりも熱く
それはもはや痛み
痛みに近い愛
僕らを動かす心臓
何よりも強く
それはもはや痛み
痛みに近い愛

空の色は赤でも黄色でも空じゃない
いつだって吸い込まれそうな青
世界に置き去りにされてるようで
悔しいや
僕から吸い込んでやろうか
青に
海の色は赤でも黄色でも海じゃない
いつだって飲み込まれそうな青
世界になおざりにされてるようで
悔しいや
僕から飲み込んでやろうか
青に

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運命

時の流れに身を任せるのも、一興
流れの中で眠りに着くのも、一興
その流れから大きな海へ旅立つのも一興
その流れをぶち壊すのも、一興
流れをせき止めて新しい流れを作るのも、一興
誰かの流れと合流するのも、また一興

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笑いすぎて涙を流すことがある

だったら、

涙を流したら笑えるよね

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特別だった日

胸が痛むのは
あなたを想っていたから
切なくなるのは
あなたが想い出として残っているから
または、それを想い出してしまうから

今日という日を忘れるために
記憶だけ残して消えていくために、
...せめて今日だけは、あなたを想わせて。

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「夢は多い方が良いよ」

「夢を叶えられる人なんてほんの一部だよ。無駄に多く持ったって疲れるだけじゃん。」
「夢が一つしかないよりマシだよ。」
「夢見心地な人なんて今は軽蔑されるよ。」
「それは他人の話だろ。自分が自分を軽蔑したらそこで初めて終わり。他人が自分の事を100%知ってるわけないんだから。」
「何悟ったようなこと言ってんだよ。だからダメなんだよ、お前は。」




「しょうもないことで夢を諦めたお前には言われたくない。」
「お前になにが分かるんだよ!」
「・・・・・お前もそうなんだろ。まだ諦めんのは早い。」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

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LOST MEMORIES ⅣⅩⅤ

上目遣い炸裂。
チャールズはたいそう嫌な顔をして、人差し指で瑛瑠の額をついた。
思いの外 力が強かったのか、瑛瑠は軽くのけぞり、額を押さえる。
「何するの!」
「お嬢さま。」
声は氷点下。
「誰彼構わずそういうことをするんじゃありません。」
「ええ!?」
「その顔で言われちゃ、誰でも絆されてしまいますからね。」
そういいながら、まったく,とため息をつく。
「あ、幸せが逃げる。」
「揚げ足とるんじゃありません。」
くすくすと笑う彼女に苦笑しながら、口を開いた。
「不安、ですか?」
そう尋ねるチャールズの方が不安そうだ。
瑛瑠は試すように碧い瞳を覗きこんだ。
「そう見える?」
困った顔をするチャールズ。魔法使いだからといって、心が読めるわけではない。
「……わかりません。」
瑛瑠は優しく微笑んだ。
「思っていたほどじゃないの。
明日も、楽しみ。楽しいと思わなきゃ、損だから。」
チャールズは少し固まる。 チャールズの知っている瑛瑠は、もっとずっと幼かったはずだから。

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LOST MEMORIES ⅣⅩⅣ

「そういえば、ヴァンパイアの彼がやったように、魔力を残すというのはどう?あまりにも短絡的?はやく見つかると思うのだけれど、魔力持ち」
「やめてください。」
やけに強く止める。
「……どうして。
ヴァンパイアは許されて、ウィッチには許されない理由はどこにあるの。」
焦っている……?
「彼にはきっと、何か考えがあったんです。そんなに簡単に、自分の居場所や正体を晒すような真似はしてはいけません。
それこそ、空間系を得意とするヴァンパイアにかかれば、魔力だけで生い立ちまで突き止めるような優秀な者もいるんです。先程、信用のおける人物ではないとおっしゃっていたでしょう。そんな真似はしないでください。」
深い深い碧に射すくめられる。
しかし、負けてはいられない。
「ねえチャールズ。何を隠しているの?この通過儀礼の目的は何?
最初からおかしい。おかしいことばかり。」
少し目を伏せる。そして、弱々しく言う。
「私、こう見えても不安なんだよ。よくわからない土地に来て、今までとはまるっきり違う生活で。関わったことのない人たちの言動に驚いてばかり。
……ねえ、この裏に隠されているものは何?」

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少しだけ

そういや、あいつ今日誕生日だっけ、笑
おめでとう、19歳になった
君に。

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LOST MEMORIES ⅣⅩⅢ

口を開かないのを見て、そういえばと瑛瑠が言う。
「明日、委員を決めるみたいなの。制限はある?」
それに対してはこう答える。
「ありませんよ。
ただし、人間に正体をバレるような真似だけはしないでくださいね。」
気味悪がられるから、だろうか。瑛瑠は、魔女狩りの歴史を思い出す。人間が存在すると知った今、伝説だと思っていたあの話も、実話なのかもしれないと思ってしまう。
「一応、理由を聞かせて。」
覚悟が変わってくるのだ。
チャールズはひとつ息をつく。
「面白がられるからです。」
一時停止。思っていたのと違う。
「気味悪がられるからじゃないの?」
「このご時世人間たちは、彼らのいう超常現象とやらに寛容ですからね。気味悪がられるというよりは、もてはやされると思いますよ、魔法なんか使っては。」
やけに吐き捨てるように言う。
「変にまわりを刺激させてもいけませんしね。」
含みを感じたのは気のせいだろうか。