突然、飛び込んできたメッセージ
月が綺麗ですね
見上げてみても月は出てない
貴方が伝えたかったことって
もしかして
愛してる
ほんとだ 月が綺麗だ
「でも。」
望は歩くことを再開する。瑛瑠にどう反応して良いものかを考える時間すら与えずに。
「だからどうしたいとかじゃないんだ。」
振り返り、瑛瑠に笑いかける。
「置いてくよ?」
瑛瑠は慌ててついていく。
「あ、あの、」
「ぼくは。」
瑛瑠の言葉に自分の言葉を重ね、ふうと息を吐く。
「ぼくは、瑛瑠さんを困らせたい訳じゃないんだ。」
しわ寄ってるよ,そう言って眉間を軽くつつく望に、2日前の荒れたような気はない。
瑛瑠は絶賛混乱中である。何が、どうなっている。
「すべての原因は、ぼくが瑛瑠さんに寄せる想いなんだよね。
だから、我慢できないなら我慢しなきゃ良いと思ったんだ。」
前半はそうなのだろうと、他人事のようにではあったが感じていた。しかし、それがどう転んで、だからに繋がるのか。
>そっちから見える?
何が?<
>月。
>今日は中秋の名月だから
へぇ<
テレビ見てた<
ちょっと待ってね、今外出る<
>どう?
んー、雲に隠れてる<
お<
見えた見えた<
おーきれいきれい、すごいよー<
すごく明るい<
>ほんと?
>写真送って
そっち曇ってるの?<
>そうなんだよね……
>見てみたくてさ、お願い!
いいけど<
>けど?
いや、いいよ?<
>やった!
ん、うまく撮れない<
撮れた<
こんな感じでどう?<
届いた写真。
白く光る月。
細い指のピースサインが写っている。
宮城―東京間の距離は約300km。
地球ー月間の場合は約385,000km。
どっちも遠いには遠いんだけど。
きみのその手の方がよっぽど近いんだよ。
>きれいだね
そうだね<
私が骸になるべきだったのか
呪いがまだ解けないままだ
舌を出して 中指立てたって
弱い自分が変わるわけもない
怒る資格なんてあるのかな
所詮私もあなたと同じなんだ
自分の弱さ認められず
傷つけてしまったんだな
蝉の死骸すら美しくみえた
あてがおうとしたナイフは消えてしまった
あの人の伸ばした手が、脳裏から消えない
そんな夏を超えて
それでも私は生きている
それでも私はここにいる
髑髏が踵を返して
死に見放されて私は生きる
彼の伸ばした手は、暖かった
そんな疾風の如く
消え失せた夏だった
それでも
あなたにどれだけ嫌われようが
どれだけ好かれようが
もうどうだっていい
私の夏は、きっとそんなことだ
「月が綺麗ですね」
こんなセリフ、私にはかっこ良く言えそうにないから、ストレートな言葉で伝えようと思う。
そんなこと、「好きです」なんて伝えられるはずないのにな。
知らなかった、こんなに重いものだとは…
もうただのクラスメイトなのに、
同じ部活にいるだけなのに、
もう、糸はぷっつり切れてしまったのに…
他の誰かを好きになって、告白したくて、
その前に、けじめをつけなきゃって気がして、
あなたに、…てほしくて、
その勇気が湧かなくて、今日もうだうだして、
俺の臆病さを呪って、
今日が終わってく。
手の平は灼けた
屑になって
触れられない秘密が花びらが落ちるように花が枯れていくように
言葉もない
弓なりになった月
明日の行方
君はいつも笑っている
手探りだったのに
蝕まれた患いで落ちるような気がした
秋の匂い
秋の風
鉄紺色の月
銀杏の葉っぱ
その全てが
だれかと愛し合いたくなる
温もりなんていらない
あなたの体温なんてあてにしてない
くすぐったくて起きた朝に
嘘はひとつもないから
何でも完璧にこなしていた
中の上の生活調整して
誰にもバレないように迷惑かけないように
生きたくはない
誰なんだ僕は
あえて焦がした方が美味しいよ、と
君は僕に作ってくれた
今ではもう自分で出来るよ
焦げてしまったベーコンと黄身の割れた目玉焼き