例えば「出逢い」がなかったら
ボクはボクじゃないかもしれない
例えば「貴方」がいなかったら
ボクは独りぼっちかもしれない
例えば「性別」がなかったら
苦しくはなかったかもしれない
例えば「愛」がなかったら
笑顔が無くなっていたかもしれない
例えば「心」がなかったら
寂しくなんかなかったかもしれない
「レイさん。」
「知っています。」
黙って見つめていると、苦笑して同級生ですよと答えてくれた。
「東雲さん。」
「……東雲?」
顔を少し曇らせた。
「どんな夢を見たんですか?」
「今質問しているのは私。答えて。」
チャールズの必殺技なんて使わせない。必殺技というには繰り出しすぎているのは置いておいて。
「知っていますが……。」
歯切れが悪いのはこの際目をつむる。あれは夢ではなく、過去実際にあった出来事だろうと、ほぼ確信めいたものを瑛瑠は得た。
本当はここで止めるはずだったのだが、思い出した名が2つあった。
「スティールさんとエレンさんも同級生?」
するとチャールズは、今までも何回か見せてきた、儚い哀しげな微笑みを見せた。
「そうです。……そのふたりも出てきたんですか?」
「いえ、名前だけ……。」
瑛瑠が、その問いに首を横に振ると、そうですかと呟く。その顔はまるで懐かしんでいるような寂しいような、どこか迷子のようでもあった。
「夢の内容を伝えます。」
早く教えないと。
義務に近いものを感じ、思わず悲痛な声を出していたことに、瑛瑠は気付いていなかった。
チャールズは、少しの間のあと、小さく頷いた。
音はなかったが、了承を得たということでいいのだろう。
「まず、エルーナというヴァンパイアを知っている?」
チャールズは驚いている。やはりあれは、ただの夢ではない。
「……知っています。」
少しの間のあとの答え。瑛瑠は進める。
「では、次。ジュ」
「え、待ってください。それだけですか?」
きっと、そのエルーナについて言及されると思っての間だったのだろうと思うが、生憎知っているかどうかを確かめたかっただけの瑛瑠は、エルーナについては聞かない,と応えた。
だからもちろん、そのあとの人のことは多少聞きたいということでもあるのだが。
「次、ジュリアさん。」
「知っています。」
「同級生?」
「……彼女については聞くんですね。」
「エルーナについては聞かないと言っただけ。」
軽くねめつけられたが、微かに笑って続ける。
「同級生です。」
「もしかして、彼女が優秀なヴァンピール?」
「そうです。」
聞いたことにしか答えてくれないなと思うも、仕方がないのかもしれない。
そう切り替え、次の質問に移る。
俺が髪型をツーブロックにしてズボンを履いて学校に来た時の、クラスの奴らの反応はこんな感じ。
①ザワつく
②遠巻きに見る
③無視する
④心配される
⑤めっちゃいじる
まあ、だいたい予想どうり。②と③が多いかな。あんま普段話さない奴はだいたい②と③。ハルさんとかみたいに普段そこそこ話す奴は④が多いね。⑤はりんこさんだね。あいつは今日に限らず普段からめっちゃいじってくるし、まあ普通っちゃ普通。
先生方は①とか②とかかな。担任の先生なんかは何事かと心配してくれたけど。
けど、やっぱりというかなんというか、あいつだけは全然違う。①〜⑤番のどれにも当てはまらない。強いて言うなら、⑥番とか⑦番とかって感じか。
俺の気持ちを汲み取って、なおかつ俺の新しい門出を祝福してくれた。
勇気を褒めたたえてくれた。
正直、嬉しい。
けど、
俺は、あいつから影響を受けるだけなんてもういやなんだ。
逆に、あいつに影響を与えてやるぐらいの存在でいたいんだ。
これは、あいつにはなれなくても、あいつのような存在に近づきたいという、
俺の決意表明だ。
先輩。
不器用で
人付き合いが苦手で
天然で
優しくて
ちょっと冷たくて
輝いていて
かっこよくて
先輩の全てが大好きです。
さよならを言いたかった
最後に話したかった
せめて顔くらい
そんな叶わない願いを
夜空に祈るようにつぶやく
どうせ届かない
どうせ・・・
だって
どうせ
しょうがない
そんな言い訳を言って、
自分の実力が無いのを
否定する。
何回繰り返して来ただろうか。
だんだん本当のことが分からなくなってゆく
「今のままでいいわけ?」
そんな先生の言葉を思い出す。
胸が締めつけられる。
うるさいよ。元気になれとか、来て遊ぼう、とかそんなの上っ面なのに頑張って行ってその結果がこれだよ。友達なんて裏切ってなんぼじゃん。そんなもの必要じゃない。大っ嫌いなんだよ。
なんでそんな大勢で来るの。来ないでよ。迷惑だよ。所詮誰かそんなかに好きな子がいるからだろ。そんなやつはくんなよ。頼んでないし。むしろ頼みたくもない。お前らが来ることでこっちは死にたくて辛くて苦しくてたまんないんだよ。
そんなこと言ったってわがままだって?そうだよ。わがままだよ。でも、これが私の気持ちだよ。ってか、なりたくてこんな風になってない。そういう風にならせたお前らが原因だよ
答えなんてないのに。頑張ってとか頑張ったよ。大丈夫?大丈夫じゃないよ。そんなの言わなきゃわかんない。わかってるでも怖くて言えなかった。ほんとは嫌われたくなかった。
大っ嫌いだけど大好きな人間もいるって知ったよ
風が少しずつしめりけを帯びてきて
もうすぐ海に出る路に突き当たる。
ハンドルを回して(町並みを縫って)
ペダルを踏んで(初心者マークの白い車)
用もないのに、海沿いをとおって帰るよ。
ずっと歩いていったらさ
またお家に帰っちゃうよ
河沿いを歩いてたら
どこまでも終わりがなくて
歩けど歩けど
なんだか遠ざかっている気がして
そうか、私の帰る場所は
やっぱりひとつだけなんだ
本当は期待なんかしちゃダメだったんだ
離れたことが分かった瞬間に
あなたへの想いの灯火を消さなければならなかったんだ
それなのに待ってしまった
愛されたいと思ってしまった
あの時目が合ってしまったことから始まった、
絶対に届くことのない、届けてはいけない
片想い
「その前に教えてほしいことがあるの。」
瑛瑠はチャールズと向かい合って座る。今日置かれたのはホットミルクだ。これからの話で冷えないようにだろうか,と他人事のように思う。
チャールズは穏やかな顔だ。
前にもにたようなことがあったことに想いを馳せる。あれは、チャールズのことは知らないという言葉を放ったときだっただろうか。あのときも、再び顔を会わせたときは平然としていたっけ。
「お嬢さま?」
覗き込む碧い瞳は今日も綺麗だ。
「私の夢には登場人物がたくさんいるのだけれど、チャールズの知る人かどうか聞きたいの。」
「……なぜ?」
「チャールズ、あなたが出てきたから。」
BABY BABY 愛を焦ることは無い。
きっと100年後も同じことを言ってるだろうから。
人間ほど無駄な思考を持った生き物はいない。悩みのタネは、猫に聞いたら笑い飛ばされたよ。
気になる女の子の気になる人を知ってしまうという悲劇。
やりたいことが多すぎて手がつけられないという悲劇。
煽るように酒を飲みたいが下戸という悲劇。その前に未成年という悲劇。
BABY BABY 日々を焦ることは無い。
きっと100年後も同じことを言ってるだろうから。
僕らが大人になる頃には、長生きが主流であるという悲劇。
病気が治るという悲劇。
みんなが嘘を付き合うという悲劇。
たった1人も愛せない悲劇。
BABY BABY 死を焦ることは無い。
きっと100年後も同じことを言ってるだろうから。
嘘にならないように
それだけに気をつけて
靴紐がほどけないように
それだけに気を配って
BABY BABY
BABY BABY
BABY BABY
BABY BABY
バカなことも言えないという悲劇。
本気になれないという悲劇。
自分を騙してわらっているという悲劇。
死にたくなるような悲劇を、生き抜いてしまう悲劇。
明日も目覚めるという悲劇。そして繰り返す悲劇。
人生の悲劇の大半が、小さくてショボい。
それすらも悲劇。
BABY BABY 愛を焦ることは無い。
きっと100年後も同じことを言ってるだろうから。
人間ほど無駄な思考を持った生き物はいない。悩みのタネは、猫に聞いたら笑い飛ばされたよ。
BABY BABY 日々を焦ることは無い。
きっと100年後も同じことを言ってるだろうから。
人間ほど無駄な感情を持った生き物はいない。悩みのタネは、鳥に聞いたら笑って飛んでいったよ