「じゃあ、あとはもう普通の質問に移れる。」
眉を下げて微笑う瑛瑠に、チャールズも微笑んだ。
普通かどうかと問われれば普通ではないのだが、瑛瑠が心を痛ませることがないという面で普通だ。
「まず、10年前に何があったの?」
答えはない。どこまで答えても良いかの思考時間だろうか、はたまたこの事に関して話す気がないか。
「質問を変えるね。ジュリアさんは、チャールズよりも年下よね?」
「……はい。」
チャールズは不思議そうな顔をするもyesと答えた。言質はとった。
「私の予想なのだけれど。」
そう前置いてチャールズの目をしっかり見つめる。
「10年前に、何らかのプロジェクトがあった。それは、狐が絡む何か。そのプロジェクトのメンバーが、チャールズを含む人間界送りの同級生たち。条件は成人になる者、とかかな。ジュリアさんはそこまで達していないけれど、能力があるからヘッドハンティングされた。私の夢から、みんな王族関係者か地位のある方々だと思うの。」
瑛瑠はチャールズから目を解放する。
「さっきは伏せていたのだけど、私はチャールズをお兄ちゃんと呼んでいた。」
運命なんて信じない
覆したのは貴方だった
確かに私と貴方は
繋がってた
だって
貴方に出逢って
分かったんだもん
思っちゃったんだもん
運命の人だ
って
馬鹿みたいでしょ?
でも
本当
ふわり
衣擦れの音がして
あの懐かしい匂いがした
嗚呼
こんなところにいたんだね
ずっとずっと探していたよ
振り返ったそこに
君はもう
いなかった
つま弾いた裏に終わりが来ることを覗かせている
同じ気持ちしかないことの危うさと安寧が泥沼のように
体温が違うだけでは理由に成り得なかったのかな
空っぽを抱きしめても息ができない
縋っていても繕っていてもつぎはぎになってしまった
足しても足しても1にすらならなくて
底のない暗闇を揺蕩うだけだった
今はいないあなたの温もり。
本当は元から存在していないのかと思うくらい現実は変わらなくて
でも、あなたのベッドは生暖かった
その温もりを忘れる前に私はあなたを
追いかける
君の小指が引っ張られた
私が引っ張っていた
でも君は気づかなかった
君はあの子を引っ張っていた
あの子も君を引っ張っていた
君とあの子は近づいていた
私は誰を引っ張っていた?
ばあちゃんの牛すじ煮込み
じいちゃんの焼いた鶏の脚
おばちゃんのお好み焼き
ちちのフレンチトースト
ままのチキンのトマト煮込み丼
忘れられない飯なんだ。
2年経っても忘れられない。
見るとあの日を思い出す。
食べられない飯なんだ。
もう会えない人たちのごはん。
どうしたって再現はできなくて。
たしかままのチキンのトマト煮込み丼を
初めて食べたのも
こんな秋のすこしひんやりした夜だったな。
食欲の秋
哀愁なんてもの漂わせて
スパイスにしてさ。
あったかい紅茶であたたまろうか。
今度こそ伝えようと
何度も僕は君の前に立とうとしたけど
やっぱり隣にいるだけで一歩踏み出せない
僕らこのまま友達の方が幸せなんだと
自分に言い聞かせて今日も一日が終わる
今日のお題にちなんで。
自分好みの料理がしたいと時折思う。
私は一昨日、それを思った。家には誰もいない。ならば、思い切って普段作らないようなものを作ろう、そう思った。
冷蔵庫を見ると、食材が少ない。使えそうなものは、卵、チルドルームにあったソーセージ、そしてじゃがいもと玉ねぎ。いくつかのアイデアが頭の中にポンと浮かび、消える。
そして結論を出す。
「トルティージャを作ろう!」
そうと決まれば、話は早い。
まず卵を4つボウルに割り入れ、塩と胡椒を入れ、また混ぜる。
じゃがいもと玉ねぎは薄切りに。食べ応えを出すためにじゃがいもは少し大きめ。ソーセージは3mm幅にカット。
フライパンに油を引いて、火をつける。油が熱に触れることでさらりとした頃合いを見て、じゃがいもと玉ねぎを投入。中火でしばらく炒める。炒めながら、塩を取り出したが、ここでミスに気がつく。単体での塩が足りない。
囲碁や将棋で悪手を放ってしまったかのような後悔がよぎるが、それもまた運命。諦めてあるだけの塩をフライパンに投入し、炒める。
ほんのりと焼き色がついたところで、ソーセージを投入。軽く炒める。じゃがいもに火が通ったようなので、大さじ3の水をフライパンに入れ、蓋をして蒸し焼きにする。
頃合いを見て、柔らかさを確認。また火を入れることを加味して、少し固めがいい。その固さであることを確かめ、先程の卵液に炒めたじゃがいも、玉ねぎ、ソーセージを投入。そしてその具材が入った卵液をしっかり混ぜて馴染ませる。
またフライパンに油をひき、具材入りの卵液を投入。蓋をして蒸し焼き。程よく縁が固まり、表面が乾いてきたと判断できたら、今回の山場、即ちオムレツの回転に移る。
フライパンに入り、かつ大きめの皿を取り出して、オムレツにかぶせる。1、2、3でひっくり返して、皿にオムレツを乗せる。乗せたものをそのまま、フライパンに入れてもう片面を焼く。
最後に少し火を強めて、焼き色をつけて完成!
味は及第点。よく具材が馴染むことで、各食材がいい味を出している。玉ねぎは非常に良かった。甘みがよく出て非常に美味しい。ただ惜しむらくは塩味が足りない。
しかし、卵4つは多かった。残った分は明日の朝食にしよう。そう思いながら、日曜日の夜は更けていった。
君のためならば
この命
今すぐにでも捨てられる
そう思ったんだ
何であろうとも
君に捧げられると。
でもね
今は
君と少しでも長く一緒に居たい
この命
1秒でも長く
君と一緒に居たいって。
もう二度と君を手放したりしない
ずっと傍に居てよ
お願い
君と一緒に居たいんだ
君がため 惜しからざりし 命さへ
長くもがなと 思ひけるかな
「この夢を踏まえて、質問があるの。答えてくれる?」
「答えられる範囲でなら。」
そう言うと思ったけども。そこははいでいいだろう。
瑛瑠はちょっと笑った。いつも通りだ。
「あまり困らせない質問をするよう善処します。」
共犯者のような微笑みを二人は交わし、瑛瑠が口を開いた。
「ジュリアさんたちのことが聞きたい。彼らは……?」
どうなったのか。生きているのか。
聞きたいのに、途中で切ってしまった。自分の言葉にくらい責任を持たなければならないと思うも、小さな勇気は最悪を想定して掻き消えてしまった。
瑛瑠は陰を落とした。そんな瑛瑠をチャールズは呼ぶ。
「お嬢さま、こっちを向いてください。」
声は柔らかい。
正面に座るチャールズは微笑んでいる。
「私の同級生は、みんな生きて帰ってきましたよ。」
その言葉に安堵する。ただ、引っ掛かりはまだ聞けない。
夢の中ふわりと飛んだんだ
『 現実』ってゆうビルから私飛んだんだ
夢の中なら飛べたんだ
夢の中なら自由になっていいでしょ
この世の中には「普通」が存在する
正しいのか間違ってるのかわからない。
確証もないただただ「普通」
普通とは平均であると思う。
上にも下にも飛び抜けてる奴もいれば「普通」の奴もいる
それを全部足して割る。
いいところなんか考えず。
それが「普通」。
大人が決めた当たり前。
本当に正しいか、なんて疑いもしない
そんな普通にしたがっていいのだろうか。
都合のいい人になっていいのだろうか。
朝起きて学校行って飯食って夜寝る
朝起きて学校行って飯食って夜寝る
毎日はこの繰り返し
だけど、ちょっとした出来事は毎日違う
その出来事に俺らは一喜一憂する
それも含めて日常
この日常を楽しくするかはあなたの行動次第だ。