オリオンのしたで襟を立てて
向こう岸に夜鳴きの通る町で
ぼくは、ひとり。
海の、ほとり。
ただ、おやすみ。
『Dandelion』は、この地域でずっと続いている喫茶店だと花から聞き、それについて帰路につきながら思い出す。英人の付き人の紹介で知ったこの喫茶店。チャールズも知っていたようだったから、以前からあったのだろうことは想像はできるけれど、もしかしたら思っているよりずっと前からあるのかもしれなかった。
さて、この思考の中で登場してきた英人を、少し離れた通りに見つける。どうやらひとりのようで。
そういえば、今日瑛瑠がひとりで『Dandelion』に来たのは、見事に友人3人に振られたことによるのだ。
英人は、ファッションビル前の入り口横の壁に寄りかかり、腕組みしていた。誰かを待っているのだろうか。
瑛瑠は、遠目から見えた英人の表情に、咄嗟に身を隠す。そして、自分の行動に驚いた。なぜ、隠れたのだろう。
瑛瑠は思う。見てはいけないような気がしたのだ。女の子といたから。
かぶりを振り、思考をかなぐり捨て、今は英人に見つからないことだけを祈ってきびすを返した。
明日は明日
体温のかけらもない
何度も念じた言葉さえも
簡単に溶ける、
枯葉の道を歩くたびに
ひしひしと痛む左胸が
まだいきているよって
もがいている
たった一度でとどめを刺されて
底のない渓谷に落とされるのなら
初めから終わりだって
教えてほしかった
完璧な詩が描きたかった。
海を鎮め、目玉を抉るほどにただ、美しいだけの。いつだって夢のような夢を観ながら泥臭いことばをこねくり回しては放り投げて、諦めたのはみんなぼくだった。
こんどは手加減なしだよ…
(本気で素晴らしい詩、自分も納得できて誰にも文句は云わせないぜってぐらいのものが描きたいです。本気でやります…)
美月視点
私と時雨さんは病院にいた。健診と病気の経過観察をしていた。私と時雨さんの病気ではない。
結月姉の病気だ。
結月姉の病気はとても特殊で、AIが開発した病気だ。でも、この話をするのはまた、あとでにしましょう。
【続く】
君の喜ぶ顔が見たくて
綺麗に咲いた花を渡したら君は泣いてしまった
どうしてお花の命を奪ったの
青空の下で咲けない花は可哀想だわ
けど君はこの花が綺麗だと思ってくれたのね
そういって君は何とも淡く美しく笑んで
消えてしまった
そこに残ったのは僕が摘んだ花の花弁でした
逃げて逃げて逃げて逃げて
あーーーーそっちはまずいんだよオオォォッ!
敵増えたァァァァ!!!
ヒット&アウェイで逃げ切れ!
ああ!そこで止まるなああああァァァァッ
あぁ…死んだ…
ここまで全てゲームの話。
ずっと手に持っていたそれは
ぐったりと萎れていた
もう遅かった
みっともないただの雑草
自分の手で壊した
自分の手で醜くした
潰れて花弁が落ちた黄色い花
馬鹿みたいに取り残された私の手
神様になりたかった
神様になって
下界の景色を見下ろしてやりたかった
下界の人間共を見下ろしてやりたかった
醜いものも
美しいものも
なんであろうと一気に見下ろしてやりたかった
人の波に紛い
必死に明日にしがみつくような日々を
神様になりたかった
神様になって
すべてを思い通りにしてやりたかった
神様になりたかった
マシュマロみたいにふわふわしていて。
チョコレートみたいに溶けてしまいそうなやわらかさで。
「大丈夫」
僕は大切な君に言いたい。
何が大丈夫なのかわからないんだ。
それでも君が言ってくれるみたいに
大丈夫だよ
って言うの。
君の言ってくれる大丈夫みたいに
ホットミルクみたいな心地いい温かさで
お菓子みたいにほっぺが綻んでしまうみたいな
大丈夫
が言えたらいいな。