さよなら
別々の道を歩いていた
十字路のその先に僕らはいるのか
またね
手を振って笑っていた
会えなくなる日も分からず
そっか
しょうがないよね
生活があるもんね
僕は
昨日に嫉妬する
「…ねぇ、その”情報屋”って、誰なの…?」
わたしは、おずおずと尋ねてみた。
「あ~、それはね…教えられないな~ 『言うな』って言われてるし。多分不見崎(みずさき)さんに身バレしたくないからだと思うんだけど」
彼女はそう言って苦笑いした。
「でも一応その人は異能力者だからね? 寿々谷の… わたしが言えるのはこれだけかな、うん」
笛吹さんは一通り言い終えると、また少し階段を下りた。
正体は分からないけれど、”わたし”という、”異能力者”にとって特殊な存在を知っている”情報屋”。―もしかするとその人は、案外わたしの近くにいるのかもしれない…わたしはそう思った。
「あ、そうだ、笛吹さん」
「? 何?」
わたしの声に彼女は振り向いた。
「さっき…助けてもらった時から気になってたんだけど、何であの時能力使ってまで助けてくれたの?」
わたしはふとさっき浮かんだ疑問を、笛吹さんに投げかけてみた。
あの時、別にそこまで仲良くもないわたしを、どうして―?
時計が針を刻む音に
うつらうつらしてると
きみがバニラアイスを持ってきてくれて
ソファにならんでスプーンをさして
またうとうとと眠りに誘われる
しんとした静寂と
きみの温かい肩
今夜はよく眠れるや
病院を出る。暑い。さっきまで冷房のよく効いた室内にいたもんだから余計に暑い。むしろ病院を『出てきた』というより、でっかい電子レンジの中に『入ってきた』と言った方が正しいかもしれない。暑い。熱い。セミよ鳴くな。余計に気温が上がる。松岡修造はセミの血を引いているのかもしれない。さすがテラジュールの男だ。こんな暑い日にはアイスが食べたくなる。それもとろけるアイスクリームみたいなベトベトするようなヤツじゃなくて、後ろにでっかく「氷菓」って書いてあるヤツ。そう、例えばガリ○リ君とか。赤城乳業はすごいと思う。チャレンジ精神とか。いやもう社名言ったら伏せ字した意味なくなるよな。
暑さを紛らわそうと、少女の頭は無理にフル回転して、その結果余計に暑くなる。早く家に帰りたいのに、家路を行く足取りは一歩ごとに重くゆっくりになっていく。
駅までの道のりには、小さな遊園地があった。少女は往路の途中ひどく興味を惹かれ、寄り道していきたい欲に駆られながらも予約があるので素通りしたのだが、この暑さの中遊園地なんて見ても、何の好奇心も湧かない。むしろ嫌悪感さえ覚える。その要因の一つは、入り口でこれまた暑そうなピエロの着ぐるみを着て風船を配る、一人のスタッフだったりもした。
ルーティンワーカー
いつもなんかおんなじようなことばっか
バカバカしくなったなんだかんだやっぱアレだ虎穴に入らずんば虎子を得ずだ
靨も痘痕 山もあれば
谷もあんのがこの人生だ
どの人生だ?誰の人生だ?
それはほらそれぞれの人生
惚れ惚れするぜ、俺の人生。
「虹彩異色症......私が?」
少女は思わず横の窓に自分の顔を映してみた。どちらの目も、紛れもない黒だ。
「ええ、そうなんです」医者が言った。
「確かに見た目には分かりにくいかもしれませんが、確かに虹彩異色症と同じ症状が出ているんですよ。昨日、耳鼻科にいらしったんでしたっけ」
「ええ、まあ......」
そう。少女は昨日、近頃右の耳が聞こえづらいので、検査を受けようと耳鼻科に赴いたのだが、幾つか検査を受けた後、
────ここじゃあ十分な検査ができないようですから、いい病院を紹介いたしますから、是非そこにお行きなさい────
と、この内科病院を紹介されたので、今日来てみたのである。
「その右耳の聴覚障害も、虹彩異色症の影響のようなんです。あなたには、若干ですが斜視の傾向も見られますし」
「で、これは治るんでしょうか......」
「うーん、今のところ治療法は存在しませんが、日常生活にさほど影響は与えないと思います。今違和感を感じてらっしゃるのも、左右の差が強まってきただけで、聴力そのものは不自由と言うものではなかったですよ。むしろ左耳が良すぎるくらいです」
「そうですか......」
じゃあなんともないのか。少女は安心したような、拍子抜けしたような、何とも言えない感情に苛まれていた。
「念のため、お薬出しときますね」
そういうと医者は、おもむろに処方箋を出してきた。
「何の薬でしょうか」
「えっとですね、これは、安定剤です」
..................安定剤?
「どうして安定剤なんかを」
「あ、不必要なら服用しなくっても結構ですよ。まあ、念のため、というやつです」
「......はあ」
言われるままに少女は処方箋を受けとると、
「ありがとうございましたー」
診察室を出て、受付で支払いのために名前が呼ばれるのを待った。
必死になれるほど
余裕じゃない
学校で堂々と勉強できるほど
莫迦じゃない
そして
みんなの気持ちに気づいてあげられるほど
アホデモナイ。
私だけを照らすスポットライトなら
イノチではらってもいただくわ。
私でない人も照らすから
カラダではらうしかないんじゃない。
莫迦にすんじゃねぇ
私だって人間だ。
「中身、何だった?」
よくスーパーのお菓子売り場に売っている、ウエハースがおまけに付いているカードの袋を開封しながら、友達が尋ねる。
「…これだよ」
うちはすっと彼女に袋の中のカードを見せた。
「The Fool…”愚者”、か。タロットカードの大アルカナの1番最初…」
「愚者?」
「そ、愚者。自由人。放浪者。このカードの絵柄の通り、道化師とも言う」
友達は自慢げに自らの知識―いや趣味を披露する。
「…うちにはさっぱりだなぁ」
うちはカードに描かれた愚者、いやむしろ道化師を眺めながら呟く。
「いつも自由にやってるあんたにピッタリだよ」
「そぉ?」
うちはちょっと首を傾げる。
「うち、これウエハース目当てで買ったんだけどなぁ」
「ホント、あんたらしい」
そう言って友達は自分のカードを見せる。
「あたしは…魔術師。どぉ? よくない⁇」
「さぁね…」
うちはカードのおまけのウエハースをかじりながら言う。
「にしてもあんたホントこういうの好きだね。集めてんの?」
「あー、お小遣いが許す限り、かな。まぁすでに何枚かダブってるんだけど」
「ふーん」
前々からそうだけど、こいつの趣味ってなんか変わってる。
変なカード集めてたり、変わった曲聴いてたり、オッドアイの変なぬいぐるみ連れてたり、ファッションだって個性的…ホント自由人、タロットの愚者、道化師そのもの。
「あんたって自由な人間ね」
ぽつり、と何気なくうちは呟いた。
「ふふ、ま、小さいころは周りに滅茶苦茶振り回されてきてきたからねぇ… 今は自分の意志で自由にやらせていただいてるよ」
彼女はそう笑って、ショッピングモールの屋上の柵から下界を見下ろした。
上から見える、ショッピングモールの入り口では道化師…いや大道芸人が芸を披露している。
彼女はそれをここから眺めているのだろう。
「なぁあんた、あれ…大道芸見たいんなら、下行けばいいんじゃない?」
彼女は長い髪を揺らしながら振り返る。
「ここからでも、あたしには十分見えるわ」
ああそうだったな、とうちは笑い返した。
フフフッ、とどこかわざとらしく笑う友達の瞳は、綺麗なネオンパープルに輝いていた。
いつものように、扉を開けて一日が始まる
風が吹き、鳥が鳴き、
そんな中を自転車で走り抜ける
車が道路を走る音はずっと続き、
鬱陶しく思うのに、
何故かそれが音楽に聴こえて楽しくも思う
変わりのない日々が来ることにワクワクしている
変わりのない、
変わりようもない毎日かもしれない
でも変わっても変わらなくても、
今はどんなことでも受け入れられる気がする
サインが言った。
「年をとるとわかる。形のあるものはいっときのものだが、思い出は一生ものだと」
「プロゲステロンはコレステロールから直接変換されるようだ」
コサインがパソコンの画面から顔を上げてつぶやいた。
「甲殻類アレルギーは甲虫のアレルギーからきているのだろう」
タンジェントが眼鏡を外して言った。
わたしがサインとコサインとタンジェントについて語れるのはこんなもんだ。
文句あんのか、だらぁ!
隣にの席の彼。私の好きな人。
彼は成績も良く、勉強もできて、おまけにイケメン。
そんなある日のことだった。
その日はテスト返しで、英語が返された。
私は91点。
彼はと言うと
同じ点数だった。
なんだか嬉しかった。
そして
「お、同じじゃん!英語、得意なの?」
「うん」 「英語、私好きなんだぁ」と私は言った。
すると彼は「俺も好きだよ。英語じゃなくてお前が」
へ?!
何言ってんのこいつ…
「え…ええ?!」何、急に…
「返事、欲しーなー」
彼は甘えっぽく言ってきた。
本当の気持ち伝えていいのかなっ
「わ、私もっ好き…です/////」
自分の顔が真っ赤になったのがわかった
「ふふっ嬉しい」
彼もにこやかな笑みを浮かべていた。
その後2人は長らく付き合いました。
前々から知っている方はお久しぶり、初めての方は初めまして。どうも、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」の作者です。タイトルの通り、期末テストが終わったので連載再開します。と同時に、この物語とは別の物語を始めようかなと思います。ま、いつ始めるとかイマイチ決まってないのですが。5話くらいで終わる短いお話です。…おっと、話がそれましたので本題に戻りましょう。「ハブ ア ウィル」は今日掲載する「4.フェアリー ⑭」から再開です。あと、7月・8月はわりと時間があるので1日に2回ぐらい書き込んだり、番外編もちょいちょい作っていく予定。さて、「ハブ ア ウィル ―異能力者たち―」は今夜22時台に再開です。待ってくれた人、お待たせいたしました。
目を開けると薄暗い部屋の中にいた。窓の向こうには1つのマリオネット人形。ぼんやりと考える。
私、なんでこんなとこに…?
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興味をそそられて入った場所はまるで異国の地、まさに異国。
アラビアンナイトに出てきそうな怪しくも美しい街だった。
活気にあふれる市場や、紫がかった色の空。
すっかり心を奪われてしまった。
子供達のはしゃぐ声。
おばさんが話す声。
どれも自分の知っているものとは違っていた。
深呼吸をする。乾いた空気が喉を撫でる。
この状況を不思議に思いながら、それでも受け入れる私がいる。
見上げた空が不意に陰った。
ぴかりと一筋の光が目の前を走る。
ざわざわと人が騒ぐ音。
燃えた1つの屋台。
肩で息をしながら走る。走る。
突然、視界が反転する。
痛い、いたい、いた…い。…痛くない…。
目を閉じる。
「雷にうたれたんだな、可哀想に」
なぜか一言だけ聞こえる。
体が動かない。
まるで人形みたいな私の体…。
______________________
目の前にあるのは窓ではなかった。
鏡、だった。
映された自分の姿。
青と黄色の瞳、オッドアイ。
誰かに持ち上げてもらわないと決して動かない体。
「出番だよ」
ぎしりと体が音を立てた。
少女はそこで目を覚ました。
異国からやってきた少女がひとり佇んでいた。
少女の、まるで金を鋳溶かしたような髪が夏の陽光を受けて溢れんばかりに輝いている。遠くの空の青を眺めていたその少女は、こちらを見ると笑いかけて寄ってくた。
「そんなに空が好きなのかい?」
「いいえ、違うわ。こちらの空は色が薄いと思っていたのよ」
そうかい、向こうの空の方がお好みかい? と訊くと、そんなことはないわと返ってきた。心がまだ遠くにあるような声だった。
「向こうの空は寒々しいほど青いの。夏なのに凍えてしまいそう。こちらの空は向こうのよりは温かいけど、でもなんだか嘘くさい青だわ。ひどくのっぺりしてるのね」
だからどっちもあまり好きではないわ、と明朗に話す少女。
「今夏はいつまでいるんだい?」
「全部お父さんの仕事しだい。私にはさっぱり分からないわ。でも少なくとも今日は大丈夫よ。お父さんが風邪をひいて寝込んでるの」
明日には治るわと自信ありげに話す少女の目には、疑いなど微塵も映っていなかった。
少女の眼。
彼女に嵌っているそれらの色は左右で違っている。虹彩異色症。俗にいうオッドアイだ。
「……うん、やっぱり青は嫌い。私の左目を取って、右目と同じ色にできないかしら」
カラーコンタクトならいいかしらと宣う少女が持つ目の色は青と金の二つ。左が青、右が金だ。空の色と、彼女の髪の色。
「そうか、青は嫌いか」
「ええ、嫌い。綺麗だし、愛おしいとも思うけどね。でもやっぱり好きになれないの」
「どうしてだい?」
「だってね、例えば水は青で表されるでしょう。雨も青で表されるでしょう。涙も青で表されるでしょう。私は人を憂鬱にさせたり悲しませたりするものは嫌いなの。……そう、たとえばあなたのことよ。キラー・クラウン」
青い涙が描かれているその顔から、低く嗤い声が漏れる。