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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 5.クラーケン ⑳

「とは言え、ただの常人さんにただすごいとか言われるのは嫌なんだけど。面倒なこともあるってのに…」
「うう、なんかゴメン…」
なんとなく、わたしは美蔵に申し訳ない気分になってしまった。
異能力を知ってしまった事とか、色々と。
「にしてもさー、ケンジの能力ってホント厄介だよねー」
ふと思い出したようにネロが呟いた。
「ま、そうだよな。他人の視界を奪うから、おれ達の能力実質無効化しちゃうし…」
耀平は苦笑いしながら言う。
「ついでに発光色は紺色だぜ? めちゃくちゃバレにくい色だから、発動しても分かりにくい。視界を奪われても他の異能力者は気配で分かるとはいえ、どこでクラーケンが発動してるか分かんないよな」
師郎は美蔵の方をちらと見て皮肉気に言う。
「だから初めて影響くらった時はあとで軽く倍返しにしてやったんだけどさ」
ネロはちょこっとだけニヤっと笑った。
その視線の先にいる美蔵は、うぐっ、とうろたえた。

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買ってください

夏が終わったら
夏の初めに戻って
やり直したいから
はじめての人間は
高くつくと聞いたから
買ってくださいと言ってるけど
指名制だったからね
さようならと
名刺を渡す。

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運命の出会いは必ずある。

一番はじめにそう言ったのは誰だっただろう。
前世のあなただったらいいのに。

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Blue Moon

I ask for the "New Moon"
月が隠れた真っ暗な夜空に
「会わせて」とないものねだり

I promise the "Crescent Moon"
「月末には絶対会おう」と
叶えられそうにない約束をした

I bark at the "Waxing Moon"
「今から会いに行くさ」と
できもしないことを騒ぎたてた

Man in the "The 14th Moon"
明日が来るのが待ち遠しくて
「月のうさぎ」が君にみえた

Once in a "Blue Moon"
長い間待ってた僕は君と
月明かりの下でひとつになった

Over the "Full Moon"
満月を超えるほどの幸せと
明日からかけてゆく月と日々

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Dear・・・

太陽なんて見えない 閉ざされた部屋の花瓶の花
暖かさなんてしばらく感じてなかったからね
すっかり忘れていたけれど
この空間の唯一の温もり
My dearest friend
君とボクはまだそんな関係だった
いや、もしかしたら ボクだけがそうだったのかもしれない
一体いつから君とボクはお互いの熱を分け合うようになったのだろう?
明日なんて暗すぎて見えなかったはずの部屋は
たった ひとひらの花びらで満たされた

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ツモリカサナリ

果たしてどれだけの嘘で
僕は恋を隠したのか

心を盗む 香りがしたよ
夜の僕らは 少しずつ
乾いていくのさ

演じてよ愛を 興じてよ恋に
どうせ今夜だけ きっと
こうして笑い合うのも
"Together Forever…"


果たして罪の味というのは
2人の体を締め付けて
心を癒し 積もり重なり
朝に僕らは少しずつ
蕩けてしまうのさ

演じてよ愛を 興じてよ恋に
どうせ今夜だけ きっと
こうして笑い合うのも
"Together Forever…"
なんて嘘みたいな
愛言葉

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自分

青、赤、黒、
色のように塗り替わる感情が
時に僕を
君を
知らない自分に知らない間にしてしまう

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人を信頼出来ないから
ちょっとの事で不安になる
考え過ぎかもしれない
怖いんだ
失うのが
だから、なくす前に
自ら線を引く
これ以上近づき過ぎてはいけない
人と距離を置く
私に親友が出来ない理由。

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桜木ノア #09 8月某日

『諦められるなら私はこんなに苦しんでない!』
そう悲痛に叫んだ桜木ノアの前で、冷静になれなかった俺がバカなのは重々承知している。ただこの時の俺は、問題を一問諦めて、ついでにやる気も失くしただけなのにそこまで怒られる理由はないと、思ってしまったのだった。
「……こんなに苦しんでないって、たかが勉強の話だろ。分からない問題くらいあって当然だろ。何を勝手に苦しんでるんだよ」
「勝手に……? 勝手にって言った?」
「そうだよ、勝手だろ?」
「じゃあ、君は私が好き好んで苦しんでると思ってるの!?」
「誰もそうは言ってないだろ!」
「もしも、もしも諦められたなら……私がこれまで抱えてきた傷の意味は!? 私が何のためにここまでやってきたと思ってるの!?」
バンッと、桜木ノアは机を叩いた。
その音か、机を叩いた際の痛みか、何が桜木を冷静にさせたかは分からないが、彼女は冷静さを取り戻したようだった。
「……ごめん。カッとなって」
「……いや、俺も、悪かった」
「……でも、私は、やっぱり諦めないよ」
前を見据えて、桜木は言った。
「私は、可哀想な女の子になんてならないよ」

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仮面

学校では良い子の仮面を被って
友達の前では明るく優しい子の仮面を被って
親友の前では明るくボケとツッコミを両立して
担当医の前では本当のことを言うけど
       良い子の仮面もかぶる
親の前ではニコニコ笑顔の仮面を被る

仮面をはずすのは一人になったとき

結構仮面をかぶるのって疲れるんだよな。

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領収書のお名前は?ご愁傷さまでお願いします。

薄い本とか言葉なんかよりも
欲しいのはウソかホントかの見分け方

おろしたながい前髪のなかで
しみでた汗と涙とアドレナリン
初めてでよくわかんないから
ちゃんと口にだして
白々しいのを

月のリビドー 溶けだす白露
道端の側溝 流れだす滔々と
漏れでる息を吸って意気投合
熱ってるスマホ 放って出掛けよう
光ってた画面より輝いてた
建物の間を縫うようにぬるい風
路地裏の子どもの鋭い眼光
歌声の合間にこぼれる小銭の音
口を抑えた指のすき間から
にじみ出る鳴き声 啼き声 泣き声

したの感触さえも信じたいよ
絡み合う螺旋を勝手にほどいて
愛を孕みたいの 賽を振るの
ハイリスクを肺に取り込んで吐いた
それがバイブル 愛してる
滲みでる汗と漏れでる声は
バイブ バイブル バイブレーション

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世にも不思議な人々㊱ 死なない人・死なせない人その2

「さて、少年?どうしてこうなったのか話を聞こうか?」
少女が大男に問うた。
「あー、そうだな、簡単に説明するとだな、まあこれを見てくれ」
そう言って大男は自分のスマホの画面を見せた。チャットアプリの画面が表示されている。少女がその文章を音読した。
「『逃げ足に自信のある奴集合!あの公園でケイドロしようぜ!日時は……』。……何これ。いやね、まあ、それに参加したってことなのは分かった。けどそれでどうしてあんなになるの?君はもっと自分を…まあ死なないし良いのか?」
「まあそういうわけだ」
「まあ良いでしょう。じゃあその時の話聞かせてよ。どういうメンツでやったのさ?」
「えー、メンバーは殆どクラスの男子で、主催者はジョジョだろ、他には」
「待って、ジョジョって誰よ?」
「所沢初だが」
「無茶が過ぎない?」
「そうか?で、他がクラス一の俊足だろ、『お前神か』が口癖の奴だろ、影の薄い奴だろ、二段ジャンプできるやつだろ、」
「ちょっと待って。二段ジャンプってできるもんなの?」
「そいつはできたからなー。んであとは、ジョジョが連れてきたお前くらいちっさい少女」
「ほう。それで?」
「その少女が鬼だったんだが、真っ先にクラス一の俊足がやられた」
「へえ、その子速いんだねえ」
「で、その次に俺がやられた。逃げるときに枝に引っ掛けるか何かしたんだろ」
「引っ掛けるのは服くらいにしてほしいよ……」
「んで、そこからが長かったな。鬼は二段ジャンプ使いを追ってたんだが、相手は空中を上手いこと逃げるからなかなか捕まらない。その間に影の薄い奴が解放に来たんだが、あの鬼、20mくらい離れた距離からそれに対応しやがったんだ。けど何故かそいつも捕まえるには至らない」
「はー。そんなことあるのか」

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終われない夏ってのが、どうやらそこにはあるようで。

うるさい心臓の振動が
いつまでたっても落ち着かない
冷めてたのは僕だけど
冷たかったのは君だよね
ぼくの空を見て
ぼくのそばにいて
音信不通は普通ですか?
使い道がなかったから
行くも戻るも気が進まない

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3年契約:1095万円

夏の天井も雪の結晶も
春の花粉も秋の風邪も
誕生日には歳を重ねて
大晦日には年を越して
手を握って手を繋いだ
足を組んで胡座を掻いた
お風呂はまだちょっと恥ずかしいね
でもおふとんはふたり一緒ね
起きたときにノータイムで
あなたの顔が見たいから

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cook&make

目の前に増えてく食材
調理の仕方を忘れた私は
呆然と増えてく山を眺めてる
どうにかしなくてはと
手を付けた
途端に崩れる山
そしてまた
積み重なり増えていく

食べてくれる人がいるから
私は、料理をする気になった
でも、誰にでも限界はある
でも今は
だから今は
また今は
積み重なり増えていく

そろそろ限界が来そうだ