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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 6.ハルピュイア ①

「ちょ、ちょっと待ってちょっと待って!」
昼休み、暑いながらもそれなりに人がいる廊下を、わたしは同じクラスの亜理那に引きずられて走っていた。
「とりあえずちょっと待って!」
わたしの必死の叫びをやっと聞き入れたのか、亜理那は立ち止まってわたしの方を振り向いた。
「なぁにサヤカ?」
「何って…」
イマイチ状況を理解していない亜理那に、わたしはちょっとあきれてしまった。
…ついさっきまで、わたしは教室でいつものように本を読んでいたはずなのだ。
だけど亜理那に、ちょっと会ってほしい人がいるんだけどさぁ…いい?と聞かれ、暇だからいいよ、って答えたら…こうなった。
誰かに会うと聞いて、教室出てすぐかな、と思っていたが、教室出てすぐどころか、廊下の突き当りのほうまで移動してきてしまったのだ。
…しかも走って。
走らなければいけないって事は、何か重要なことなのだろうか。
なんとなく、察しがつきそうな気がするけど。
「ねぇ亜理那…一体誰に会うの?」
誰に会うのかまだ分からないから、わたしは尋ねてみた。
「え、それはね~…まだ秘密!」
そう言って亜理那はまだ誰に会うかも伝えず、ただ人差し指を立てるだけだった。

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Warm

誰かが私のことを大切に想ってくれる
数じゃない
良し悪しもない
たった一人でいい
心からのコトバをくれる〝誰か〟がいてくれれば
それが、それこそが一番の幸せだと思うんだ

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夏バテかもしれない

蝉の声も
風鈴の音も
君の澄んだ声も
なんにも聞こえないんだ

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戦う理由

僕は血に塗られた戦場を行く

身を削られ、えぐられる感覚を感じながらも歩む足を止めなかった

天国も地獄もない

あるのは今、見ている現実だけだ

必死に刃を振りかざし

時には誰かを容赦なく切り捨て

踏み台にして

必死になって戦い続けた

死を恐れてないわけではない

生きるのに疲れてないはずもない

けど、この戦場で戦い続ける理由が僕にはあるから

守るべき人がいるから

僕はこの血に塗られた戦場で刃を振るうのを止めない

君に幸あれと‥‥

ただそれだけを願って

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新しいギター

風を起こした 嘘をついた
あばらが傷んで 足がもつれた

新しいギター 低く構えた
つまらないギター それで良かった
かわいいギター 時を止めて
ずっと 嵐ん中

シャラシャラ鳴った 空気 割いた
煙散らした 眼鏡 ずれた

新しいギター 寝転がってた
ボロくさいギター 甘く響いた
かわいいギター 歌詞を揃えて
ずっと 頭ん中


つまんないから 笑ってた
あの子がいないから
笑えないから 歌ってた
あの子はいないから

かわいいギター 音 くゆらせて
ずっと あの子ん中
ずっと 体ん中

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我儘でしょうか

晴れた日の夕暮れみたいに
当たり前にあなたのそばにいて
愛されていたいと思うのです。

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Aoi空

電停に立つふたり
"時のトラム"が通過した
愛だけを奪って
乗り遅れたふたりは3年後、
"時のトラム"にのった

きっと、3年前も今も
ふたりは手を繋いで歩く
ただ一つだけ違うのは
そこに愛はない
今では気心知れたfriend

展望台に立つふたり
一緒に行った街のエーガ館
今では跡形もなく
オフィスビルが建っている
台風一過の空を写して

きっと、74年前も今も
頭の上には一面のAoi空
ただ一つだけ違うのは
2羽の白いハトが
平和な時を運んでること

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仏の顔も三度までって。

仏様ってのは案外
人間のことが嫌いなのかもね
たかだか108の煩悩も許せないなんて
ひとの許せないところなんて
せいぜい一つか二つでしょ
全くの完璧を求め過ぎるのかもね
自分みたいな完全無欠をさ
神様くらいゆるくていいのに
女神さまくらい愛してくれたらいいのに

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きみが

君がね他の人とね
仲良くしてるの見るとね
なんだか心がくるしくなって
焦ってしまうんだよ
私の1番に君がいないことも
君の1番に私がいないことも
どっちだってつらいなんて
ただの我儘ってわかってるのにな

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_____の詩

鳴りやまない
あの言葉が
あの一行が
あの文字が。          A,本

鳴りやまない
あの歓声
あの拍手
あのイントロ。         A,ライブ

鳴りやまない
花火の音
下駄の音
景品が倒れる音。        A,夏祭り

鳴りやまない
グラウンドをかける音
体育館に響くボールの音
外にいても聞こえる合奏。    A,部活

鳴りやまない
君だけの着信音
LINEの着信音
君の声
体育館シューズの擦れる音
胸の鼓動
どうしよう
鳴りやまない
君の、きみの、キミの………
全てが。            A,恋

わたしの夏休み

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○○に、自分を当てはめて。#記者

記者:○○さん、今回の事件、どう思われますか?
○○:知りません
記者:友人の××さんが、行方不明なんですよね?
○○:はい、そうですけど?
記者:警察は、殺人も視野に入れているようですが?
○○:………何が言いたいんですか
記者:失礼しました……では、今の心境を。
○○:怖い世の中ですね
記者:それは、殺人のことですか?
   あなたも関係しているんですか?
○○:どうしてそうなるんですか。
記者:では、「怖い世の中」とは?
○○:まさか、わからないんですか
記者:………?
○○:あなた方のことですよ。
記者:私たち…ですか?
○○:メディアという殺人鬼、おそろしいですね
   あなたもそう思いませんか?
記者:………

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夏の匂ひ

朝起きて エアコンをつけたとき
フワッと香るアノ匂ひ
家を出るとき ドアを開けると
ムッとする空気の匂ひ
学校に着いて 靴箱を開けると
フッと感じるソノ匂ひ

家に帰るとき 自転車で汗をかくと
フッと感じるアノの匂ひ
夕立ちが降った後 地面から
ムッとするアスファルトの匂ひ
寝る前 天日干しした布団から
フワッと香るソノ匂ひ

「でも、君の匂ひが一番好きだ。」
なんて言ってる自分が
気持ち悪くて、吐き気がするから
くさいものには蓋をして
今日も君に伝える「イイ匂ひ。」

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世にも不思議な人々㊳ 歩く人・見せぬ人その1

「よお、二段ジャンプ野郎」
例の大男が彼の二段ジャンプ使いの少年に話しかけました。
「……、え、何、俺?」
「お前以外に誰がいる」
「こいつかな」
彼の横には、例の影の薄い少年がおりました。
「して、何用だい?」
二段少年(長いのでこう略します)が問います。
「おう、話は他でもない、先日のケイドロについてだ」
「あー、楽しかったねー。それが何?」
「あの時の二段ジャンプについて色々訊きたい。ありゃあ人間にできる動きじゃなかったぜ」
突然二段少年が狼狽え出しました。こいつは黒だな。
「あ、ああ、あれかい?あれは、ほら、体重移動の仕方と蹴り方の工夫でどうにかなるんだよ」
「馬鹿言え。そんな小説みたいなことがあるか」
「君今結構なこと言ってるぜ……」
「さあ、話してもらおうか…」
そう言って大男が二段少年に向かって一歩踏み出したその瞬間、どこからか、「カツン」と足音のような高く硬い音が聞こえてきました。思わずその音の方に振り向くと、何も無い。しかし大男が向き直ったとき、彼の二人の少年はどこかに消えていました。
と思ったら、少し離れた場所にいました。大男との距離を全力で引き離しにかかっています。大男は、彼らは黒だと確信し、追跡を開始しました。

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意味が分かると怖い話

デリーとボタンを押したあなたは
犬を殺せない人だった
全てが無に還るとき
もうすでにあなたは
この世から消えていた
え、僕って死んでたの?
じゃあこの体って誰のもの?
僕、さっきまで白いTシャツ着てたのに
いつ赤いTシャツに着替えたんだろ?
あと、この手に持っているものは?…ナイフ?
………痛っ。

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␣␣␣の詩

どうせ希望なんかありゃしないさ。
ドアを開けてすぐそこにあればいいのにね。

努力なんてできるやつだけが誇れるものさ。
手伸ばして届く土みたいなものならいいのにさ。

本当はみんな嘆くはずの唄。

僕と同じように走れないあの日のために。
どうしようもなく這いつくばって
手の甲に涙を一つ落とした
そんな日のために。

浴びる声はどれも紙クズだ
呼び出しをくらって視線を落とした
悪いのは僕なんかじゃない
そう言い聞かせて歩く
僕が正しいなら
みんなとうにいなくなってるはずなのにな

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人間は隠すことを覚えた
物を
秘密を
感情さえも
全てが隠され世界は無になった
そして何もわからなくなった

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 5.クラーケン ㉒

「…まぁ、僕から言えるとしたら、この人たちは敵に回したらものすごくヤバい人たちだって事です、はい」
美蔵は微妙な顔でそう言い切った。
「…そうなの」
わたしはポツリと呟いた。
確かに、この人たちは敵に回さない方が良いのかもしれない。
前に「常人は”異能力”に関わっちゃいけない」と言われた時に恐ろしいと思ったし、美蔵は彼らを見た時に動揺していた。
よくよく考えたら自分はかなりすごい人たちとつながりを持っているんだな…そう思った。
「…ねぇ、そろそろ駄菓子屋行っていい? いつまでもここでグダグダしてるワケにはいかないし」
話に一区切りがついたところで、ネロが切り出した。
「そうだな」
「じゃー行こーぜー」
「…まだ、買い物してなかったの」
みんなが駄菓子屋の方に移動しだす中、わたしは思わず言った。
「…いや、まだなんだけど」
ネロがぽかんとした様子でこちらを見た。
「あ、そう…」
「とりあえず行こうぜ不見崎(みずさき)。僕も用事済んでないし」
ボンヤリしているわたしを美蔵は追い抜かしながら言う。
「え、ちょっと待ってよ!」
わたしはまた置いてかれないように、彼らの後を歩き出した。

〈5.クラーケン おわり〉

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無名

きみのめは、わたしをみている。

わたしは、きみのめがみれない。

これはびょうきだ。

こいというなのびょうきだ。

ほかのいきもののめはみれるのに、

きみのめだけがきらきらしていて、

わたしのめとはちがう。

よごれてしまうかもしれない、

よごしてしまうかもしれない。

でもそんな穢れたわたしをだきしめて。

それでふたりで果てまで。

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夏は嫌いだ。
大好きな君の顔が見れないから。
君の顔が思い出せなくなってしまうから。
嫌いになってしまいそうだから。
あの笑顔を私だけに見せて、
そして抱き締めて、
思い出が風化してしまう前に。