「おぉ、よくぞいらっしゃいました。ささ、な…」
出迎えの挨拶を無視するように、赤毛の少女は屋敷の重い扉を押し開けた。
「あぁ、そんなに急がなくても…」
出迎えに来た屋敷の主は慌てて制止したが、少女はそれを気にも留めず、そのままズカズカと中へ入っていく。
屋敷の主人は早歩きする少女の後を追いかけるが、少女は振り向くことなくこう呟いた。
「…別に、まだ依頼を受けるとは言っていないのだけど」
「えぇ、それは分かっています。ただわざわざこんな所まで…」
屋敷の主はつらつらと長話を始めたが、少女は気にすることなく歩き続けた。
だから屋敷の広間に辿り着くまではあっという間だった。
「…あ、とりあえずどうぞお座りください。具体的な話は座ってしましょう」
いつの間にか広間に辿り着いていることに気付いた主人は、慌てて少女に椅子を勧め、給仕に茶を出すよう命じた。
だが少女は座るわけでもなく、ただ広間を黙って見まわしていた。
「…では依頼の話を。ここ暫く、領内では家畜の不審死が相次いでおります。最初はそこいらにいる鹿なんかが死んでいたりしたのですが、やがて家畜にも被害が出るようになり…」
少女は主人の話を聞き流しながら、大きな広間を見渡していた。
今までこういう貴族の屋敷に立ち入ることはあったが、ここまで広いのは初めてかもしれない。
「…調査したところ、やはり精霊の仕業のようです。しかも、土着のモノではなく、外来のモノで、かなり強力なモノらしく…」
だだっ広い広間を見まわしていると、少女の目に、何かが止まった。
それは広間の奥の方、カーテンの近く…
「配下の魔術師や外部の魔術師に対応を依頼しましたが、誰一人とて歯が立たず…て、聞いています?」
もしや自分の話を聞いていないんじゃないかと、屋敷の主人は少女の顔を覗き込む。
「…あれは」
屋敷の主人の質問には答えず、少女は広間の隅を指差した。
「外国にも狐の面ってあるのかな」
なかなかのイケメンが連れの女にきいた。
「検索すれば」
素っ気なくこたえた女は、目のぱっちりとした、鼻筋の通った、色白の、立派なバストの、つまりいい女だった。
「それが面倒だからきいたんだよ」
二人とも、シメのラーメンを食べ終え、いい時間を過ごしている。
わたしは熱々のもつ煮込みを口に運び、はふはふしながらテレビに視線を移した。
「アジアはわかんないけど、ヨーロッパでは狐はずるい動物ってイメージなんでしょ。日本では稲の害獣である鼠を食べてくれる益獣として認められてるから神にもなってるわけじゃない」
「稲荷大明神は狐じゃないぜ。狐は稲荷大明神の使いだ」
「原始信仰では狐が神なんだって」
へーえ。テレビより面白いのでついきき耳を立ててしまう。
「狐の面は稲荷信仰から来てるわけだな……お会計」
ほろ酔い加減で店を出ると、さっきのカップルが正面に立っていた。狐の面をかぶって。わたしは言った。
「美男美女だと思ったら狐が化けてたんだね」
「当たり前でしょ。こんなさびれたラーメン屋にわたしみたいないい女が来るわけないじゃない」
そう言って女が笑い声をあげた。なぜか、不快な感じはしなかった。
「おにいさん、よかったら、俺たちの店に来なよ。俺たちこの先でスナックやってるんだ」
一瞬好奇心に駆られたが、明日のことを考えた。
「遠慮しとくよ、狐が経営者じゃ何を飲まされるかわかったもんじゃない」
すると二人は(二匹か?)顔を見合わせユニゾンで、「そう、残念だ」と言って去った。
わたしは帰路についた、はずだった。
暗闇が広がっていた。
振り返ってみたが、ラーメン店はどこにもなかった。
突如寂しさを感じた夕方
私は君の温もりを求めた
隣りに君は居ないのに
来るはずない君を待ち続けた
夜
私は君と会う
心は塞いだままなのに
君を見ると涙すら出てこない
頭の中は真っ黒なのに
君と私は真っ新に見えている
「バイバイ」を言って
手を振って
君の顔を見なくなったら
突然溢れ出た涙の雨
外はいい天気で
満月まで見えてる
なのに
私の心は嵐が吹いてる
車の中から手を振る君に気づき
私は手を振り返す
私の涙に
君は気づいてるのかな?
この世界だって夢か現かわからない
胡蝶の夢ってやつだっけか
でも、君がその世界がいいと思うのならば
きっとそれが現実だ
「狐のお面」を使った詩やお話を読んでみたいんです
なのでリクエストします
狐のお面をどこかに使った作品を「狐のお面」のタグを付けて書き込んで欲しいです!!
レスもいっぱいつけようと思うのでご協力お願いします!
むかし、ある王国に、とってもおしゃれな王様がいた。
トレンドはすべてキャッチし、また自らもトレンドを作り出すファッションアイコンになっているにもかかわらず、なんかまだまだもの足りないなあ、なんて思っていたところに、世界各国を放浪して服飾ビジネスの勉強をしてきたという仕立て屋が現れた。
仕立て屋が王様にすすめたのは賢い者にしか見えない生地で作ったスーツ。王様はスーツが仕上がるとさっそくおひろめパレードを行った。
城門から王が姿を現すと、国民はちょっとざわついたが、賢い者にしか見えない生地というおふれが出ていたので神妙な顔で見送った。誰も王様は裸だ、などと声をあげたりはしなかった。パレードは無事終了した。
ところで、仮に王様は裸だ、なんて言うやからがいても王様は動揺しなかっただろう。何代も続いている王族からしてみたら庶民など犬猫同然、裸を見られたところで恥ずかしくも何ともない。だったらファッションを自慢する意味もないのでは、とおっしゃるかたもおられるだろうが、そこはそれ。代々続いた王族なんてものは著しく精神のバランスを欠いた存在なのだ。一般人の常識で考えてはいけない。
ガラスごしに今も見える
人気のないテラス席
うすい太陽 照らす席は
うすいコーヒーすすってる
ヒゲを生やした紳士が
あなただけ あなただけ
歳をとり 時のイタズラに
南京錠をかけられて
テラスにつながる扉は
今日も閉まったまま
夢見ごしにたまに見える
いつか笑ったテラス席
うすい太陽 照らす席で
うすいひとみに写ってた
冷めきったコーヒーが
いつの間に いつの間に
時は過ぎ また春がくれば
幸せ者でにぎわうの
テラスにつながる扉は
今日も閉まったまま
「もしもし?」
電話の先の君は泣いていた
どうしようもないくらい愛しく儚い日々
遠ざかりたくなくてただの一瞬のために
沢山の嘘を付いて来た
こんな僕を君は許してはくれないよね
そう思っていたからかな
「ごめんね」
それしか言えないまま
僕たちは明日から別々の春に向けて
静かに流れていった
さよなら
奔放な正論に目を奪われたんだ
大人じゃない僕には重すぎる感情だった
指の間をすり抜ける髪
木々の合間に消えていく問い
薄い言葉で書いた手紙を
ポストに落とせず肩を落として
そんなあの日から話は動いて
そんな思い出が僕を追いつめて
君はいない君はいない君はいない君だけがいない
何もない未来だ
屋上であの声を聞いた気がしたんだ
子供じゃない僕には幻だとわかっていた
飾らない本心を
何度も零しても虚しいよな
仮にまた君に会えたって
何も届きやしないよな
そんなあの日に君だけ残されて
皆忘れたように日々を過ごして
君はいない君はいない君はいない君だけがいない
何もない未来だ
最後だけ最後だけ最後の最後まで
君が笑う隣にいることがただただ嬉しかった
今もまだ今もまだ今までもこれからも
君を好きな僕でいることがただただ苦しいまま
そんなあの日から話は動いて
そんな思い出が僕を追いつめて
君はいない君はいない君はいない君はいないから
何もない未来に探しに行こう
何もない僕が生きる理由を
午前二時。いやに秒針の音ばかりが耳障りだった。目を閉じる。ああ、外には雨が降っているのだ。小夜時雨。こんなにも叙情的な晩が他にあるか。
ひやりとした鏡面に指を伝わす。また彼も、指を伝わす。
「一体全体、お前は何者だ。何処ぞの某だ。いい加減に、僕の真似事ばかりするのはよせ。」
彼は少し、面喰らったような顔をしたがすぐにその僕そっくりの顔面にいやらしい笑みを浮かべた。それは確かに僕の顔であり、けれど決して僕の顔ではない。吐き気がする。
「そうか、そうか、君は気付いていたのか。ならば早くそうと言ってくれよ。それにしてもな、人間は少し愚かすぎやしないか。少しばかり己を信じ過ぎではないか。なぜ鏡に映るのは、目に見ているのはそっくりそのままの世界だと信じて疑わないのだ。」
「まぁ、そんなに言うなよ。それにしても君、ずっとこちらの真似事ばかりしていていやにはならないのか。」
彼はため息をついた。
「やはり君も、何も分かっちゃいないのか。僕は君だ。僕は君と同一の肉体を共有した、君だ。真似事云々などと言うのが間違っているんだ。」
彼の瞳孔は微動だにせずこちらを見ていた。
「──そうか。では君、僕のことを殺してくれやしないか?」
彼はやはり無言でこちらを見つめている。
心地良きかな、雨の音。このまま昇華してしまいそうだ。どれだけ見つめ合ったかももう分からなくなってきた頃、彼はおもむろに口を開いた。
「──ああ、君がそれを願うならば。君のことを、殺してやろう。」
相変わらず秒針と雨の音は鳴り止まぬ。
「楽になれ、少年。」
また同じ、朝がきた。
分かってたはず分かってたはず
なのにこんばんは永遠の片想い
決意の夜に見た三日月
今窓から見える三日月
どうしてこんなに違うのだろう
どうしてこんなに滲みぼやけて
決意の夜に聞いたラジオ
今耳から抜けてくラジオ
どうしてこんなに違うのだろう
可愛い声も面白いギャグも入って抜けて
Ah………
7年抱き続けたものが
追い続け守ってきたつもりの光が
こんなに脆くて儚くて
そんなの知らなかったってんだ!
分かってたはず分かってたはず
あの光は僕のものじゃない
手に入れることは永遠に無い
それでも心は体は認めない
光がどれだけ儚かろうが
なんなら消えてしまったとしても
それでも僕は追い続けてる
見えるはずない光の影を
三日月のようにいつかはここに
戻ってきてくれる信じちゃってる
鏡のおくそこでもやもやとひかる
心のおくそこがくっきりと惑う
どこをどうゆけばのぞんだ場所に辿りつけるのか
どこか遠いところへ
だれにもあわないところへ
ギターと本をもって逃げよう
貴方の瞳にうつったわたしに色はありますか
わたしの瞳にうつった貴方に色は
みんなあたまがかたいね
思い込みはよくないよ
そう言ってくれた存在が私にはある
でもまだそういう存在にであっていない人もいる
だからね、そういう存在になることが
私のお仕事
私を変えてくれた存在に憧れて
とあるいなかまち、小さな女の子がまどの外を見ていいました。
「どうしてこのまちにはゆきがふらないんだろう」
すると女の子のお父さんが、うしろからちかづいてこういいました。
「このまちにだってゆきはふるさ。あしたにはいちめんゆきげしきになってるよ」
女の子は、ぱあっと、おかおをかがやかせ、お父さんを見上げていいました。
「ほんと、やったー」
つぎの日、女の子が目をさましてまどにかけよると、お父さんのいったとおり、ぎんせかいがひろがっていました。
女の子はうれしくなって外にかけ出しました。
女の子がゆきを手ですくってかんしょくをたしかめていると、お父さんがやってきました。
「お父さん、ほんとにゆきがふったね」
女の子のことばをきくと、お父さんはにっこりわらってこういいました。
「じんこうゆきをふらせるぎょうしゃによなかからがんばってもらったのさ。六百万くらいですんだよ。いがいに安かったな」
女の子は、さすがお父さんだ、とおもいました。