今頃きみは何をしてるのかな
あの日のこと、覚えてる?
君が
「月が綺麗だね」
って言ってくれた夜のこと
今日は嫌なことばっかだった
友達はいるけど
なんか虚しくて
彼の温もりが欲しくて
彼を待っていた
待っても待っても
彼は来ない
今日の彼は私くらい機嫌悪そう
自分どころじゃない
彼に何があったの?
聞こうとしても
彼は何も喋らない
それどころか
私を置いて何処かに行っちゃった
会えない
寂しい
辛い
帰り道で
私は大泣きした
彼は絶対気づかない
気づこうとすらしない
ねぇ、
何があったの?
その様子を見て少女はふふっと笑うと、目の前のモノに向き直った。
そしてこう呟いた。。
「…そういえば、”依頼”ってどんなでしたっけ」
”依頼”のことをすっかり忘れかけていた屋敷の主人は、ハッとしたように答える。
「えぇと…簡潔に言えば、領内で害を為す精霊の退治ですが…」
「…並の魔術師では対処できないから、私に依頼したのよね…」
少女はそう呟いた後、少しの間考えるかのように黙っていたが、不意に口を開いた。
「貴方も太刀打ちできなかったのよね?」
尋ねられて、屋敷の主人は恥ずかしげに、まぁ…と答えた。
…そう、と少女は答えると、突然屋敷の主人の方を向いた。
そしてこう言った。
「…その依頼、私が受けるわ。―ただし、報酬にコイツをくれないかしら?」
「…へ?」
屋敷の主人は想定外の言葉にぽかんとする。
「別に良いでしょう? 別に貴方が”マスター”というワケではないのだし。それと、依頼にはそれ相応の報酬が必要でしょう? 私みたいな、”お雇い魔術師”は特にね」
…駄目かしら?と彼女は笑いかける。
屋敷の主人は暫くの間、少女を見ながら呆然としていた、が、すぐに我に返って彼女に依頼するか考え始めた。
そして、屋敷の主人は口を開いた。
「…では、お願いします」
それを聞いて、少女は目を細めて笑った。
「…そう。じゃぁ領内の案内をお願い。精霊の出現場所とか、被害を受けた場所とかね。あとコイツを借りるわ」
あ、はい…と答えてから、屋敷の主人はへ?と呟いた。
「この使い魔を借りるのよ。便利な”武器”なのに、使わないでいるのは勿体ないわ…」
そう少女は言うと、広間の出入り口の方へ歩き出した。
「あぁ、ちょっとお待ちください」
そう言って、屋敷の主人も歩き出した。
少女はその言葉を聞かないフリして進んでいたが、ふと立ち止まって振り返った。
「…”お前”も行くわよ」
そう言われて、”お前”と呼ばれた使い魔は、ハッとしたように少女の方へ向かって歩き出した。
それを見て、少女は少しだけ笑うと、また向こうを向いて歩き出した。
君が大人になってしまう前に
ひみつ基地をつくるんだ。
そこに今までの思い出を置いていくの。
新しいものを抱えきれるように。
思い出せなくなっても、
忘れてしまっても、
君がひみつ基地の鍵を持っているかぎり
自分だけの宝物があるのだと。
君がその鍵を握りしめるたび
自分だけの大切な場所があるのだと。
そう思って安心して立ち止まれるように。
“私”はひみつ基地に思い出を置いていくよ。
精一杯の勇気を振り絞ってバイバイって言ったら
君が気付いてバイバイって言ってくれたから
少し震えている手で手を振ったら
君が小さく手を振り返してくれたから
ぎこちない笑顔で話しかけたら
君が柔らかい笑顔でこたえてくれたから
私が好きだって言ったものを
君がいいねって言ってくれたから
まだ諦められないでいるんだよ
瞳を閉じれば 見えてくる。
この世にあるたくさんの穢れが。
でも「それ」を見ないようにしている大人(ひと)がいる。
「それ」はきっと泣いていて、変わりたいと思ってる。
変わらなければいけないのは 僕らなのに。
瞳を閉じれば 見えてくる。
この世にあるいくつかの希望が。
でも「それ」を消そうとしている大人(ひと)がいる。
「それ」はきっと泣いていて、生きようとしている。
生きなければいけないのは「それ」だから。
消えようとしている「それ」がある。
生きようとしている「それ」がある。
「それ」を無視している僕らがいる。
「それ」はきっと泣いていて、
僕らのために歌ってる。
Q.あるパーティーで、牛のステーキが千人分出されました。もちろんお客も合わせて千人。そのうちの五百人が、牛が可哀想だからと、食べることを拒否しました。
そこに颯爽と現れたのは、ケルト神話の神のダグザ様。五百人前の肉を提供した牛達の骨を棍棒でぶん殴って蘇らせ、再び殺して美味しく食べて、また蘇らせて牛達連れて去っていきました。
残された人達はもうポカンとするばかり。
さて問題。いったい何頭の牛が『犠牲』になったでしょう?
A.肉の単位と牛の単位をイコールで計算できるわきゃ無いので私にはちょっと分かりませんね。
Q.確かに。しかしやっぱり、犠牲になるのは牛でなくちゃな。
きょうもはいいろのそらから
つめたいあめがふる
ねこはさまよい
のみちをすすむ
おひさまがてるあのまちをゆめみて
めいろみたいなげすいのなかを
ん?ねずみ?ちがうか、そろそろめもかすんできたな
待合室で待っている。テレビが流れている。
一つの事を話している。それを盲目に受け入れる。
空気が揺れる。同時に周りの自我も出始める。
私はそれが嫌いだ。身体に浸透し染み付いた欲望。テレビでは高級なスーツに身を包んだ偉い人が
理想の正義を口にする。世間一般。
建前だけの清々しいほどの綺麗な正義感。
私は知っている。裏ではそれ以上の
汚れきった事をしていると。
「…ああ、あれですか?」
屋敷の主人は少女が指さす方に目を向ける。
「…あれは…えぇ、まぁ…我が家の”家宝”みたいなモノにございます」
ふぅーん、と少女はうなずくと、静かにさっき指差した方へ歩き出した。
あ、ちょっと…と屋敷の主人はうろたえたが、少女は気にせず広間の隅へと向かった。
そこには、奇妙な人影が立っていた。
―足元まである真っ黒な外套を着、頭巾で顔を隠した、少女と同じくらいの人影。
豪奢な屋敷の広間の中で、それはあまりにも異質に見えた。
少女は人影の前まで来ると、後を追ってきた屋敷の主人の方を振り向いた。
「これ…」
「えぇ、まぁ…知り合いから貰ったモノなのですが…」
極まりが悪そうに喋る屋敷の主人から少女は目の前のモノに目を向けると、何を思ったかその頭巾に手をかけた。
「…!」
一瞬のうちにひっぺがえされた頭巾の下から、少年とも少女とも似つかぬ顔が現れた。
その目は驚きで大きく見開かれている。
「…そう、やっぱりね」
少女はそう呟いてニヤリと笑った。
「…コイツ、あの有名な魔術師の”使い魔”でしょう」
…えぇ、と屋敷の主人は小声で答えた。
「しかも貴方はコレの”マスター”ではない…」
「…まぁ、そうですが…どうして…」
屋敷の主人が尋ねると、少女はクスクスと笑いながら答える。
「だって普通の”ヒトのカタチをした”使い魔は、大抵主人のそばにいることが多いでしょう? 貴方のような貴族なら殊更… でも、コイツは広間の隅で放し飼い…ならマスター契約せず、何か適当な魔法石から魔力供給させていると考えるでしょう」
間違っていて?と少女が訊くと、屋敷の主人はいえ…と答えた。