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はるがくるんだってさ

ひとびとの視線の先はきまって僕だ。しかし、それらは虐げられる目でも、好奇心の目でもない。ただ「驚愕」の目だった。
 肌をあたたかい熱がほんのり包む。太陽は雲のあいだから見えたり隠れたり、忙しそうに空を動いていた。桜が咲いたというニュースをほんの数日前に聞いたような気がしていたが、もうすでにピンク色は僕の目にはうつらない。春と夏の間のどうとも言えないさびしさのにじむ足音を、ひとびとは奏でていった。
 もともと僕は、視線を気にするような人間ではない。気にして生きられる世の中ではないと、いつしか悟っていた。しかし僕のこの今の状況は、視線から耐えがたく、気温の影響だけで顔が熱くなっているとは思えない状況だ。今すぐ家に帰りたい。穴があったらはいりたい、ではなく穴を堀って家に帰りたい。できるだけひとの目にさらされたくない。

 美容院から出たときはまだよかったのだ。これくらいなら社会の許容範囲だろう、と高をくくっていた。
「いや、この色がお似合いな方は珍しいですよ。もとがいいんですね」
そう言ってほほえんだ、美容師の言葉をうかつに信じた僕がわるいのだろうか。鏡をみて、
「はい、これでいいです」
と満足そうにうなずいた自分に、ちくちくと針千本を刺してやりたい。
〝散ってしまった桜の代わりに僕を見て〟
と言わんばかりの頭で、ひとびとの中をかきわけていく僕。視線が痛い、痛い。イタい。しかもよりによって真面目に働き終わったサラリーマンたちが帰宅する時間。駅前の美容院を選んだのは大失態だったわけだ。ふつふつと恥ずかしさだけが体中をめぐっていく感覚が、皮肉にも僕をもっと恥ずかしくさせていた。

 どうやらまだ桜は散っていないらしい。泣き言のように心の中でつぶやいた。

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『愛憎劇の幕、その名はカーテン。』#4

 女子どもでは鍵を開けても開くことさえままならないほどの重い石の扉が守るここは牢獄。ましてや、老人が開けることなど不可能なのは言うまでもない。
 くるくると指で鍵を躍らせながら、草の上を闊歩するのは、リアムその人だった。
 鍵は簡単に開いた。リアムは扉に触れると、チッと舌打ちをし、思いっきり嫌そうな顔を扉にお見舞いしてから、ぐっと体重をかける。
 石と石が悲鳴を挙げるような、酷い音を立てて扉は開いた。
 かろうじてある上窓から光は入ってくるものの、日が昇っている時間とは思えないほどの暗さである。
 リアムはきょろきょろとあたりを見回しながら進むと、各部屋から声を掛けられる。
「おい、リアム。久しいじゃねぇか。誰を出しに来た。ついでに俺も出してくれよ」
「忙しいんだよ。また今度ね、囚人」
 唾を吐き捨てる囚人と、ひらひらと手を振り笑うリアム。
 そんなやり取りの中で、一際おとなしく、小さくなっている老人を見つけた。

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たった一つ目の答え

好きなものって一つじゃなくてもいいんだ

仕事にしたい好きなもの
趣味にしたい好きなもの
たまに目にしたい好きなもの
リラックスするための好きなもの
ガチでのめり込む好きなもの
私の心を助けてくれる好きなもの

全部「好き」それでいいんだ
一つにしなくていい。
答えだって一つにしないでいいんだ。

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勉強

たくさん勉強をする友達

順位は真ん中くらい

ほぼ勉強しない僕

上位15位以内

この差はなんなの?

なんで勉強してない僕の方が上なの?

罪悪感が僕を押し潰す

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ないしょ

空を見上げてた
雲ひとつない青空
ずっと同じ色が続く青空はつまんないなって思いながら
君と歩いてるのにつまんないなんて
考えてるのもなって思って
私は横にいる君を見上げた
すきだよ
なんて絶対言わないけど
でも、君と入れる時間が私にとって
最高に幸せな時間なの
今ばかりはこの青空が綺麗なオレンジに変わらないでくれなんて
都合のいい事を祈ってしまうくらいにね
君には君の道がある
私と君が交わったほんの一瞬の今日
君とは別れてもまた会える気がするんだ
だから、この言葉はその時まで取っておくよ

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嘘つきを『嘘吐き』と書くように
嘘ってのは吐き出すもんなのかねえ?

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今。

コロナウイルスで学校、休校
週に一度の登校
課題は授業とみなされ
出さなければ、単位なし

ちょっと待て!
それにしては、量が多いぞ

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ーそんなものありやしないー

一生の何か?
そんなものある訳ないじゃない
人間の1番の動力は気分なのだから

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嘘つき

だましたやつが悪い?
いや、だまされるやつが悪いんだ。

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ー何故私は私になってしまったのかー

許してよ どうして私は生まれてしまったのだろう
誰もが人の子だなんて
きっと神様が私たちに教えたただの一つの嘘なのだと
神様が何よりも崇高な存在だと
知らない間に決まっていたように
私もまた 知らないうちに存在してしまったんだ
私は1枚で何百万する絵画のようにはなれないのだから
気づいてよ誰か 私はもう嫌悪のループを自覚しているのに抜け出せない
囚人になってしまった
いつか 誰かの 声が 終わりの合図をくれる
信じて 今日もクルクル回る

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『愛憎劇の幕、その名はカーテン。』#3

 音もなくライオネルの傍についたリアムは、泣くメイドを横目で見ながら尋ねる。
「おうさま、勝機はあるの?」
「ある」
 即答したライオネルは続ける。
「お前がいるからな」
 ぱちぱちと瞬きをするリアムは、得意げに笑う。
「ほんと、おうさまって俺のこと大好きだよね」
 そう言い残し、身を翻して窓から飛び降りた。
「そこから飛び降りるなと何度も……」
 既に届かないであろうリアムへ苦言を呈するような呟きに、部屋にいるもう一人の人物の声が重なる。
「……本当に、申し訳、ございませんでした……」
 うなだれたメイドの、痛々しくも切なげな響きが届いた。ライオネルはメイドを見下ろしす。
「リアムは許さないだろうが、今回のことを大事にはしない。だが、二度目はないと思え」
 そして、泣くメイドに視線を合わせた。
「家族は、大切だ」
 泣きたくなるほど痛々しく、優しくも哀しげな微笑みだった。

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周りの人は皆流されている。
好きでもないものを、相手の機嫌をとるために、好きではないという、自分に嘘を付く。
流されなくてもいいんじゃない?
私は、自分に嘘を付きたくない。
少しは、自分に正直になって、わがまま言っても


いいんじゃない?

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オンリー・ラヴ

穏やかな春の眼差しに
慣れてしまった私
確かめ合うだけの愛が
退屈だったの
あなたをちょっぴり
心配させたかった
ただそれだけだったの

季節はずれの冷い朝
何も云わず家を出たわ
Don’t worry,Don’t worry,
Don’t search me!

出会った頃に2人に戻る
淡い期待と後ろめたさ
胸に抱いて歩いた
雨の街 何周かして
帰ってきたけれど
合鍵だけテーブルの上
あなたは消えた

失ったものが輝きだす
よくある話でしょう?
Can’t believe,Can’t believe
Don’t let me!

もしも運命が微笑んで
元の2人に戻っても
私にはもう愛しかいらない

もう愛しかいらない…

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かけるべきは

なにも言ってあげられない

あなたのその辛さがわかるから

うまく言ってあげられない

あなたがなにを求めているかわからないから

「もし自分だったらどうされたい?」

それもわからない

かける言葉が見つからない

でもなにか言ってあげたい

絞り出したその言葉は――


――大好きだよ

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季節はずれの夏祭り

滑稽なひょっとこ、
笑うおかめ、
強がる狐。
真実は浴衣の中に隠れてる。
みんな楽しいふりをして
知らないふりをして
仮面の中ではそれぞれ違った表情。

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真昼のスピカ

青空に滲んだへたくそな虹
見上げた子供たちの笑顔の先
見つけてほしそうにこちらを見ている
旅客機が横切ってイラついたスピカ
夜更けまで待てよと午後の太陽

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とどろく銃声と
子どもの泣き声と
人々のうめき声が
毎日うずまく町のはずれの洞窟で
かくれるようにくらしていた少年は
その国の国民が可哀そうだから救いたいとやってきた
裕福な団体をあざけるようにわらって言う

このよはね
きれいごとですべてがうまくいくほど
やさしくはないんだよ

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ノンタイトルイズタイトル

吐き出せなかった苦しみを
雑多すぎるフィルターで濾したら
名前をつけてノートに書いて
燃やして 忘却、空にて。

辛い思いだけでも描き起こせたら
名前をつけて 火をつけて
白く登る 線の先
見えなくなったら、さ、おしまい

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錯覚

目が覚めて君が横にいる
そうやって錯覚する
雨やんで空が手を伸ばす
そうやって錯覚する

錯覚したまま 空に解けてく
ヘルシーな愛を
サンクチュアリにキスを

気をつけて 今日も月沈む
そうやって錯覚する
手を繋ぎ 二人 トロケアウ
そうやって錯覚する

錯覚したまま 夜をはべらす
セクシーな歌を
ハートの奥に 秘密を