…と、その時だった。
どこからともなく矢が飛んできて、ナツィの鎌に当たった。
「⁈」
驚いて矢が飛んできた方を見ると、青い髪をなびかせた人物が弓矢を構えていた。
「ピスケス…」
ナツィは背中に白い羽の生えた青髪の人物を睨みつける。
よく見るとピスケスの側には物置にいたコドモ達もいた。
ピスケスは呆れたように言う。
「何をしているのよ、お前」
獲物を殺してしまってはもったいないじゃない、とピスケスは言う。
「貴方達…」
少女は訝しげにピスケスの方を見る。
「ふふふ、私達は”学会“の関係者よ」
貴方を捕らえにきたの、とピスケスは微笑む。
「さぁ覚悟なさい…ホムンクルスの“ロザリンド”!」
ロザリンドと呼ばれた少女は鼻で笑う。
「ロザリーと呼んで欲しくてよ!」
そう言ってロザリーは屋上の柵を飛び越えた。
進む訳もないトーク画面を
遡っては泣いて
閉じては開いた
「幸せだった」自分を探したくて
「楽しかった」あの日に戻りたくて
ねぇ「この日」の私
ずれ始めたことに気づいてたんでしょう?
それなのに
自信があったから隠したんでしょう?
『帰ってきてくれると思ってた』
そんな馬鹿げたこと思わないでよ
進む訳もないトーク画面を
遡って 遡って
スクロールする度
「その日」の私は幸せになっていった
「今」の私は苦しくなっていった
あぁ、確かに私は幸せだったんだ
そう気づくのが遅かった
ねぇ「将来」の私
このトーク画面に頼らないで、
「幸せ」を得る日は来ますか
もしそんな日が来るのならば
その日に隣にいる人のことを
どうか どうか 大切にしてください
私は 儚い思い出ほど、
その時はさほど大したものとは思えないようです
だから。
「荷物は全部揃ったかい?」「うん!バッチリだよ。」この時点で発車5分前
なんとか予定の列車に間に合ったものの…
「あっヤバいかも」「どうしたの?」「私たち2人合わせて買った切符って、バンコクまで2枚なんだよね?」「俺、分割なんだけどどうかした?」「見てよ、これ」「え?接続ないから深夜は国境の街で11時間待ちだろ?」「私、宿取れなかったから、直通列車予約したんだけど…」「しょうがないなぁ
俺が宿に問い合わせてみるよ」
およそ5分後…
「どうだった?」「なんとかなったよ。俺は1番安い2人相部屋で予約してたんだけど、俺以外のもう1人の人がキャンセルしちゃってアメニティ余ってたんだってよ」「男女同部屋で海外旅行とか、傍から見れば完全に新婚旅行だなw俺、彼女すらいないのになぁ…」「何言ってるの?彼女ならいるでしょ?ヒントは、『小さな恋の歌』」「えっ?本当に俺でいいのか?本気にしちゃうよ?」「むしろ、本気にしてよ。」
およそ一年間、待ち望んだ相手との恋愛成就の代償が宿代一人分だったら、別に痛くも痒くもないな
若いカップルを乗せて、夜汽車はマレー半島西岸を北上する
明日なんか誰も知らない。
きっとIQ160以上のアインシュタインも
果てしない宇宙でグルグル回ってる地球も惑星も予想も付かないから明日を考えると不安になる。
でもさ、誰も知らないんだよ?
きっと、きっと大丈夫!!おやすみなさい。
「え?嘘だろ?よりによって今かよ!」「どうしたの?スマホのバッテリー切れたの?」「いや、そうじゃなくて、俺が昨夜、かなりお高いホテルに泊まって手持ちが少ない中バーツからリンギに変えなかったせいかもしれないんだけど、リンギがもうない…」「はい、これ。実は、兄貴がコインロッカーに荷物入れてくれている間に両替しておいたんだ」「ありがとう。助かったよ」「色々奢ってもらったお礼。夕飯は私が奢るよ」「え?本当にいいのか?」「もちろん。色々やってもらったのに、私たち2人の旅なのに私だけ動かないの変だからね」「俺たち2人の旅か…って!俺たちは龍馬とお龍さんかよ」「わざわざ私が好きな幕末の話で例えてくれてありがとう」
そんな風に談笑して地下鉄(に乗り込み、気付いたら目的の駅だ
「あっ…もうこんな時間か…荷物取り出してたら飯食う時間ないな」「荷物先に取り出しちゃおっか。食料はその後に考えよう?」
「分かった。列車に乗らないと大変なことになるからな」
いよいよ、次は見慣れたクアラルンプールを離れ、バンコクへ
「ちょっと遠回りになるけどモノレールにする?それとも、地下鉄で直行にする?ペトロナスツインタワーにはこの2通りの行き方があるんだけど、君に任せるよ」
「じゃあ、モノレールにしよっか」
そして、タワーの展望室へ
「アイツにもここの夕焼け見せたかったなぁ…」「え?」
「兄貴、覚えてる?私、好きな人のこと諦めきれないって言って兄貴の告白2回保留にしたの」「そう言えば、あったなぁ…」「その時の『好きな人』と付き合ったはいいんだけど、『君は俺にとって大切なことを理解してくれないのに愛情だけは重いから、もう疲れたんだ。悪いけどもうアプローチしないでくれ。今までの関係も白紙にしてくれ。』って振られちゃったんだ…」「そうだったのか…つらいこと思い出させちまってすまなかった」「兄貴、頭上げてよ。ここ、イスラム圏でしょ?(笑)」「そうだな。現地の人に誤解されたらどうしよう。って言うか、やっと心から笑ってくれたね。まだ会って数時間だけど、こっちは君が作り笑いしてばかりで心配してたんだぜ?」「気付いてたの?」「そりゃ気付くさ。誰だってあんなリアクションされたらな」「そっかwところで今、何時?」「あっ、あと2時間で列車行っちゃう」「夕飯食べて行かないと明日の朝まで飲まず食わず?」「そうだな。とりあえず、急いでセントラルまで戻るよ。ビュッフェだけどマレー料理の品揃え豊富な穴場食堂がセントラルの駅前にあるんだ」
そう言い切る前に、俺たち2人はエレベーターに飛び乗り、駅までの連絡通路を駆け抜ける
「両替、済ませたかい?」「あっ…まだ…」
「なら、俺が奢るよ」「え?いいの?」「せっかく旅を共にする仲なんだろ?だったら、こういう時くらい俺を頼ってくれよ」
そんなやり取りを経て、俺たちはKLIAエクスプレスに乗り込んだ
空港下のトンネルを抜けて、列車はセランゴール州西部を北上する
「ヤバい…緊張してきた」「大丈夫?」「大丈夫。別に大したことじゃないさ。ただ、君があまりにも魅力的だから意識しちゃってるだけさ。って、俺実質初対面の女の子に何言ってんだよ〜」
「昔、オプで話してた時みたいだね」「アレは引き合いに出さないでくれ〜思い出しただけでめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた」そんなやり取りをしていたら、もうターミナル駅で合流する線路が見えてきた
「ここの駅の北口のコインロッカーに荷物しまわないと、重い荷物持ってあちこち歩き回らないといけないから、必要な分だけまとめて降りるよ」
さあ、これからKLの市街地を歩き回るぞ〜
私って何なの?(無知)
……なるほど? アフリカの? 神の住む場所?
おぉっとォ……こいつは思った以上に私すごいのかもしれない。