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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 15.オーベロン ⑪

「そうやってアンタはいつもいつも…」
ネロはそう言いながら具象体の黒鎌を出す。
「ボクの尊厳を侮辱しやがって…‼」
ネクロマンサーは黒鎌を構える。
「アンタこそ、目障りなんだよ‼」
そう叫んで、ネクロマンサーは少女に向かって駆け出した。
「マズいっ!」
いつの間にか異能力を使うのをやめた耀平が走り出す。
しかしネロはそんな事もお構いなしに少女に具象体を振りかざした。
だが少女には当たらない。
「⁈」
ネクロマンサーは具象体をブンブン振り回すが、どうやっても少女には当たらなかった。
「クソっ‼」
ネクロマンサーは少女の脳天に向かって鎌を振り下ろそうとするが、刃が少女に当たる寸前で動きが止まる。
「…無駄よ」
少女はポツリと呟く。
目をつむっていた彼女がその目を開くと、淡い水色に輝く瞳が姿を現した。

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輝ける新しい時代の君へ Ⅷ

 次の日も少年は男のもとに行った。
 男は少年が自分の横に座ると、いつものように切り出した。
「昨日は何をしたんだい」
「きのうはな、おはかまいりに行った」
「へえ、誰のだい」
「お父さんのお父さんのおはか。きのうはじいちゃんの命日だったらしい」
 少年が何ともないように言ったが、男の顔から笑顔が消え、代わりにいささか目を見開いた。
「おまいりに行ったとき、おばさんが僕のじいちゃんはここにはいないんだと言っていた。せんそうで、とおいところでしんだらしい」
 少年は父方の祖父に会ったことがなかった。祖父の息子たる父親でさえ思い出がない。というのは、少年の祖父は約四十年前の満州で戦死したのだ。父親が五歳の頃だ。だから祖父の話はあまり聞いたことがなかった。祖母は健在であるが、早々会わないので彼女からも話を聞いたことはない。
 そういったことがあり、感傷などは少しもなかった。それに何より、まだ『戦争で死ぬ』ということの意味があまり分かっていなかった。
「なあ、せんそうって何なんだ?こわくないのか?ほかの国のこと、どうしてきらいだったんだ?」
 突然の質問攻めに男は困惑した。今になって、どうしてあんな無礼な質問をしてしまったのかと後悔することが多々ある。しかしこの時の少年にとって戦争は、単なる好奇心や興味が向けられる対象以外の何物でもなかった。
 それは男も分かっていたと思う。少年のことを能天気だと思ったかもしれない。妬ましいと思ったかもしれない。羨ましく思ったかもしれない。怒りを覚えたかもしれない。それを抑えて無難に答えるつもりだったのだと思うが、感情が溢れ出していた。
 天を仰いだ目は、出会った日よりも強く哀愁が感じられ、それは少年にも分かるほどだった。長い溜息を吐いて足に肘をつき、手指を組み力なく項垂れた。
「アー……本当に何なんだろうね。俺が訊きたいよ。怖かったなあ……本当は心の中では死にたくないって思ってた。実はね、みんな、アメリカやソ連のこと嫌ってばかりじゃあなかったんだよ。なのにみんな嘘吐いてた。自分や家族を守るためにね……嫌な世の中だった」
 おどけて言っているが、声は震えていた。顔は見えない。
「良くないね、大人なのに弱音吐いて。変な話してごめんね。坊や、まだ子供なのに」

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「好きな人と一緒に帰ってん」

怖くなった
これまで思っていたことが
完璧な自己中心的な考えだったことに驚いた

もちろん彼にだって
誰かを想う気持ちはあるだろうに
むしろそれが自分に向くことの方が珍しいのに
何を当然のように思って
何故に大丈夫だと思って


安心が 油断が
ほんの少しの自信が
自分をダメにして甘やかす


もっと出来ることはあったのに
悔やむ自分はあの頃と一緒だ

掴めたはずの幸せを見殺しにしたあの日
あの時のあの人の目はもう思い出せない
そういうものなのかもしれない


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価値観

「やるべき事」より「やりたいこと」へ
「やった方がいい」より「心躍るほう」へ
もちろん全てがこう行く訳じゃないし
そんなことばっかりじゃないのも分かってる
だけど出来れば
出来ることなら
こんな感じで生きて行きたい

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待ってるよ

「大好きだよ。」
そんな言葉を言う僕の声色は、きっと柔らかくて、はにかんだような笑顔なんだろう。
だけどな、だけどなあ、言う相手がいないんじゃあ!!

こいびと?なにそれ美味しいの?
家族?考えが変わるといいな。
友人?ぼっちには居ねえよ。

「大好きだよ。」
柔らかく、はにかんだような笑顔で伝えられる人を探してる。
いつか、会えるって。
その時は緊張しい声で言うんだ。
「はじめまして。」