ちょっとしたときめきと、わくわくと
ずっとそばには居られないし
ずっとそばには要らないよ。
「ぐっ」
ネクロマンサーは動きを止めたまま、声にならない声を上げる。
「だから無駄だと言ってるじゃない」
少女がそう言うと、ネクロマンサーは力が抜けたように後ろへ倒れた。
「ネクロ‼」
もうよせ!と耀平はネクロマンサーに駆け寄る。
ネクロマンサーはふらつきながら起き上がる。
「おい、アンタ‼」
ネクロマンサーは少女に向かって怒鳴った。
「どうして、どうしていつも…!」
ネクロマンサーが鎌を構えようとするので、耀平は待てネクロ!と彼女を取り押さえようとする。
「お前もうよせ!」
「うるさい‼」
耀平の言葉に対し、ネクロマンサーはそう叫ぶ。
「やっと、やっと復讐できるんだ」
アイツを、アイツに苦しみを…とネクロマンサーは耀平に抵抗しながら言う。
「ネクロ‼」
耀平はネクロマンサーの言葉を遮るように怒鳴った。
風に飛ばされる鳥
跳ねる雫
艷めく神社の朱
そっと差し出される傘
たまには雨もいいねと
目を細めて笑う君
繋ぐ手
霧の向こうの木々
打ち付ける波
滲む車のウインドウ
水たまりに映る鮮やかな色、いろ
泣けない君
失われた体温
今すぐにでも抱きしめてあげたいのに
今日も雨が君の代わりに泣いている
勿体無いと言われる事が大嫌い。あと意外も。
食べ物を残すのは勿体無い。
そりゃあ勿体無い。だけどさ、こう言われたら嫌になるよ。
時間があるのに〇〇しなかったの?勿体無い。
あんなに長かったのに髪切っちゃったの?勿体無い。
おい。何で他人に決められるような事言われなきゃいけないんだ。
持て余した時間で何をするかも、髪の長さを決めるのも、自分で決めるのであれこれ言わないで下さい、と言われる度に思う。
へぇー、そういう漫画好きなんだー。意外だね!
私のイメージの中の君ではこういう事考えないと思ってた。意外!
おい。2つ目に関しては実際の私じゃないじゃん。
貴方達が知らないだけで元からそうだったよ俺は!って思う。
まあでも、相手もわざと言っている訳じゃないからね。といってもこちらばかりがもやもやしてしまう。
忘れろ忘れろ、こんなこと。
ヤーコフ医師は、牡丹江の俘虜収容所に派遣された。日本人を収容しており、シベリアの収容所までの中継地点である。日本人はここからシベリア各地に送られる。
その医務室には今日も病に侵された元日本軍人がやってくる。
「次の方、お入りください」ヤーコフが促すと、日本人が一人、静かに入ってきた。ソ連に捕まった時のよれた第一種軍装のままの20代か30代の一等兵だった。名を訊くと芝野倉治と言った。
「お座りください。……どういたしましたか」
「咳が酷いのです。痰が絡んで息苦しいのです」
「どのくらい前から」
「3日、4日程度です」
「それは気の毒に……結核やもしれません。今日から病棟に入りましょう。念のためです。検査ができんもんですからね……」
そう言ってヤーコフは入棟の為の申請書を書き始めた。途中、日本人に話し掛けた。
「前回来た中隊の人ですか」
「ええ」
「私も最近派遣されました。本当は妻も子供もおるんで、ロシアに残りたかったんですがね。芝野さん、ご家族は」
「母と妹、身体の弱い弟と……婚約者が内地に」
「それはお辛いでしょう」
「せめて籍を入れてくれば良かったと。働かされては可哀想ですから」
「そうですね、あなたが一刻も早く祖国に帰れることを願っています」
ヤーコフが穏やかに微笑むと、日本人は彼に哀れむような眼を向けた。
「あなたは優しいですね……でも、それじゃいかんですよ。私は俘虜です。そしてあなたは我々を収容する側です。偉そうに冷淡にせにゃならんのですよ。俘虜になめられちゃ悲惨です」
そこまで言うとヒューヒュー空気が抜けていくような酷い咳をして、ヤーコフは急いで背中をさすってやった。
「無理せんでください。お体に障りますよ。……確かに私たちは芝野さんたちを収容する立場にあります。でもね、ここではそれは関係ないのです。ここでは私は医者で、あなたは患者です。今異国の地で絶望に震える者たちには、優しさが必要なのですよ。あなたたちが無事に帰るのに必要なのです。未来にはあなたたちがいなくてはいけないからです。だから、あなたたちが帰るために、私はなめられても仕方ないのです」
「自己犠牲は無駄です」
「違いますよ、これは自己犠牲なんかじゃないんですよ」
終
カービィに指示を出して家に帰った僕たち。
なぜか今も抱え続けられている。
そろそろ降ろしてほしいんだが…
「ぽよぽよ…ぽよ?」(僕)
「ぽよぽよ、ぽよぽよ」(カービィ)
やっぱり伝えたらすぐに分かるんだよな。
まあとりあえず、これからどうしたら良いだろうか?
まず最初にしておきたいのは、カービィに日本語を教えることだ。
今のままだと、側から見れば僕のが訳の分からない言葉しか発しない変人にしか見えないからな…
気は遠くなるが、こうでもしないと始まらないから仕方ない。
「ぽよ…?」(カービィ)
ん?なんかカービィがこっちをじっと見てくるんだが…
「ぽよ!」(カービィ)
うお!?なんだいきなり!?
カービィにまた抱えられた僕。
この体だからこそ味わえるのかな…多分僕に抱きついたりする人なんてほとんどいないんだもん…
カービィの顔を見ると、なぜか幸せそうな顔をしている。
しばらくそのままにしておいてあげるか。
ただ、日本語はしっかり教えてあげないとな。
こうして僕は、また抱えれられた状態でカービィに日本語を地道に教え始めた。