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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 18.メドゥーサ ②

「それに、おれ達にはネロがいるし」
「ちょっ、褒めるなよ~」
耀平の言葉にネロは照れるじゃーんと笑顔になる。
「ま、そんな事はともかくさっさと駄菓子屋に行こうぜ」
ネロのココアシガレットが切れたんだろ?と師郎が皆を促す。
「分かってるよー」
「じゃ行こうぜ」
ネロと耀平はそう答えるとまた歩き出す。
師郎と黎も2人に続いた。
わたしも皆に置いていかれないように歩き出したが、すぐに足を止めた。
と言うのも、ネロが急に立ち止まったからだ。
「?」
どうしたネロ、と耀平が不思議そうにネロの顔を覗き込む。
ネロは後ろをむいたまま、先程わたし達とすれ違った少女とその親に釘付けになっている。
「…ネロ?」
耀平が再度呼びかけた時、ネロは突然少女に向かって駆け出した。

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横暴狩り その⑦

落ちてきたイグアナを抱きかかえ、その雑居ビルの屋上に人目を避けながら上がると、無数のイグアナが何かを取り囲み、ドームのように固まっていた。
「あー……ハロー? 落とし物を届けに来たよ」
イグアナの壁をノックしながら湊音が呼びかけると、内側からもノックが返ってくる。
「出てくることはできそう?」
「むり……」
「そうか。じゃあイグアナたちを少しずつ退かしていくことにしよう。もう少しだけ、待っていてくれるかい?」
「うん……」
返事を聞いてから、湊音はドームを構成するイグアナの1匹に手をかけた。途端に、別個体が素早く首を回し、その手に噛みついてくる。
「おっと……これは厄介だね」
過去干渉で回避したものの、同じように攻めてはまた噛みつかれるだけだろうと、湊音は1歩下がってから再び思考を巡らせ始めた。
「…………小人くん、いるかな」
土くれ小人に呼びかけ、足下に招集する。
「何か、頑丈な棒があると嬉しいんだけど。木の枝程度で構わないからさ」
それを聞いて、土くれ小人は敬礼をしてから屋上から飛び降りた。

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深夜の珈琲占い No.8

「クリアウルフ...?」

見た目を見ればクリアウルフだ。
しかし、瞳は緑が主で、稀に赤や黒のものがいる程度である。
鈍色の瞳など聞いた事がない。

「あれはクリアウルフだよ。...珍しい個体だけどね。」

彼女は続ける。

「やれやれ。年を重ねて賢くなるんじゃなくて、非情で狡猾になるなんて。異種族と言えど嘆かわしいねぇ。」

年を重ねる...?彼女は何を言っているのだろうか。

「マスター、それってどう言う...?」
「君はかの東洋の魔獣、『バケネコ』を知っているかい?」

バケネコ...見た事はないが、書物では読んだ事があった。

「はい...。それが?」
「クリアウルフも同じさ。長く年を重ねた個体は知性を持つ。何より最大の特徴は、『瞳が鈍色に変化すること』。他には会話ができる個体も多いみたいだね。」
“余裕だな小娘。わしを前に悠々と御講義とはな。”
「誰⁉︎」

誰だ。老人の様なしゃがれた声。

「小娘って、酷いねぇ君も。これでも君の5倍以上は生きてるよ?」
“抜かせ!たかが人間如き、それほど生きている筈はない。はったりなど無駄だぞ。”

声の主はクリアウルフか。
彼女とかなり話し込んでいる。

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とある小説と猫 No.1

俺は目を閉じた。二度と開ける事はないだろう、と思った。
そして。

「ー...生きてる...?」

自分の部屋で目が覚めた。
うーん、と、起き上がって伸びをする。

(目線が低い...?)

自分の目線の低さに違和感を覚えた。
くるり、と部屋を見渡す。

「な...っ⁉︎」

鏡を見て驚愕した。
そこには、見慣れた猫...愛猫のテトが映っていた。

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鬼の類

「いってきます。」森矢、早見、林が行く。
「いってらっしゃい。」
もちろんこの後、清水、七川、松田、梅屋も行く。大体の家事はこの4人でやっている。まあ、遅刻常習犯の七川に合わせるから、いつも皆遅刻する。

「よ、おはよう。」
「よ、じゃなくて。健遅刻だよ。」
親友の知松和人(ともまつかずひと)から言われた。そういえば視線が痛い。
「わっ。カズありがとう。」
急いで一限の準備をする。すると教授がやってきた。

「早見、これやって。」
「はい。」
仕事は多くて忙しいが、結構充実している。

「おーい、清水。起きろ。」
「うう…。」
まったく。清水はよく寝る。それを起こすのが俺の役目である。

「梅屋くん、弁当一緒に食べよう。」
「分かりました。」
さっきから得体の知れない女子たちに連れ回されていた。松田さんなら誰も知らないような場所に連れていってくれるはず。