届けたい。届かない。
やっぱりだめなんだなと諦める。
僕の目の前にある扉は開かなかった。
最初も最後も今も
手を伸ばせば誰かに届く位置にいるのに、。
今と同時に未来を諦める。
だから、「諦め」の「あ」の音が聞こえてきそうになったら、叫びたい。
君に届け、と。
それから1週間後。
わたし達はショッピングモールの片隅にある休憩スペースのイスに座りながら、いつものように駄弁っていた。
内容はもちろん、寿々谷市民まつりだ。
「市民まつりにウチの学校の吹奏楽部が出るんだとよ」
「俺の学校もだな」
ついに1週間後に迫った市民まつりについて、耀平と師郎は盛り上がる。
黎もその様子を見ながら時々うなずいたりする辺り、話を楽しんでいるようだ。
しかし、ネロだけは違った。
彼女は頬杖をついてそっぽを向き、どこか上の空みたいだった。
「…なぁネロ」
ここで耀平もその様子に気付いたのか、ネロに話しかける。
「お前今日はどうしたんだ?」
よそ見なんかしちゃってさ、と耀平は尋ねる。
「…何でもない」
ネロはちらっと耀平の方に目を向けてそう返す。
「何でもないって…」
耀平はそう呟くが、何かに気付いたのかこう言った。
「もしかして、先週の”あの子”の事が気になるのか?」
耀平の質問に、ネロはぎくっと飛び上がる。
田舎にいると、都会の普通とはずれていることでも普通として受け入れてしまいがちなようだ。律は昔から地元にいる怪異に好かれやすく、よく幼体の『御金魚様』とかいうやつを服にくっつけていた。今もくっついている。
「邪魔だなぁ」
そうぼやきつつ家に入ると、玄関先でことが体育座りしていた。
「おかえり」
「ただいま。こと、頭割れてない?」
ことは慌てて自分の頭を触った。
「わーお。教えてくれてありがと」
「いえいえ」
律にとっては、これが普通なのである。
諸事情により、「とある小説と猫」は暫く投稿を休止させて頂きます。
楽しみにしてくださった方々、レスや反応をくださった方々、非常に申し訳ありません。
他の作品は今まで通り投稿し続けます。
一月迄には再会出来ると思います、これからも宜しくお願いします。
魔術師...主に魔術を使用する者。資格があれば「魔術師」と名乗る事が出来る、この世界において絶大な存在である。元犯罪者や孤児が魔術の才に目覚め、人生が変わる話も多い。
魔術師は免許皆伝の際、「魔術師名」を与えられる。杖には名前や魔道士名ではなくこの魔術師名を刻む。師より与えられる事が多い。
魔術...人間が使う魔法の様なもの。同じものでも魔獣が使えば「魔法」、人間が使えば「魔術」となる場合が多い。
魔術が使える人間の中にある強い思いや夢、空想にが「魔力」によって現実世界に現れ、干渉することを「魔術を使う」と言う。
一般の人間には魔力がないため、魔力のある人の割合としては一万〜三万人に1,2人。
そして降り注いだ氷塊は全て。
“なっ?!何だ⁈”
彼女の上空2メートル程で停止した。
彼女は微笑んでで語りかけた。
「君、魔術師を知ってるかい?」
“...それ位知っておる、貴様舐めているのかッ!”
完璧に怒らせてる。
どうするつもりなんだ。
彼女は杖をつきながら続ける。
「でねぇ、魔術師は杖がないと魔術を使えないのだよ!つまりね、君が一発目で杖を破壊しなかった時点で、負けていた様なものだったのだよ。可哀想にね。」
“フン、余り馬鹿にしてくれるなよ小娘。杖の破壊をしなかったのはな、その様な事をせずとも貴様を殺せるからよ!”
一気に飛びかかるクリアウルフ。
「マスター危な...ッ⁈」
クリアウルフが飛びかかり、爪で切り裂かれる!
そう思った刹那。
“なッ⁈⁈”
彼女の姿が...視界から消えた。
それと同時に、クリアウルフも体勢を崩す。
水棲の魔物を討伐・捕獲するための技法の一つ。
「釣り」と名につくように、大型の釣竿を用いて行う。
対象が生息する川や海、湖などの水際から最低数m~最大数十m離れた位置から釣り糸(対象のサイズやパワーによってはこれが金属製のワイヤーになるが、その場合も「釣り糸」と呼ばれる)を投げ、対象を地上に引き上げることで行動能力を低下させ、討伐したり生け捕りにしたりする。
この過剰なまでに取られる距離の目的は、対象を引き上げ戦闘する空間の確保、また対象に力で劣る場合に引きずり込まれるまでの時間を稼ぎ対応するためである。
また、この狩猟法は必ず2人以上で行わなければならない。
1人は竿を保持し、釣り上げる役割(「釣り手」と呼ばれる)。
そしてもう1人は、釣り手の横で望遠鏡や高台などを利用して水面の様子を観察し、釣り手が仕掛けるタイミングを指示する「観測手」。観測手を置く理由は、仕掛けの浮かぶ水面との角度と距離のために、釣り手からは目視確認が困難なこと、また基本的に大型の魔物に対して行う技法のため、釣り手は引き上げだけに集中すべきであることなどにある。
人手が足りている場合は、針投げ(最初に釣りのための仕掛けを水面に投げる役割の人員。また、仕掛けを投げる行為そのものも指す)、釣り手補佐、戦闘員などもう少しサポート要員を増やしたりもする。
ちなみに、針投げのスタイルにもいくつかの種類があり、地面・水面に対しほぼ水平に投げる「線投」、30~60度程度角度をつけて斜めに投げ上げる「純投」、水際近くで放ってから走って距離を取る「放走」、跳躍や踏み台など高低差を利用してやや下に投げる「降投」、弩型の専用器具を利用し機械動力で発射する「射投」などが知られている。
「むぅ……思ったより層が厚いな」
数度同じことを繰り返し、イグアナ・ドームに目をやるが、数匹剥がれて若干薄くなったその部分は、僅かに内側の空間に続く小さな穴が見える程度で、なおも形状を保っている。
「流石に面倒だなぁ…………それっ」
小さく溜息を吐き、その小さな亀裂に勢いよく片手を突っ込む。即座にイグアナ数匹が噛みついてくるが、構わずドーム内に向けて声をかける。
「掴める⁉」
返答の代わりに、その手を掴む感触が返ってくる。即座に、仰向けに倒れ込むようにして引き上げる。遂に爬虫類の壁から現れたのは、湊音よりやや幼く見える少女だった。
「助かりました……ありがとうございます」
「どういたしまして。……ところで、このイグアナ何とかしてもらえる?」
未だ腕に噛みついたままのイグアナたちを見せるが、少女は首を横に振った。
「すいません、私にできるのはこの子たちを呼び寄せることくらいで……いや正確にはこの子たちが勝手に群がってくるって感じなんですが。イグアナってもう少し大人しいって聞いてたんですがね……」
「それは残念」
噛みついているイグアナ1匹1匹に順番に異能を使い、口を開けさせて難を逃れた後、少女に向き直った。
「そうだ。君、異能の制御に興味は無いかい?」
「え、あります! もうイグアナに閉じ込められるのはごめんです!」
「それならちょうど良い。得意な人に心当たりがあるから口利きしてあげよう」
少女を引き連れて、湊音は雑居ビルの屋上を後にした。
「……ここまで逃げれば、大丈夫かねェ」
路地を出て、ひと気の多い大通りを抜けて、再びひと気の無い細い道に入ってから、漸く『誰か』は立ち止まってくれた。
「あー……ありがとうございます」
「え? あーうん」
『誰か』はそう答えてから、思い出したように手を放してくれた。かなり力が強かったうえに爪も長かったのか、手首にはくっきりと痕が残っている。
「……ありゃ、ごめんよ」
手首を見つめていると、『誰か』は謝罪の言葉を述べてきた。
「私、力は強い方でさ。怪我になったりしてない?」
「あっはい大丈夫です」
「そりゃ良かった」
からからと笑い、『誰か』は被っていたフードを脱いだ。前髪が同じ長さに切り揃えられたショートヘア、金色に光る虹彩と縦に切れ長の瞳孔、にやりと笑った口元からは鋭い犬歯が覗く、凛々しくも少女であると察せる、そんな顔が現れた。
「私は種枚(クサビラ)、よろしく」
「あ、はい、よろしくです」
くさびら……キノコ?
「せっかく私が名乗ったんだし、君の名前も教えてほしいなー?」
「あー……と、自分は千葉っていいます」
「うんよろしく。ところで君」
種枚さんが尋ねてきた。
「『あれ』が見えてたよね?」
「え……はい。えっと、何て言うか、昔っから霊感みたいなものがありまして……」
自分の言葉を聞いて、種枚さんは一瞬きょとんとして、突然大笑いし始めた。
「んー…」
朝日の眩しさをふりはらうように寝ぼけ眼で枕元を探っていたら、指先に柔らかいものが触れた。
「いてっ」
「あっ…水曜日ちゃん!」
そこにいたのは、群青色の長耳の狛犬の妖精だった。
「あっ燃えるごみ出し忘れた!」
「それはだいじょぶです。あなたがおきないから、かってにだしときました」
「嘘!ほんとに!?ありがと!」
頭を撫でると、水曜日は嬉しそうに目を細めた。可愛い。
「ところで、きょうはだいがくおやすみですか」
「…あ」