「昼間にここの喫茶店に来た者よ」
柵にもたれる少女がそう言うと、かすみはえ、なんでここに?と尋ねる。
しかし少女はそれを遮るように続けた。
「突然だけどあなたにちょっとお願いがあるの」
少女はそう言いながらかすみに向かって歩き出す。
え、何…とかすみが困惑する中、少女は続ける。
「実は、詳しいことは言えないけどわたし今追われているの」
「へ?」
ポカンとするかすみをよそに少女はかすみに近付く。
「このまま逃げ続けるのも体力に限界があるわ」
という訳で、と少女はかすみの目の前で立ち止まる。
「わたしをちょっとばかしここで匿ってくれない?」
「…はぁ」
思わぬ言葉にかすみははぁ、と返す。
「もちろん長期間居座るつもりはないわ」
1日ほど隠れさせてもらうだけ、と少女はかすみの顔を覗き込む。
クリームパンが今日もおいしい。
愛している、など 虚言に等しい。
・“疱瘡神”イユ
性別:女性 外見年齢:10歳 身長:136㎝
人形の材質:純鉄 悪意:殺意
災害:とある伝染病 能力:動物を対象とした病的ダメージ
説明:最古の“厄災どおる”。今はもう撲滅されたとある伝染病が国内に蔓延していた頃に生み出され、それからずっと人間のために働いてくれている。彼女を生み出した呪術師は既に死んでいるが、その人が「これからは人間のために生きなさい」って最初に言ってきたので、自分が死ぬまでは人間のために尽くす。
頑固だが融通は割と利き、そして飽きっぽいという何とも言えない性格。しょっちゅう「殺す!」って言うし言った以上は殺そうとするけど、基本的にプラスチック製の玩具のバットで背中とかを引っ叩いてくるだけなのでそこまで危険ではない。
戦闘面においては耐久力に優れ、能力を発動すると周囲の動物(ホモサピはサル目ヒト科やぞ)やどおるは全身から血を噴き出して衰弱し動けなくなる。別に病気になるわけでは無く、単純にその症状に襲われるというだけ。件の伝染病の治療薬と同じ成分で症状の治療自体はできるので、彼女の為だけに治療薬が今も少量製造され続けている。
ちなみに愛称の「イユ」は「癒ゆ(いゆ)」が由来。
・国定呪術師
封人形を用いて“厄災どおる”を生み出し、どおる達を世話したり災害に対処したりする職業。そこそこ難易度の高い試験とそこそこ長い研修期間を経てようやく就くことができる国家公務員。定年は無い。死ぬまで働いてもらわないと困るので。年1ペースで募集され、1度に10人弱が入ってくる。現在の職業人口はギリギリ4桁に届かないくらい。
・国定人形技師
封人形を制作する職業及びそのために必要な資格。呪術的な素養と単純な人形制作の腕が必要な職人系ジョブ。国から補助金も出るので、結構稼げる。公務員では無い。呪術パートが結構危険なので、なりたがる人はあまり多くない。だからこそ国が金出して人員確保しようとしてるわけで。ちなみに呪術の行使は法律で資格が必要と定められている。国定呪術師の中にはこの資格を持っている者も少なからずいる。
・防災省/呪術対策課
“厄災どおる”関係のお仕事をしているお役人さん達の勤め先。防災省は普通に防災対策やらアフターケアやらに尽力し、その中の呪術対策課が“厄災どおる”についての大体の業務を担当している。『発生している』災害しか対象にできない都合上、初動に対してどおるや呪術師の皆さんは無力なので、防災省のお仕事は結構責任重大。彼らが初手で踏ん張ってくれれば呪術対策課とどおる達が全て何とかしてくれます。壊れた国は防災省が何とかしてくれる。
人々で混み合う市の通りを帽子を目深に被った人物が走っていく。道行く人々は突然人混みをかき分けていく人物に驚きながらそれを避けたり、ぶつかってしまったりする。上空からの天使の追跡を逃れるように逃げていくその人物はいつの間にか人気のない街の外れまで来ていた。
「…」
帽子の人物は周囲に人がいないことを確認すると、ホッとしたように近くの壁に寄りかかる。しかし突然、ねぇと話しかけられて帽子の人物はビクッと飛び跳ねる。
帽子の人物が声のする方を見ると、地上では中々見られないような白い外套を着て頭巾を目深に被った人物が立っていた。
「やぁ」
「て、テメェ」
何者だと帽子の人物は後ずさる。白い外套の人物はふふふと笑みを浮かべる。
「ぼくは“サタン”」
見ての通りただの堕天使、と白い外套の人物は右手を胸に当てる。
「なんだよ」
一体堕天使サマが何の用、と帽子の人物が言いかけるとサタンは帽子の人物の口に右の人差し指を突きつける。
「今からぼくが君を助けてあげよう」
「は?」
なんで俺がテメェなんかに…と帽子の人物が言いかけた所で不意に上空から声が聞こえた。
「見つけたぞ‼︎」
この悪魔め!と3人の天使が舞い降りてくる。
「うぉやっべ!」
帽子の人物はそう言って駆け出した。サタンはちょっと待ってよ〜と引き留めようとしたが、おいと後ろから声をかけられて振り向く。そこには上空から舞い降りてきた天使たちがいた。
「そこのお前、アイツを知っているのか」
白い制服を着た天使の1人がそう尋ねる。サタンはあーえっとね〜とにやにやする。
・封人形
“厄災どおる”を生み出すための人形。竹の地下茎を切り出し加工した心臓のような形状のパーツに、様々な素材を材料にした人型の人形が抱き着いたような外見をした、凡そてのひらサイズ程度の人形。
人型部分の材質は、生み出された“厄災どおる”の強さに影響する。具体的には身体能力と防御力、精神性あたり。どう影響するかと問われるとちょっと困る。割と色んな影響の仕方をする。
特別な名称があるわけではないが、説明時に呼称は必要なので取り敢えず『封人形』『封印人形』と呼ばれることが多い。
使い方は簡単。災害が起きた時に災害の中心あるいは元凶に投げつけたり押し付けたりするとあら不思議、災害は収まりそこには幼い少年少女が。この行程は道具などを用いて間接的に行っても良いです。
生み出された直後、“厄災どおる”は大抵の場合自我が十分に発達していないので、人型になる前と変わらず暴れようとします。封人形を使用した呪術師が直々に追加で呪術的エネルギーを注ぎ込むか、既に人類の味方をしているどおるがボコボコにして(大抵の場合相手が強すぎて人間には太刀打ちできないので)どっちが上か分からせてから追加で呪術的エネルギーを注ぎ込んで仲間にしましょう。封人形に込められた呪術によって、どおるは大人しくなって呪術師の言うことを聞くようになります。
・“厄災どおる”
様々な災害(天災、地災、人災すべて含む)を、専用の人形を核として人型に凝縮した存在。
基本的には小学生~大きくても中学1、2年程度の幼い子どもの姿をしており、その男女比はおおよそ男3:女97(1d100で決めた。思った以上に女の子ばっかりで草)。
大規模な災害によって生じるエネルギーが小さな身体に封じ込められているので、体温は高い。最低でも37度台はある。ぽかぽか。
心臓部分には封人形(後述)が入っており、血液の代わりに微妙に粘度の高い透明な液体が体内を流れている。心臓型のパーツが特に意味も無く拍動しているため、脈拍もある。
肉体の成長は起きず、呼吸や食事や睡眠は必要はないが気分で摂る。でも発声のためには必須だから呼吸は大体してる。
ダメージは封人形にも反映され、一度体内から封人形を取り出し人型部分を修繕してから元の位置に戻せば身体もまた治る。それ以外の方法では回復せず(一応体内液の粘度のお陰で時間経過で出血は勝手に止まる)、体内液が切れたり封人形の心臓部分が破壊されたりすると死ぬ。
己の元になった災害を特殊能力として利用することができる。
また、元々人類(それ以外も)を害する存在だったのが無理やり封じられている状態なので、その表れか口が悪い。具体的には言葉遣いに悪意だったり殺意だったり見下していたりの悪感情が含まれているように感じられる。でも呪術的に制限されているので人間のために働いてくれるし人間に悪さすることは無い。能力発動中に偶然範囲内にいた奴の事は知らん。戦闘前に退避しろ。
向こうから来たのは僕のご主人様、リリィ様!この辺では本当に稀有な四枚羽の天使様で、柔らかい長髪と大きな青い瞳が特徴だ。
「げぇ…」
悪魔は露骨に嫌な顔をする。
「うげえっ」
リリィ様も嫌な顔をする。暫く沈黙する。
「…四枚羽…ここお前ん家かよ…」
「アーサー!?なんでいんのよ!帰れ!」
リリィ様が取り乱している。め、珍しい…。というか、知り合いだったのか。僕はなんか妙に冷静になってしまった。
「嫌だね!つかこいつ、お前の?」
リリィ様にアーサー、と呼ばれた悪魔は僕の肩を抱き寄せてきた。
「所有物みたいに言わないで頂戴!…まあ、私の召使いだけど…」
「ふぅん、片羽を採用したわけか」
「ていうかその子に触らないで?あと私の家で息をしないで。動いたら殴るわよ」
「はぁ?黙れよその口縫うぞ」
「私のような麗しい天使になんてこと言うのよこの二又悪魔!」
「表でろメスゴリラァ!!」
四枚羽のリリィ様と、尻尾が二又のアーサーさんが睨み合っている。ああ、喧嘩になりそう…。
よりにもよって3月11日になる3時間前に思いついてしまったため、流石に投稿はどうなんやってなったやつ。別に企画って訳じゃないけど取り敢えず設定だけ書こうね。使える人がいたら勝手に使っても良いよ。
舞台は現代、とある災害大国。現実で言うところの日本語と全く同じ言語文化をしているだけの架空の国家です。小さな島国でありながら複数のプレートの境界上に存在し、気流・海流・周辺地形も複雑に絡み合った結果である、『我が国の特産品は災害である。唯一の欠点は輸出できないことだ』というブラックジョークがあるほどの多種多様な災害件数と、それへの備え、対災害技術は世界でも有名である。
さて、この国において主流のアニミズム的多神信仰において、疱瘡神、疫病神、貧乏神等をはじめとした『人間にとって害になる現象』を擬人化・神格化し、鎮めることでその影響を受けないことを間接的な『利益』として享受してきた歴史がある。
ここに注目し、様々な災害を子供の姿に封じ込め、大規模被害の防止及び人間のために活用しようと確立された半呪術的存在が、“厄災どおる”である(残り半分は防災科学)。
※ちなみにどうでも良いことだけど、どおるによって例のジョークにある「輸出できない」という問題が消えました。国力とか戦力(実力)とか外交とかそういう問題がヤバい。外交関係のお役人さんは頑張ってください。
ところで話は変わるんだが、福島土産に「ままどおる」ってお菓子があるじゃないですか。あれ美味しいですよね。いや特に意味は無いんだが。
「マジかー……刃の内側まで潜れば安全圏だと思ったんだがなァ」
床に落ち、断面を接ごうと蠢く鼠色の物質。鳩尾の辺りまで食い込んだ刃を抜き、大きくよろめく青年。私は改めて、彼らが人外の怪物であることを認識した。
「……これだけ斬っても死なないとなると、ちょっぴり傷つきますねぇ……。俺、これでも両翼揃ってた頃は優秀な戦士で売ってたんですよ?」
「へェ。そいつァ素敵な売り文句だ。しかしこちらも“死神”で売ってんでねェ……。そうそう『死』を押し付けられるような真似しねェさ」
「えっ何それ初めて聞いた」
「ウン言ってねーもん」
「さて……話しているうちに傷もだいぶん塞がりました」
青年は長剣をまた放り捨て、代わりに全長50㎝足らずの片手剣を手にした。
「『長くて重い』はたしかに『強さ』ですけど、同時に速さを邪魔する『枷』でもありますから。解決法は簡単な話、『短くて軽い』で代用すれば良い。どうせ刃が当たれば斬れるんだから」
「わぁお強ェ奴の言葉って感じだ。その調子で頑張って、削り切ってもろて」