「…なんだよ」
「傘、持ってないのにどうするの?」
カシミールの言葉に相手は別にいいだろと返す。
「俺は“人間”みたいにする必要がないんだし」
放っとけよと相手はカシミールの手を振り解こうとする。
しかしカシミールはううん、と相手の腕を掴む手に力を入れる。
「知ってる人がずぶ濡れなのは嫌だよ」
その言葉に、相手は抵抗するのをやめた。
そしてカシミールの方をゆっくり振り向く。
「…お前」
俺と会うのはまだ2回目だろ、と相手はカシミールを睨みつけるが、カシミールは臆せずそれでも、と続ける。
「他人には、親切にするものだから」
カシミールがそう言うと、相手は暫く沈黙する。
そしてため息をついた。
「…そうかい」
んじゃ放っとけ、と相手はそっぽを向いてその場から離れようとする。
しかしカシミールは待って待って!と相手を自身の方へ引き寄せた。
「ね〜早くおいでよみんなー」
優しい午後の光が照らす要塞都市の街中を、色とりどりの服装の少年たちが歩いている。この要塞都市を守る戦士である少年たち——アヴェスの部隊、カテルヴァ・サンダーバードの5人は、先日の戦闘の前に約束したように、休日を使って最近入ったメンバー・ラルヴィヴォラ アカヒゲことアカに要塞都市内を案内していた。
「もー、ロディは浮かれちゃってるな〜」
「えー、モザだって昨日は楽しみすぎて眠れなかったんでしょ〜?」
黒と桃色のジャケットを着たアヴェス・ペトロイカ ロディノガステルことロディと、浅黒い肌のアヴェス・クリサグラ モザンビークことモザは、そう談笑しながら石畳の道を進む。そのすぐ後ろをストライプの入った空色のジャケットを羽織ったメガネのアヴェス・サイアノチッタ クリスタータことクリスが暖かい目で2人を見守りつつ歩き、さらにその後ろをベレー帽を被ったアヴェス・トログロディテス トログロディテスことトログと、橙色の詰襟ジャケットを着たアカが続いた。
「……それにしても、この間の戦闘はすごかったね」
「アカがあっという間にアリエヌスの群れを吹っ飛ばしちゃったんだもん」とトログは身体の後ろに腕を回しつつ呟く。それに対しアカは「別にそこまででもないし……」と照れくさそうに答えた。
「お前、どうして⁈」
「アカ1人に囮を任せられなくって、追いかけてきたんだ」
アカの問いに、トログはそう答える。
「さっきの作戦を念話で聞いたとき、ボクは天蓋の上から親玉アリエヌスを倒す担当を任されたけど、やっぱりアカを放っとけなかった」
「だから来た」とトログはアカの腕を握りしめる。「でも……」とアカは言いかけるが、トログは「でもじゃない!」と遮った。
「ボクたち、アカに要塞都市の案内まだしてないから」
「だから、行こう!」とトログは声を上げる。
「一緒に‼︎」
その言葉に、アカは静かに頷く。そしてアカは再度レヴェリテルムに念じてトログと同じ位置にふわりと浮き上がり、レヴェリテルムを銃器型に変形させて上空のアリエヌスたちに向ける。アカがレヴェリテルムの引き金を引くと極太の光線が放たれ、トログの作り出したエネルギー障壁もろともアリエヌスたちを消し飛ばした。
自身の周囲を固めていたはずのアリエヌスたちを倒された親玉アリエヌスは、戦っていたアヴェスたちを気にせず金切り声を上げてアカとトログの方へ飛び立つ。先ほどの光線を撃ったアカは咄嗟に宙を蹴って親玉アリエヌスに向かって飛び、レヴェリテルムの銃口を向ける。しかし先ほどの攻撃など今回の戦闘による負担が大きくレヴェリテルムを持つ手が震える。このままでは、とアカが思うが、アカに追いついたトログがレヴェリテルムを持っていない方の手で“Aurantico Equus”を支える。ちらとアカの顔を見て頷いたトログを見て、アカは思い切りレヴェリテルムの引き金を引いた。
“Aurantico Equus”の銃口からはまばゆいばかりの閃光が放たれ、一瞬にして親玉アリエヌスの元へ到達する。親玉アリエヌスは抵抗する間もなく、激しい閃光に包まれた。
直接伝えるの恥ずかしいから
この場を借ります。
いつもありがとうございます。私なんかと友達になってくれて嬉しいです。あなたがくれた言葉、私を突き動かす原動力なんだ(*^◯^*)
ちゃんと栄養とって ちゃんと休んでくださいね。水分補給しっかりね(^^)
「そういえば、あの人…この間一緒にいた會津さんって人は?」
カシミールは不安を紛らわすように相手に聞く。
「今日は一緒じゃないの?」
しかし相手は答えることはなかった。
「…」
どうしよう、とカシミールは焦った。
何も言わないとはいえ、知っている人が雨に濡れているのだ。
どうにかしてあげたいと思うものの、イマイチ何も思いつかなかった。
そうしてカシミールはまごまごしていたが、不意に相手がお前、と口を開いた。
「結局なにがしたいんだ」
その言葉にカシミールはぴくりと反応する。
「な、なにって…」
「だから俺になんの用だって聞いてんだよ」
ぶっきらぼうな相手に対し、カシミールはえ、えーっと…と目を泳がせる。
それを見て相手はため息をつくと、すっくと立ち上がった。
そしてそのままカシミールの横を通り過ぎて、ここから去ろうとした。
「ま、待って!」
カシミールは思わず相手の左腕を掴む。
相手は少し驚いたように動きを止めた。