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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑥

「それはそうとして、チョウフウ…じゃなくて穂積、アンタに1つ聞きたい事があるんだけど」
ネロが質問すると、穂積は何よと呟く。
「アンタ、ヴァンピレスと繋がってたんなら奴について何か知らない?」
個人情報とかさ、というネロの言葉に皆が穂積に注目する。
穂積は溜め息を1つついて知らないわよと答えた。
「は、何で⁈」
アンタ奴と繋がってたんじゃないのかよとネロは立ち上がって語気を強めたが、穂積は知ってる訳ないじゃない!と言い返す。
「相手はあのヴァンピレスよ!」
徹底的に自分の事は人に教えないような奴だからあたしが知ってる訳ないじゃないと穂積はそっぽを向く。
「何だよ連絡先とか知らないのかよ」
「電話番号は教えてもらってたけど今や音信不通よ!」
「何だよソレ‼」
ネロと穂積の言い合いは過熱していく。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ⑤

「あとヴァンピレスはやべー奴だからな」
それ位はやって当然、とネロはココアシガレットを咥える。
わたしははぁ…とうなずいた。
「でも今見るからに異能力も記憶も奪われてないみたいだけが」
それはどうしてだい?と師郎がふと尋ねる。
「あーそれはね、うちがたまたま助けたんだよ」
今度は短髪の少女が話し始める。
「うちがこの間、偶然ヴァンピレスを見かけて何気なくあとをつけたらたまたまあの子が穂積を襲おうとしてて」
それで助けたんだと短髪の少女はウィンクする。
「…うちの異能力を使ってね」
そう言って彼女はつぶっていない方の目を一瞬青白く光らせた。
「うちは薬師丸 雪葉(やくしまる ゆきば)」
…もう1つの名前は”ジャックフロスト”、と雪葉は続ける。
「”指定した人間の動きを凍ったようにうごけなくする”能力さ」
まぁ異能力を使っている時は気軽に”フロスティ”と呼んでいいよ、と彼女は笑った。
「ふーん」
ネロはそううなずくと穂積の方に目を向ける。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ④

「そ、それってどういう…」
ネロが困惑したように呟くと、短髪の少女は文字通りの意味だよと返す。
「あの子は穂積を切り捨てた、ただそれだけ」
短髪の少女は人差し指を立てつつ言う。
「…切り捨てられたって、どういう事だよ」
ネロがそう尋ねると、今度は穂積が口を開く。
「この間、ヴァンピレスに会った時に”貴女はもう用済み”って言われたのよ」
「用済みって」
ネロの言葉を気にせず穂積は続ける。
「あの女曰く、あたしとあの女が繋がっている事があんた達にバレたから、この関係は終わりにしよう、だってさ」
穂積は呆れたように肩をすくめる。
「…ま、そのせいであたしはヴァンピレスに異能力を奪われそうになったんだけど」
穂積の発言にわたしはえ、と驚く。
「奪われそうになったって…」
「そりゃ口封じのためだろ」
ネロはジト目をわたしに向ける。
「アイツと繋がっていたって事はある程度奴の内情を知る事にもなるから、関係を断つ時にそれ位やるだろ」
ネロは淡々と言う。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20.エインセル ③

「たまたまこの辺を通りかかっただけだよ」
ねー穂積、と短髪の少女は側に立つ長髪の少女こと穂積に目を向ける。
しかし穂積は嫌そうにそっぽを向いた。
「あーちょっとそんな顔しないでよ~」
短髪の少女はそう言うが、穂積はそっぽを向いたままだった。
「何やってんのコイツら」
「夫婦ゲンカじゃね?」
耀平と師郎はお互いに顔を見合わせる。
「どうしてそんな顔するのさ」
「あたしはコイツらと関わりたくないだけよ」
「えー何で~」
短髪の少女と穂積は暫くそう言い合っていたが、やがて短髪の少女はこう言った。
「そんなに拗ねてるんなら、”あの事”、この人達に言っちゃうよ~」
短髪の少女がにやけると、穂積はなっ‼と驚く。
「ちょ、ちょっと、それは…」
「はーい今から言いまーす」
「やめてやめてやめて」
穂積の制止を気にせず短髪の少女はわたし達に向き直る。
「実はこの人、あのヴァンピレスと繋がってたけど今は縁が切れたの」
「え」
短髪の少女の言葉に、わたし達はポカンとする。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 20。エインセル ②

「チョウフウ、だっけか…面倒な敵が増えちまったよ」
なぁ?と師郎は隣に座る黎に目を向ける。
黎は黙ってそっぽを向いた。
「何だよ、チョウフウと同じ学校なのを気にしているのかい?」
お~い~と師郎が黎を右肘で小突くと、黎はちょっと師郎から離れた。
「…別に、同じ学校ってだけで学年違うし」
あんまり自分は奴の事知らない、と黎は棒の付いたアメをくわえる。
「ただ、部活で使っている所が近いってだ…」
黎がそう言いかけた時、不意にあと聞き覚えのある声が飛んできた。
わたし達がパッと声の主の方を見ると、カラフルなピンで前髪を留めた少女と、メガネをかけた長髪の少女が近付いてきた。
「あ、アンタら!」
ネロは2人に気付くとバッと立ち上がり、目を光らせる。
その様子を見た短髪の少女はあーもう殺気立たないの~と笑みを浮かべる。
「また会ったね、あんた達」
短髪の少女はそう言って手を小さく振る。
しかしその後ろにいる長髪の少女がムスッとした顔をしていた。
「一体何の用だ」
目を光らせるのをやめたネロは2人を睨みつける。
短髪の少女はいや~ちょっとね、と笑う。