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ある生き物とある生き物の会話 その19

「世の中の人間が一番求めてるものってなんだと思う?」
「一番?お金?」
「それもだろうけど、一番じゃない」
「じゃあ愛」
「うん、それも正解」
「一番って言ったのに」
「もっと大きく括れると思うんだよ。つまり、正解は共感だ。愛だって、完全に一方通行な愛を受けても気持ち悪いんだ。人は、愛し合いたいんだよ。他にも」
「SNSでいいねされたいとか」
「シンプルに話を聞いてわかるよと言って欲しいとか」
「褒められたいとか」
「うん、それも共感だと思う。褒められるっていうのは、良いものに対する基準が合致したということだ」
「承認欲求だね」
「でも、承認したくないこともある」
「できないものは仕方ないんじゃない?」
「それがそうでもない。その場で、そうだね、わかるよ、君は頑張ってるって言えば済むのに、何故か言いたくないことがある。言えば全部丸く収まるのに」
「本心と違うことを言うのは気持ちの良いものではないよ」
「そもそも共感に対して躊躇いがある人もいる」
「そうかな?」
「場合によるんだ。その人は褒められるのは嬉しくても、例えば、なるべく愚痴を言いたくないとか。愚痴を言う人も嫌い。でも気持ちを共有することは確かに負担の軽減になる」
「わかっていても嫌なものは嫌と。どっちがいいんだろうね」
「さぁね」
「ああ、だから」
「?」
「いや。なんでも」

(だから彼女は、共感を空想の中に求めるのか)