秋の風、さらさらと 頬を掠めたらもう一度、 あなたの横顔を思い出す 絡めた指も 抱きしめてくれる腕も 鼓膜をくすぐるその声も こんなにこころが あったかくなるんだって 初めて知ったの もらったことばも おくったことばも 毛布の中にくるんで 今夜は爪先に あなたの色を塗って眠るよ
胸が詰まる様な切なさを 泪の理由に出来なくて 全てを抱えて歩くことは出来ないと 心臓が動き始めた時に知ったんだ 限りがあるものは美しいのに それに気付かない僕らは贅沢なのかもしれないね 好きなものを好きと言える素直さを 大切なものに手を振る覚悟を 持ち合わせているのにうまく出来ないから 君は泣くんだろう 左様なら、 何かを元あった場所に返して 大人になる
少しずつでいいから ゆっくりでいいから 移りゆく季節の中で言葉を運ぶ ぷかぷか浮かぶ方舟 夕凪、時が止まるように こころが動けば きみにとどけと言葉を編むよ
とうめいに近づく冷えた空気に 溜息を溶かして呟くの 綺麗な月を見ても 隣に君がいなきゃ淋しくて 街で似た香りがすると つい探してしまう 馬鹿だなって、そう言って笑って スクロールしてなぞる会話の跡を眺めては 狭くなる心臓に気付いているの 好きよ、 駆け引きなんかもうやめて その裾を引っ張って振り向かせるの
街には五月蝿い女子高生 ネオンが煌めく看板を横目に 暗い路地裏キスするカップルの間をすり抜け 私は貴方に会いに行く 愛されてるとか愛してるとか知らない けど貴方の吸ってる煙草の匂い 何の銘柄かは教えてくれないけど 私、とっても好きよ。
風が秋の色に染まり始めたら 君は淋しそうに笑うんだ 横顔に哀愁を含んで リップクリームを塗り直す唇に 乾燥の二文字はこれっぽっちもなくて そっと触れたくなるから目を逸らした ツナマヨネーズが好きな筈なのに 今日は焼きおにぎりなんて コンビニおむすびで浮気なんかしないでよ 日が早く落ちる帰り道で 夕日に滲む君の後ろ姿を 瞬きでくり抜いて 思い出という型にはめる
今夜、感情を纏って踊る 月が満ち欠けするこの世で 君の泪はなにものよりも綺麗なのかもしれない 瞳に映るもの全てが 嘘か真かはもうどうでも良いんだ 頬をつたう其れが 夜風に吹かれて乾く頃には とうめいになって こころはなにかで空っぽになって なにかですぐいっぱいになる 単純で複雑な 無限で有限な 愚昧で聡明な どっちつかずな君に見惚れる
急にかかってくる電話とか ふざけてるのに急に真面目になる横顔とか 何でもないそぶりをしていたけど 実はちゃんと好きだったのよ この先暫くは 誰と会って何を話しても どんなに美味しいご飯を食べても 全部君と比べてしまうんだろうなと 行き交う人の波を見ながらぼんやりと思う 平気なふりをしたの お陰様でね、随分上手になったわ 思い出が多すぎて どれから捨てていいか分からないほどよ 手をつければきっと今、泣いてしまう ふ、と坂道から見た入道雲に 馬鹿野郎、と叫びたい気持ちになった
水平線の向こうで 誰かが誰かに愛を囁いている 久しぶりに見た海は綺麗な深い青で たくさんの人に一夏の思い出を作っていた ハンドルを握る君の 日焼けした腕が やけにわたしの鼓動を急かす このままでいいなんて 実はこれっぽっちも思ってないよ 手を繋いでも、抱きしめても きみのこころの全部が 分かることなんてきっとなくて だから、もし失敗したら 嘘だよって笑って 全部夏のせいにしよう
くらくらするくらい ずっと向こうまで 雲 あお空が少しだけ 遠いよ (ちょっとだけ、お久しぶり) (秋の便りが届いたので、) (少しずつリハビリです)