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ファヴァー魔法図書館 #54.5

『ユリさんのグリモワール講義その2』

BGM〜【法界の火】
ユリ「さて、BGMはかけたか諸君。」
ガラシャ「メタ発言はNGよ、ユリ。」
ユリ「極力気を付けるよガラシャ。」
ガラシャ「それで今回は魂を導く云々の話からね。」
ユリ「まず魂を導くとはどういう事なのかだね、突然だが君は日本式臨済宗式のお葬式は知っているかね。」※僕がその形式しか知らないのでここまで狭めてます、宗派によって違いますからね
ガラシャ「知らないわよ。」
ユリ「そうだよね話すと長くなるから仏教については省略するけど、この形式では様々なお経を読むんだ。」※多分宗派によって多少の違いアリ
ガラシャ「解らない人は調べてみてね。私みたいに。」
ユリ「君も君でメタいなぁ......。
まあいい、それでそのお経は基本的に逝きし魂への説明書みたいな物なんだ。」
ガラシャ「具体的には?」
ユリ「私は専門家じゃあ無いから詳しい事は近くのお寺、又は菩提寺で聞いてくれたらいいんだけど、基本的には死んだ後にどうすればいいかという感じだね。」
ガラシャ「ふぅん...あれね、古代エジプトの『死者の書』みたいな感じね。」
ユリ「そうだね、教え自体は全然違うけどニュアンス的な物はそんな感じだよ。」
ユリ「前置きが長くなってしまったがグリモワールはそのような目的でも作られたんだ。」

その3へ続く

P.S.ここの知識は仏教にわかの⑨によって書かれたので信ぴょう性は少々保証しかねます笑
解らない言葉は自分で調べて見てください。そして皆で賢くなろうぜ!!

2

ひっく、ひっく。すっかり聞き慣れた泣き声に目を覚ますと、案の定、となりで寝ていたはずの彼は居なかった。ひっく、ひっく。カーテンの隙間から差し込む月光に照らされた壁掛け時計は、午前三時の少し前を指している。

ひっく、ひっく。ひっきりなしに響く悲歌の音源は言うまでもない、閉めきったこの寝室の外、冷たい廊下にうずくまっているであろう彼の唇だ。ひっく、ひっく。なるだけ音を立てないようベッドを後にした私は、私と彼とを阻む扉をそっと撫ぜる。

ひっく、ひっく。先ほどよりもずっと近くに、ずっと鮮明に聞こえるそれに、なんだか私まで泣き出してしまいそうだった。ひっく、ひっく。彼の夜泣きがいつから始まったものなのかも、その原因も、彼と肌を重ねるだけの仲である私は知らない。

ひっく、ひっく、ひっく。尋ねられるはずが、ないのだ。

ひっく、ひっく。彼が時々、私の名前を呼び間違えることも。ひっく、ひっく。彼が密かに持ち歩いている、四隅の丸まった写真のことも。ひっく、ひっく。そこに写っている、柔らかな笑みを浮かべた女の人のことも。ひっく、ひっく。彼女が私と同じ、長い黒髪をしていることも。

そして、シオンの花束を抱えた彼が時折訪れている、墓地のことも。

ひっく、ひっく。何も聞き出そうとしない私と、何も打ち明けようしない彼は、きっと似た何かに怯えている。ひっく、ひっく。最早どちらのものなのかもわからない泣き声を聞きながら、私は、私と彼とを阻む扉へ縋りつく。何も知らない私は、何も知らないくせに、私と彼とを阻む扉へ縋りつく。

ひっく、ひっく、ひっく。畜生、畜生、私をこんなにも弱虫にしやがって。ひっく、ひっく、ひっく、ひっく。

3

その時、トイプードルに電流走る!!(物理)

「俺ぁよ、アイツに会ったときに死を覚悟したんだ。」
愛知県某所在住のトイプードルさんは、噛みしめるようにゆっくりと語り始めた。
「最初に目に入ってきたのは、黄色い毛並みに赤い真ん丸ほっぺさ。赤いとこがバチバチ音をたてて放電してやがった。戦闘準備万端って訳だ。こっちはボール追っ掛けながら公園走り回った後でぐったりしてんのによ。洒落にもならねえ。」
ふわふわの茶色い毛に覆われた小耳を上下させながら、トイプードルさんは小柄な身を小刻みに震わせる。
「勝敗は最初から決まってたんだ。そこへさらにあの声が聞こえた訳よ。『ポ○モン、ゲットだぜ‼』甲高い声だ。ヤツの背後から聞こえてきやがった。こいつが聞こえちゃ、もうどうにもならねえ。俺のこの愛くるしい尻尾も、一気に臨戦体制に入る。」
彼は、その愛くるしい目を閉じて、真ん丸の尻尾をピンとさせた。
「だがそのときだ、愛しのご主人が投げた緑色のボールが、俺とヤツの間を横切ったんだ。俺ぁ思わずそのボールを目で追っちまった。その隙にヤツは、俺の全身に電気ショックを食らわせやがった。俺ぁ毛並みが良いからよ、電気の通りも良い訳だ。身体中がちぎれるように痛んだ。あまりの痛みに俺ぁ、そのまま気を失っちまった。」
再び開かれたその愛くるしい目には、微かに涙が浮かんでいた。
「気がついたときには、近所の今西動物病院のベットの上だった。完敗さ。俺ぁアイツに手も足も出なかった。可愛さでは負けてねえつもりだが、まだまだ修行が足りねえな。ま、ご主人と一緒に一からまたやり直しだ。」
トイプードルさんは深いため息を吐き出すと、どこか晴れ晴れとした顔で部屋から出ていってしまった。