とある街にて 7
ある高校の生徒が、部活が終わって下校していた時の話。
夕日があと少ししたら沈んでしまいそうな時刻。その生徒はいつも通り帰路を辿っていた。
道のりの半分を歩いた頃、その生徒は奇妙な人物を目にした。
目深にかぶったつばの広い帽子に地味な色のローブ。人口の殆どが黒髪だといわれる超未来カグラにおいて、明らかに異質な白に近い色の長い髪の毛。その生徒は髪を染めたのかと訝しんだが、わずかな残光に照らされたその髪は透明感があり、地が黒だったとは思えなかった。
そこだけ空気が変わったような雰囲気に、その生徒はわずかに惹かれ、そのあとをこっそりとつけていったのだそう。
「はい先生」
白鞘が手を挙げた。
「なんだね、白鞘君」
「知らない人に勝手についていってはいけないと思います」
「話はこれからなので、どうか見逃してあげてください」
その謎の人物についていった生徒は、またしても奇妙な光景を目にした。
路地裏に入りあたりを確認した謎人物は、路地の壁に何か描いたかと思うと、突然その壁に吸い込まれていったのだ!跡形もなく消えてしまったその跡を見て、隠れてその様子を見ていた生徒は、怖くなって一目散に逃げかえったという。
「……っていう話。どう思う? 」
「始めから終わりまでベタな展開のホラー話ですね」
「右に同じく」
「そこには触れないで」
「どう思うかって、暇な生徒が暇つぶしに造った”下手な”噂話でしょう。探せばそんな話、どこにだって転がってますよ。八式先輩は信じるんですか? 」
「そうだよ。こんな胡散臭い話、絶対与太話だって。信じるだけ時間の無駄だよ。な、八式」
しかし先輩は、わずかに言葉を濁すように言った。
「いや、それがさ。もう信じるほかないというか……? 」