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Tell us terrible Terrors:あけて その④

オリエンテーションから数日後の日曜日午前7時50分。養成校高等部校舎前に、3人は集合していた。
「おはようございます、秋津先輩、菅原先輩」
「よっす後輩くん~」
「おはよう永江くん。10分前行動とはしっかりしているねぇ」
「はい……で、ここで合ってますよね?」
「そだね~、8時出発って話だけど……車移動?」
「らしいね。“妖記廊”の人が車出してくれるってさ……と、噂をすれば」
エンジン音に3人が顔を上げると、1台の紺色のハイエース・ワゴンが最徐行で近づいてくるのが見えた。
「あのナンバー……うん、あれだね」
「おー、でっかい車だ~」
潮が先んじてワゴンに向けて駆け出し、後の二人も続く。停車したワゴンの運転席側の窓が開き、30代ほどの男性が顔を出した。
「お、全員揃ってるな。5分前集合とは感心感心。それじゃ、みんな後ろに乗りな」
3人が乗車してシートベルトを締めると、ワゴンはゆっくりと発進して校門を抜けた。
「さて、依頼内容については理解できてるかな?」
運転手の男が尋ねてくる。
「はーい、“八尺様”を倒す!」
「または封印する」
潮と王蕗の答えに、男は頷いた。
「そう。封印用装備については一番後ろのシートにオリコン(折り畳みコンテナ)があるだろ? そこに入ってるから。それから、全員分の“霊凛”と“霊火”もあるぞ。みんな講習は受けてるか?」
「もちろん!」「はい」
潮はサムズアップを示し、王蕗も首肯する。
「自分も行く前に受けとけって言われて受けました」
吉継も答えると、男は目を細めて頷いた。
「真面目な学生たちで何よりだ。目的地までは3時間くらいかかるから、好きに過ごしていてくれ」
車が赤信号で停止したタイミングで、王蕗は席から手を伸ばし、後部座席に載っていたオリコンを引き寄せた。
「おっ、流石王蕗先輩腕長~い」
「こういうところは背が高い強みだよねぇ」
王蕗はオリコンを膝に乗せると、封印装備を確認し始めた。潮はスマートフォンをいじりながら時間を潰し、吉継は再発進したワゴンの車窓から、流れる景色を眺めていた。

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Tell us terrible Terrors:あけて その③

教員はスクリーンを下ろし、プロジェクターを起動した。そこには依頼内容をまとめたスライドが映し出される。
「今回の事案は、県外某村への派遣依頼です。この中だと、おそらく君は知っていますね? 永江くん」
突然指名され、吉継は背筋を伸ばす。
「は、はいっ。俺の故郷っす」
「そうですね。土地勘のある君が参加してくれて、我々としても嬉しいですよ。さて本題ですが、皆さんにお願いしたいのは、準擬神格級怪異“八尺様”の討伐あるいは封印です」
“準擬神格級”――怪異存在の脅威度を測る指標段階の一つである。怪異存在の中でも強力で、一般人から畏怖と信仰を集める類の段階だ。これより上には、ほぼ神格存在と同列視されて伝えられる“擬神格級”がある。畢竟、“準擬神格級”は『上から二番目の強さ』なのである。
「“八尺様”はこの村で約470年前から存在が確認されている怪異存在であり、強力な妖力の持ち主です。しかし特殊な封印措置がされているようで、行動能力が大きく制限されています。そのため、皆さんでも十分に対処可能だと判断しました。幸いにも地元民の永江くんに経験豊富な秋津さん、専門的に学んでいる菅原くんが集まってくれたのですから、きっと解決できるでしょう。皆さんにはこの怪異の討伐または、より高度な封印措置を行ってほしいのです」
そこまで聞いて、王蕗が手を挙げた。
「はい菅原くん」
「“討伐”の方は良いとして……封印用の装備は?」
「それはこちらで用意しています。あとで菅原くんに預けておきますね。多分一番うまく使えるでしょうから」
「ってことは“道満式”か……? まぁ分かりました」
「ねー王蕗先輩、その“どーまん式”ってどういうやつなの?」
「えっと、雑に言うと『結界に閉じ込める』タイプの封印だね」
「はぇー。丁寧に言うと?」
潮と王蕗の会話が盛り上がりかけたところで、教員が手を叩いて制止する。
「話は後にしていただけると助かりまーす。続いて日程についてですが……」
その後、日程や持ち物、任務中の休校処理などについての説明が為され、オリエンテーションは30分ほどで終了した。

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Tell us terrible Terrors:あけて その②

吉継が会議室に入ると、並べられた長テーブルには既に一人、小柄な少女が着いていた。
「おっ生徒~。ってことは今回の“演習”の参加者?」
「あ、うん」
「よろしく~。私は秋津潮、高2だよ。気軽に潮先輩と呼んでくれぃ」
「えっ」
潮の自己紹介に、吉継は硬直する。男女で体格差があるとはいえ、ともすれば小学生にも見えるほど小柄な目の前の少女が、自分より年上とは考えつきもしなかったのだ。
「す、すいませんタメ口聞いて……永江吉継、1年です」
「気にすんなよぅ。ほれ座りな?」
「あっはい」
吉継がパイプ椅子の一つに腰掛けて間もなく、再び会議室の扉が開き、女性教員が入室してきた。
「あ、高校生組はもう来てますね」
「“高校生組”? ってことは中学生も誰かいるんです?」
潮の言葉に、教員は首を横に振った。
「もう一人は大学生の人ですよー。時間的にまだ講義があるのかな……」
その時、入り口扉がノックされた。
「あ、来ましたね。どうぞー」
扉が半分ほど開き、青年が顔を覗かせた。しかしその位置が異様に高い。扉の上枠に頭頂を擦るほどの高さに頭が浮いている。
「あの……? 入って良いですよ……?」
教員に勧められて、青年は半開きになった扉の隙間に身体を滑り込ませるようにして入室してきた。改めて現れた彼は、想定より遥かに長身であった。先ほどは身を屈めていたようで、背筋を伸ばすと身の丈は2mを越している。なるほど屈まなければ部屋に入るのもままならないわけだ。
青年を見た吉継と潮の感想は、まったく同じだった。
「「……長ぇ!」」
「……君ら仲良いね」
「あ、いや初対面っす……」「うんうん」
「そう……仲良くなれそうだね君ら。僕は菅原王蕗。よろしく」
二人と握手をして、王蕗もまたパイプ椅子の一つに腰掛け、窮屈そうに身体を丸める。
「それでは、本事案の参加者が全員集まったので、説明を始めますね」

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Tell us terrible Terrors:死にゆくお前に中指を! その①

駅前のゲームセンターからほくほく顔で出てきた女性が一人。所謂“地雷系”と呼ばれる出で立ちで、クレーンゲームで勝ち取ったのであろう巨大なクマのぬいぐるみを抱える姿は可愛らしいとさえ評されよう。そんな彼女の前に立ち塞がるのは、黒服姿の青年。
「……こんな所で何をしている?」
「あ? 見りゃ分かんでしょ、今日発売の『ててまるくん』巨大ぬいぐるみ取ってたのよ。500円で取れたんだかんね。あたし天才」
「……問い直そうか。『業務時間中に』『ゲームセンターで』何をしている?」
「……サボり?」
男は溜め息を吐き、口調に苛立ちを隠すことなく続けた。
「ふざけてんの?」
「うるっせェなァ~~~! 別に良いだろうがよどうせ時間は腐るほどあんだからァ~!」
「腐るほどは無ぇわ! 猶予がどれだけあるかも分かんねえんだぞ!」
「お前こそ業務絡みの内容不用意にくっちゃべてんじゃねェよクソガキがよォ~!」
「この程度で規定に引っかかるかよバーカ! テメェの勤務態度の方が万倍引っかかるわボケが!」
女性は答えず、手にしていた『ててまるくん』を青年に叩き付けた。
「あーやめやめ! お前と話すと喧嘩しか起きねェ!」
「そっちが真面目にやってりゃ起きるはずの無い喧嘩なんだよなぁ!」
「るっせ、先輩サマに説教なんざ1年早いんだよォ」
女性は肩にかけていたポシェットから通信インカムを取り出し、耳に装着した。
「あたしはあたしのペースでやっから良いんだよ別に。どーせお上は全部現場に任せるっきゃ無ぇんだからァ……」
二人は駅前のコインロッカーにぬいぐるみを押し込むと、その場を後にした。

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Tell us terrible Terrors:あけて その①

「これは、俺が生まれ故郷にいた頃の話なんだけどさぁ」
放課後の教室に、一人の男子生徒の囁くような声が響く。彼の周囲には、クラスメイトの男子生徒が数名。
「俺、県外出身で、山の中のド田舎の村で生まれたんだよね。小学校まではそこで育ってさ。中学上がるタイミングで親の転勤でこっち引っ越してきたのよ。で、村での話なんだけど、村に『めっちゃ背の高いお姉さん』がいたの」
「へぇー、どんくらい? 175? 180?」
クラスメイトの野次に、少年はニタリと笑う。
「推定2m以上」
「マジで!?」「やっば!」「それもう半分妖怪だろ!」「いやそれは2m級の女性に失礼やろ」
口々に盛り上がるクラスメイトたちを制止し、少年は話を続ける。
「で、そのお姉さん、俺が出かけるといつもいつの間にか付き纏ってたんだよね。身体がデカい分、とんでもない大股でさ、俺がどんだけ走っても引き離せねえの。で、そのお姉さん、『あけて、あけて』って言いながら俺のこと追いかけてきてたんだよね」
「何を開けるんだよ……」
「それが俺にも謎でさぁ。いろいろ試したよ? 目、口、ペットボトル、ノート、虫かご、ジッパー……でも、お姉さんが反応することは無かったんだよなぁ……」
「普通扉とかじゃねえの?」
「……その手があったか」
「え嘘本気で気付いてなかったん?」
「それでな。そのお姉さんの不思議なところが、お姉さんいつも、途中で追いかけるの止めちゃうんだよな。突然ぴたっと止まって、そこからじっと俺のこと見送ってくれんの」
「……ってのが、お前の『イマジナリー・フレンド』かー」
先ほどまでの怪談大会のような空気から一転、空気が一気に和らぐ。
「へぇ~、でも人型なの良いなー。俺のIF(イマジナリー・フレンド)なんかパンタグラフだぜパンタグラフ」
「電車の上に付いてるアレとお友達やってたお前の神経が信じられねえよ俺ァ」
「俺は黒猫だったからまだ普通だな」
能力者養成校の教室の一室で繰り広げられていたそれは、どうやら『自分のイマジナリー・フレンドについて語る会』だったようだ。
「やっべ、俺この後用事あるんだった。じゃあなみんな、楽しかったよ」
最後に語り役になった少年、永江吉継は鞄を手に取ると、急ぎ足で教室を後にした。

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい キャラクター紹介④

燿子の能力
【コックリさん】
・略霊:『儀式』による占術。儀式は「共に儀式を行う1名以上の参加者」「外部と接続されていない任意の文字出力手段」「火のついた蝋燭」を必要とする。まず、参加者以外から観測されていない状態で火のついた蝋燭を立てる。次に、参加者全員が文字出力手段に指を置く。この状態で「コックリさん、コックリさん」と文頭に加えて口頭で質問を行うことで、文字出力で回答が返ってくる。『コックリさん』は未来について回答することはできないが、現在以前に由来するあらゆる情報にアクセスすることができる。また、1度質問した参加者は、他の参加者全員が1度ずつ質問するまで再度質問することはできない。
文字出力手段は必ずしも”10円玉と紙”である必要は無く、文字さえ出力できるなら鉛筆を握るだけでも良いしタイプライターでも構わない。ちなみにインターネットに接続された機器では儀式に必須の『閉塞状態』に穴が開くため、儀式を実施できない。
・異聞:対象1名以上と自身を、黒い霧を練り固めたような球状結界に幽閉する。結界内で1度攻撃行動を行った者は、自分以外の全員が1度ずつ攻撃行動を行うまで再度の攻撃行動を取ることができなくなる。また、結界内でこの”語部”は、『コックリさん』と同様現在以前のあらゆる情報を獲得することができる。『こっくりさん』の儀式を、戦闘に適した形式に昇華したような形態。
・剰霊:『自分以外の参加者』を用意せずに略霊儀式を行うことで発動する。動物霊に憑依されることで、獣の如き敏捷性と高い知覚能力を得る。憑依されている間も自我は残ったままだが、動物霊の気分次第では肉体の主導権を乗っ取られることもある。また、剰霊能力発動中は、狐耳と尻尾が肉体に現れる。動物霊と”語部”双方の合意が取れなければ解除はされず、動物霊が許さない限り出ていってもらえないのは勿論、逆に動物霊が飽きても”語部”が引き留めるなら憑依は終わらない。
『こっくりさんの禁忌』を自らの手で引き起こす形態。

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Tell us terrible Terrors:のろい、まじない、きりはらい キャラクター紹介③

清嘉の能力
【メリーさん】
・略霊:召喚体の使役。召喚体は身長60㎝程度の、ロリータ衣装の少女のような姿をしている。また、本質的に”人形”であるため、破壊されても駆動可能な関節が繋がっている限り、バラバラになった部位の一つ一つが独立して動き続けることができる。最大召喚数は1体。
召喚体は”語部”が直接的(肉眼で見る、声を聞く等)または間接的(映像や録画録音越しに認識する等)に認識したことのある相手を対象として、その背後に瞬間移動することができる。対象が移動した場合、召喚体は徒歩で追跡する。
召喚体は対象の位置を常に把握できる。
”語部”は召喚体の位置を常に把握できる。
・異聞:召喚体の使役。召喚体は身長1m程度の、ロリータ衣装の少女のような姿をしている。
召喚体は両手の指を鉤爪に変化させることが可能で、高いパワーとスピードを発揮することができる。
また、召喚体が放つ『私メリーさん。今、あなたの後ろにいるの』というメッセージを対象に聞かせることで、対象の背後に瞬間移動することができる。この時、メッセージは直接声にするのでも、電話や録音による間接的なものでも効果を発動できる。
対象の背後に障害物がある場合、対象の背後で出現に十分な空間がある最も近い位置に出現した上で、物理攻撃によって障害物を破壊しながら対象に接近する。
・浄霊:召喚体の使役。召喚体は身長160㎝程度の、ロリータ衣装の女性のような姿をしている。手足の関節は人形のような球体関節であり、体表は木材のような硬質性を具えている。
召喚体は”語部”の背中から生えるように負ぶさって現れ、その背から決して離れようとはしない。両手の指を鉤爪のように変化させることが可能で、高いパワーとスピードを発揮できる。この高い能力は攻撃に用いても勿論高い効果をもたらすが、真価は『防御』の際にこそ発揮される。
召喚体は自律行動し、”語部”への攻撃を防ぐために振るわれる破壊力と速度は通常時の数倍に至る。
『捨てられた人形の恨み』である”メリーさん”の望みであった「所有され、所有者に愛されること」を叶え、その愛にメリーさんが応えた形態。