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CHILDish Monstrum:或る離島の業務日誌 その②

港からの道中、時折遭遇する島民に挨拶しながら、キュクロプスの住居に向かう。
実際に近くまで来てみると、それは思っていた以上に巨大だった。
1辺当たり30m以上はありそうな巨大な立方体。壁に触れてみると、どうやら何かの金属でできているようだった。
ふと思い出し、スーツのポケットから手帳を取り出す。前任者から聞いていた、キュクロプスについての情報やアドバイスをまとめているものだ。

・作業場(箱形の建造物)から作業音が聞こえてこなかった場合、東側に隣接した小屋(居住スペース)を尋ねること

“作業場”の扉に近付くが、中からは何も聞こえない。壁に手を付きながら東側に回ると、木材と煉瓦でできた、どこかメルヘンチックな雰囲気の小屋があった。
西側の壁は“作業場”にぴったりと接しており、扉のあるのと同じ側の壁には、遮光ガラスの窓が1つ。周囲を1周したところ、他に窓は無いようだった。
とりあえず扉の前に立ち、再び手帳を確認する。

・小屋に入る際は、扉に設置されたノッカーを叩くこと

扉には、日本では珍しい金属製のノッカーが取り付けられていた。重い金属環を握り、3度扉を叩く。反応は無い。ドアノブに手をかけると、施錠はされていなかったらしくあっさりと開いた。

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CHILDish Monstrum:怪物報恩日記 6日目-1

時、9時30分。場所、老人の家の廊下。
運動能力の回復のため、今日も廊下を往復しようと部屋を出た時、玄関の方であの老人が怒鳴る声が聞こえた。
あの老人と共に過ごした時間は決して長かったわけでは無いが、あの善人が怒鳴るなんて何があったのか、疑問に思いそちらに歩いていくと、老人は客人と相対していた。
客人は2人。1人は、ひょろ長い体格の、背の高いスーツ姿の若い男。もう1人は、薄着の和装に身を包んだ、どこか軽薄そうな雰囲気の少女。男の方は知らないが、こちらはよく知っている。我が愛しの相棒、荼枳尼天、ダキニだった。
その姿を見とめた瞬間、ほとんど反射的に駆け出していた。十分に回復していなかったせいで転びそうになったが、ダキニが素早く抱き留めてくれた。
何故ダキニがここにいるのか、彼女に尋ねた。彼女によると、どうやらわたしやダキニの体内には、位置情報の発信機が埋め込まれているらしい。それならもっと早く迎えを寄越すこともできたと思うけれど。
ダキニとこの1週間弱、何があったのか話しているうちに、老人はあのスーツの男を家に上げていた。とりあえずダキニと連れ立って、彼らが入っていった居間に向かう。
その短い道中、再びあの老人が怒鳴る声が聞こえてきた。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その⑪

少しずつ意識が薄れてきた頃、遠くから私に向けて声がかけられた。
「おい、そこの化け物! お前、ベヒモスだろ!」
そちらに目だけを向けると、相変わらず拘束具まみれのままのフェンリルが立っていた。
「やっぱりそうだな、やけに大人しいと思ってたんだ。お前の性格っぽい。ちょっと待ってろすぐ片付ける」
「っ……!」
建物だけは巻き込まないでくれ、そう言う前に彼は片手を振るった。その余波で、周りにいたインバーダ達は塵と化した。
「…………⁉」
今起きた状況に驚愕しながらも、人型に戻る。身体の至る所に鈍痛や痣、切り傷が残っていた。
「その建物、守ってたんだろ? 流石に壊さねえだけの良識はあるさ」
駆け寄ってきたフェンリルはそう言いながら、民間人が入っていったあの建物を指した。
「……そうだ、あの人たち!」
無事だろうか、中で崩落でも起きていないだろうか、そう思って、急いで中に入る。
痛む身体に鞭打ち、中に入っていくと、奥の方であの人たちは一塊で蹲って震えていた。どうやら怪我などは無いみたいだ。
「大丈夫ですか、皆さん! 外のインバーダはもう倒しました!」
民間人の1人が顔を上げる。セーラー服姿の女の子だった。中学生だろうか、高校生だろうか。
そんなことより、彼女は目に見えて怯えた表情で私を見返していたのだ。
「……皆さん今のうちに外へ、早くここを離れ……」
彼女の表情は気にしないようにしながら言おうとして、建物の奥、民間人たちの死角から、1体のインバーダが迫っていることに気付いた。大きな蜥蜴のような姿のインバーダが、音も無く壁を這い、みんなに迫っている。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その⑩

奴らの方に駆け出しながら、“怪物態”に変化する。初めてインバーダと戦ったあの日、初めて変化したあの姿。能力を半ば暴走させてしまったせいで、一度は街をひどく壊してしまったあの姿。もう失敗はできない。私の後ろには、守るべき人たちがいる。
どの動物のそれとも微妙に違う、巨大で重厚な怪物の身体で、インバーダ達を蹴散らす。
怪物の身体に備わる本能が、「全て破壊し、喰い尽くせ」と語りかけてくる。それを自我のある『私』の理性で強引に抑え込み、周りの建物には決して触れないよう、インバーダだけを慎重に、そして乱暴に、踏み潰し倒していく。
衝撃で民間人が避難している建物が揺れているのに気付き、慌てて身体の動きを止め、穴の前に身を伏せる。せめて、奴らがあの人たちを襲えないように。
インバーダ達はあの人たちを狙っているのか、私に何度も攻撃を放ってくる。けど、ただでさえ巨大な怪物の身体に、能力で質量増加までしている。奴らの攻撃は私をほんの数㎜だって動かすことはできなかった。
それでも、何度も攻撃を受ければ、流石にダメージが蓄積してくる。厚く硬い皮膚にも少しずつ目立つ傷ができ始め、筋肉と脂肪の鎧を通して、衝撃が少しずつ、それでいて着実に、体内に影響を与えているのを感じ始めていた。

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CHILDish Monstrum:怪物報恩日記 5日目

時、6時35分。場所、老人の家の居間。
朝食の後、老人と昨日のインバーダ襲撃の一件について話し合った。
あの後、村の漁師たちとインバーダの間に割って入ったわたしは、すぐさま怪物態に姿を変えた。ろくな武器も無い、身体機能も十分では無い、体格差まである、そんな状態で戦えるわけが無い。
多頭の巨大なコブラの姿をした怪物態、“ナーギニー”。大蜈蚣がその毒牙をわたしの鱗に突き立てた。しかし、ただでさえ強固な鱗の装甲に加え、“ナーギニー”には有毒物質を操作する異能もある。大蜈蚣の牙から流れる毒液を逆に支配下に置き、棘状に変形させて奴の体内を破壊し、暴れ出したインバーダの頭を噛み砕いて倒し、すぐに人型に戻った。巨体での戦闘は、肉体への影響が大きかったからだ。直後、わたしは体力を使い切ったためか気を失った。
話し合いが始まって、老人から最初にかけられた言葉は、昨日の戦いがわたしの身体に障っていないかという質問だった。
正直言って、意外だった。あんな怪物に化けるのを見られたのだから、恐ろしがられてもおかしくなかったのに。いくら彼が善人と言っても、あるいはインバーダを倒したことを感謝される程度が自然では無いか。わたしよりずっとか弱い人間である彼が、わたしの身を案じている。全く以て未知の感覚だった。
わたしが無事だと答えると、老人はようやく、わたしが何者なのか、ということを問うてきた。
わたしは『ナギニ』と名乗った。インバーダ、昨日の大蜈蚣のような化け物と戦うために生み出された怪物である。そう答えた。
老人は、わたしの答えを聞いて複雑な表情で黙りこくった。
現状、わたしの身体は十分に回復していないのに戦闘を行ったせいで、調子が良いとは言えない状態だ。もう少し、ここで厄介にならなければ帰れないのに、なんだか気まずくなってしまったような気がする。

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CHILDish Monstrum:人造神話隊 キャラクター紹介

・ビヤーキー
性別:女  外見年齢:14歳  身長:148㎝
特殊能力:飛行能力。また、飛行速度・高度に拘らず、飛行中自身はダメージを受けない。
主な使用武器:バグナク
パーティ〈人造神話隊〉の足担当。みんなを背中に乗せて空を飛ぶ。髪型はツインテールだが、何故かツインテ部分も自由に動かせる。飛行中は何となく翼の形にしているが、別にその形で無いと飛べないわけでも無ければそれでバランスを取っているわけでも無い。ちなみに能力で自分はどう空を飛んでも平気だが、乗っている人らは効果の対象外なので文字通り他者の命を背負うことになる。渾名は「ビャキ/ビャキたん」。

・ディープ=ワン
性別:女  外見年齢:12歳  身長:139㎝
特殊能力:信仰対象を強化する
主な使用武器:自動小銃、三叉槍
パーティ〈人造神話隊〉のバッファー。対策課の職員さんにもらった本の影響で兵器とかが好き。能力は「この人/ものは強いんだぞ!」というある種「信仰」のような気持ちが、信仰対象の強さに直結するというもの。味方にするととても心強い。渾名は「ぷわん」。

・ティンダロス
性別:女  外見年齢:14歳  身長:151㎝
特殊能力:攻撃の触れた固体を腐食させる/「角」を介して瞬間移動する
主な使用武器:双剣
パーティ〈人造神話隊〉のアタッカー。相手がスライムとかじゃない限りまず防御力が意味を成さないのでとても強い。そっちの能力が強すぎて、瞬間移動の方の能力は今回は使わなかった。渾名は「ティー」。

・ナイトゴーント
性別:男  外見年齢:15歳  身長:162㎝
特殊能力:自身の存在を希薄にする
主な使用武器:大鎌、革鞭
パーティ〈人造神話隊〉の保護者役。隠密行動に適した能力を利用して戦場を移動し、敵の隙を作ったり味方の隙を潰したりしている。移動中は体重ほぼ0にしているのでビヤーキーに乗っていても負担にならない。他の2人も見習ってほしい。渾名は「ヤキ」。

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CHILDish Monstrum:カミグライ・レジスタンス その⑨

「デーモン、穴が開いた!」
「ちょっと狭いな。まあ良いや、みんなも助けてほしいって言ってたし……」
怪物態に変化していたデーモンが、長い尾で民間人を数人巻き取り、軽く勢いをつけて投げ飛ばした。
「デーモン⁉」
あんな速度で投げたら、絶対怪我する!
結局、心配は杞憂に終わった。いつの間にか包囲の外に待機していたデーモンが、またもや尻尾で民間人たちをキャッチして、安全に地面に下ろしたのだ。
「え……ええ⁉」
さっきまでデーモンがいたはずの場所を見て、思わず声をあげる。そこには相変わらず、怪物態のデーモンが立っていたのだ。
「え、デーモン⁉ 分身……?」
包囲の中と外のデーモンを交互に見ながら、疑問が自然と口から出る。
「いや? 僕は一人だけだけど。……それじゃ、僕は外に送った分の世話しなきゃだから、あとの人達は君が守るんだよ」
「え⁉ あ、了解⁉」
デーモンは言い残して、包囲の外に消えてしまった。またインバーダたちが襲い掛かってくる。私の能力でこれら全部を民間人を守りながら片付けるのは難しいと判断し、重くした拳を建物の壁に叩きつけて破壊した。
「皆さん、中へ!」
民間人たちは少しずつ、建物の中へ避難する。最後の1人が入っていったのを確認してから、壁の穴の前に仁王立ちになった。
「…………絶対に通さない。お前ら全部、叩き潰してやる!」

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CHILDish Monstrum:怪物報恩日記 4日目

時、11時22分。場所、老人の家。
昨日の夕食から魚を食べさせてもらえていたこともあり、ダメージの回復は順調に進んでいた。少しなら立ち上がって歩けるようになったので、家の中を歩き回って運動能力の回復・維持も並行することにした。
廊下を往復していると、玄関の引き戸が勢い良く開いた。あの老人は扉に鍵をかけるということをしないのだ。
扉を開けたのは、40代後半程度と見られる中年の男性だった。この漁村の住人だろう。男性は慌てた様子で、海に妖怪が現れたと言った。彼の話す内容からして、おそらくインバーダが現れたのだろう。
しかし、彼は『インバーダ』ではなく『妖怪』と言った。つまり、この漁村はインバーダ、並びにモンストルムを知らないということ。モンストルムとインバーダ対策課の守護は、この漁村に届いていないということ。
老人は中年男性の言葉を聞いて、玄関に立てかけてあった鉈を手に家を出た。
たしかに彼は漁業従事者なだけあって、痩せこけているようで全身に無駄なく筋肉が付いており、実戦に出てもそれなりに良い動きができる事だろう。
しかし、相手はインバーダ。しかも、中年男性の話から推測するに、全長約十数mの中型。軍事訓練すら受けていない一般人に、どうこうできる相手では無い。
だから、老人に申し出た。わたしも連れて行ってくれと。当然、老人はそれを許さず、わたしには大人しく寝ていろと言いつけて出て行ってしまった。
そして当然、わたしもそれに従う訳は無い。彼らと20秒ほど時間を置いて家を抜け出し、海岸に向かう。
大蜈蚣のような外見のインバーダを、村中の漁師が手に手に武器代わりの農具を持ち、追い返そうとしていた。決して力のあるわけでは無い、それどころか非力とさえ言える人間が、決死の覚悟で勝ち目のない脅威に立ち向かっている。肉体が戦闘に堪えられなくとも、わたしの能力が彼らを救う以外の選択肢を取らせてくれなかった。