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無能異能浪漫探訪⑪ 降霊準備、ヨシ!

「あ、いっすよ。さて、ご存じの通りこのやり口、一人じゃできないくせに部外者もいちゃいけないわけなんですが……協力してくれる方、いませんかね?」
「私たちは当然、参加しますが」
目つきの悪い方が言う。もう一人も力強く頷いている。まさかの同好の士か?
「私もやるー」
トモちゃんも乗ってくれた。
「トム、どうだ?」
弥彦氏に呼びかける。
「……あ、うん、やる」
彼がそう答えた直後、二人組が露骨に嫌そうな顔をしたけど、多分気のせいだよな?
「……俺は興味無い。1時間も席を外してりゃあ足りるか?」
怖い目つきの男性がそう言ってきたので肯定で答える。彼はそのまま出ていってしまった。
「それじゃあ……全部で5人。すぐ準備しますんで、少々お待ちください」
肩掛け鞄から、専用の紙を入れたクリアファイルを取り出す。
「え、何、その紙持ち歩いてんの……」
弥彦氏がやや引いた感じで訊いてくる。
「そりゃ勿論。呼ぶ手段も祓う手段も常に持ち歩くようにはしてんのよ」
「へぇ……」
床に直接用紙を置き、鳥居の絵の上に財布から取り出した10円玉を乗せる。偶然にも昭和44年製のやつだった。これは上手くいきそうだ。
「まあ、準備なんてこれっきりなんで。さ、10円玉に指を置いてください」
俺に続いて、二人組、トモちゃん、弥彦氏、双子が10円玉に指を置く。
「……ん?」
最後に指を置いた二人の方をもう一度見る。弥彦氏や2人組よりも更に幼い、ギリ小学生か中学1年生かってくらいの二人組。男女だけど結構似てるから多分双子。向こうも見返してくる。
「……誰?」
いや、そういえば靴の数と人数がこれまで合ってなかったな。こいつらが残りの二人か。

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無能異能浪漫探訪⑩ ハッタリ屋とコックリさん

弥彦氏に連れられ、例の部屋に入る。玄関には大小さまざまなサイズの靴が全部で6組。
「めっちゃいるじゃん……」
「いや、もう少し多い日もあるし、このくらいなら割と平均的な感じっすよ」
「マジか。結構デカい集まりだったりする?」
「そっすね」
「わーお」
弥彦氏に続いて居間に入る。家具が一つも無いのにはビビったが、それを無視すると最初に目に入ったのは、部屋の隅に腕を組んで立っている20代半ばくらいに見える男性だった。さっきのトモちゃんと違って、ストレートに怖い目つきでこっちを睨んできている。
周囲を見回すと、続いてさっきのトモちゃんを発見。隣の部屋であの女子二人組と何やら遊んでいる。
「どうも、新入り連れてきました」
弥彦氏がそう言って俺を指差した。最初に反応したのは、トモちゃんだった。
「あれー、さっきの人じゃん。新入り? でもその人って……」
「おっと、まさか俺の力を疑っているんですかい? そいつは心外だなァ」
トモちゃんの言葉を遮り、ハッタリを開始する。
「聞いて驚け。……俺には、降霊術ができる」
飽くまで自信満々に。すると意外や意外、反応したのはあの二人組だった。
「降霊術……?」
「それ、本当ですか?」
「お、おう勿論。みんなも名前くらいは知ってるでしょう、『コックリさん』ってんですがね」
あの二人が、警戒しながらもこっちにやって来た。
「やってみてください」
2人組のうち、目つきの悪い方がそう言った。

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無能異能浪漫探訪⑨ オカルトマニアの悪知恵

「なあ、その集まりに俺も仲間入りできないかなぁ。せっかく『そっち側』と接触できるチャンスなんだよ」
「んー……」
俺の提案に、弥彦氏は微妙な表情をした。
「あーっと、ヨリオ。何かその手の能力を持ってたりは……」
「するわけ無いだろ。俺ァパンピーやぞ」
「となると……ちょっ……と、難しいかもなぁ……」
「え、なんで」
「いや、俺を呼びに来たあの人、トモちゃんっていうんですけどね。あの人も例によって能力者なんすけど、あの人の能力が、『他人が能力者か分かる』ってものらしくて……」
「……?」
さっきそのトモちゃんと遭遇した時のことを思い出す。なんで能力者が判別できるだけで俺が階段から落ちるのを手も触れずに止められるんだ……?
「いや、今はそこはどうでも良いか」
「何が?」
「いや、気にしないでくれ。けどなぁ……そうかー……。能力者だって言い張ったら押し通せないか?」
「いや無理でしょ……あ、いやでもなぁ……」
「ん、何か可能性ある?」
「いや、仲間に俺の先輩がいるんすけど、その人の能力の都合上、その人、トモちゃんの能力に引っかからないみたいなんすよね」
「マジで? それ、俺にもワンチャン無い?」
「無いです。あの人はそういう能力ってだけなんで。そもそも、能力者であることを主張したところで、何もできないなら即バレするだけでしょ」
「いいや、そこは考えがある」

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無能異能浪漫探訪⑧ 本物見つけた

「いや実はな、ついさっき、君がこのアパートの3階までひょいと跳んでるところを目撃したんだけどな」
「げ、見られてたのか……。一応気を付けてたのにな」
トム君改め岩室弥彦氏は、しくじったとでも言いたそうな顔でそう呟いた。
「へへっ、これからはもう少し気を付けるんだな。……それで、ありゃ一体どんなメカニズムなんだ? どこにでもいるただのオカルトマニアにも分かるように説明頼む」
「ん……」
弥彦氏は、数秒考え込んでから口を開いた。
「あーっと、ヨリオ。超能力とかの類って、信じてたりします?」
「いや、信じるも何もあれは実在するべ。実際、君も謎ジャンプかましてたろ」
「お、おう。……まあ、言っちまえば超能力みたいなものなんすよ」
「なるほど理解した。じゃあ次の質問」
「まだあるのか……」
「オカルトマニアが『本物』に出会って、たった一度質問しただけで終わると思うなよ?」
「あっはい……」
「あの部屋、何なんだ? あの部屋に出入りする人間を君含め4人ほど見たが、同じ家に住む兄弟姉妹にしちゃあ、ちょっと似てないよな?」
「兄弟姉妹でも似てるとは限らないと思いますけど……まあ他人だけど。まあ、能力者の溜まり場みたいなもんっすね」
「マジで⁉」
思わず大声を上げ、弥彦氏に掴みかかる。
「マジだけど……耳痛え。あと手は放せ」
「ああごめん」