ピアノ泥棒 (リクエスト)
僕は、昔泥棒だったんだ。
あはは 、本気にしないで。
お酒の席では、話半分はご愛嬌って言うじゃないか。
僕の昔話、聞いておくれよ。
ある雨の日曜日。僕は中野にいたんだ。
雨宿りのフリして品定めをやってたんだ。泥棒だからね。
ぶらぶら二丁目を歩いてたらさ、あのおっきな楽器店あるじゃん?あそこができる時だったんだよ。
でかいトラックが止まって何か搬入してたんだ。
これでも泥棒をする前は、ピアノ弾きだったからね。
本当だよ?よくライブだってやったもんさ。
それでピンと来たんだ。
スタンウェイのヴィンテージ 。ピアノ弾きなら誰もが憧れる名品。
正直目がくらんだよ。あいつだったら、僕は誰よりも上手く弾ける自信があったからね。
あのピアノ盗んで弾きたかったよ、僕の自慢のクラシックバラード。
あれを聞かせたら、出ていったあの娘も戻ってきてくれるかなーなんて考えちゃったり。
でも、あんな大物は無理だった。なら、弾くだけでもよかった。いや、眺めるだけでも。
そうと決まれば早速忍び込んだよ。深夜の3時頃だった。
ピアノを前にして、じっとしてられなかった。おもむろに弾いたさ、午前3時のニ長調。
ピアノを聴いてどうせ野垂れ死ぬだけの人生さ。生きるために盗んで、盗むために生きてきた。拍手ひとつも貰えないステージでね。
ーーと、ここまで言ってきたけど全部嘘だよ?
そんな顔しないで。こんな馬鹿な話があるわけないじゃん?
今から僕の出番だ。こう見えてピアノは得意だからね。
聴いてよ。あの日と同じクラシックバラード。
馬鹿な男のメロディーでもまたにはさ。
ピアノを聴いてどうせ野垂れ死ぬだけのくそったれの人生ならさ、ステージの上で拍手喝采ってゆーのもそんなに悪いもんじゃないよな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
memento moriさん リクエストありがとうございました!
初めてやったんですけど、いかがでしたかね?
他の3名様!もう少しお待ちください!なかなか出来なくて……泣
不定期でこうゆう企画やりますので、書き込んだ際には、リクエストお待ちしております!!
これから増えていく作品には全て、「サキホ 短編集」 ってタグつけます!よろしくですっ!