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優しい毒

誰にも好かれる奴
居るわけない漫画のキャラクター的属性を持つリアルワールド人は実在するか
答えは yesである
僕はたった1人知っている
何をするにも皆んなそいつを推薦する
絶対的信頼
時間さえあれば大勢に囲まれる
絶対的人気
何者をも寄せ付けない
絶対的頭脳
これで性格でも悪けりゃ多少の救いはあるが残念だが性格も超がつくほどの優しい奴
いけ好かないと思うだろうが俺はそいつが嫌いではない
不思議なのだありとあらゆる面で完璧という嫌われそうな要素の中でも最も強そうな要素の持ち主なのに
嫌いになれない
僕は何年もそいつと友達いや親友レベルかもと言えるほどの関係で居続けたなんとも心地いい
そういう毎日だった
だけど今になれば思う なぜ人であったはずのアイツに僕らの知らない顔が無いなどと思っていたのか
表の顔が整っていればいるほど裏は歪んでるものだ
摂理だ 人間の構造だ
そう我々は作り物なのだ 完璧な創作物はいつの時代も生まれないもの
気づくのが早ければ僕はアイツとちゃんとした親友だったかもしれない
歪んだ友情の果てに待つのは破滅だ
それもまた摂理だ 世界の構造だ
そしてその摂理通り 構造通り
僕達は破滅した アイツがこの世から消えるという形で
そして僕は今歪んでいる 酷く歪に
入口はあっても出口はない
僕は今一生の牢獄に後悔と同居してる
僕達2人は望んだ方向へ走ろうとして望まぬ方向を歩んでしまった
きっとそれぞれが目指した道は同じようで違う道だった
だけどたどり着いてしまった道は全く同じ結末を迎える道だったのだ
僕達はお互いにとっての優しい毒だったのだろう

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どんな夢だった?

ため息一つ 一日の終わりにいつもやっている
先輩の癖だ 何かあったんですかっていつも聞くけど
結局哲学うんちくを繰り出されて話を逸らされる
専攻科目のことになれば多分この人に勝てる人は早々いないだろう
そのくらい長いし 何を言ってるのか分からない
ただ話が上手いからか惹き込まれる 意味が分からないのにもう少し聞いてたいと思う
この前それを同級生仲間に話したら恋の始まりだのなんだのと言われて笑われたな
ただ否定も肯定もしなかった 僕は先輩が好きなのかどうか分からない 嫌いでない事は確かだが
僕にとってどういう存在かがなんとも言えない
とにかく不思議な人なんだ
ここに来てから1ヶ月くらい経つけど先輩と会わない日はないというか毎日会ってる
偶然だね なんて4回目くらいで嘘ですよねって言った
狙ってなきゃ全部偶然になるんだよーって持論を聞かされながら2人並んで歩く帰り道
なんでか分からないけど先輩と一緒にいると知り合いと会わないなんでか2人して別の空間にいるみたいな気分だ
本当にこの人には不思議という言葉が似合いすぎて怖い
でも楽しかった
傍から見れば先輩後輩関係は確実に逆に見られるくらい年齢に似合わない振る舞いをする先輩を眺めながら時々巻き込まれたりして時々哲学話を聞かされたり
そうしてると疲れてるのを忘れさせてくれるから
知らないうちに一日の中になくてはならない時間だ
しかし4月から加わった新しい時間割も昔と何ら変わらない時間割になる日は結構すぐやって来た
先輩と出会って2ヶ月目になる日の朝
珍しく先輩と会わない 行きも帰りもどこを歩いてもどこにいても神出鬼没だからねーなんて言いながらひょっこり現れていた人が突然居なくなるなんて怪奇現象だ
久々に会った同級生仲間にそれとなく先輩の話をしたら
聞くヤツ全員首を傾けて目を丸める
僕1人だけ違う時間を生きて来たみたいだ
浦島太郎の気持ちが痛いほど分かった

どんな夢だった?

結構楽しかったよ それじゃ


そう言って先輩はどこかへ消えて行った

不思議な人は最後まで不思議な人だった