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独りぼっちの神様

独りぼっちの神様は
全てを作り上げた
何もかも理想通りに進む魔法の歯車で出来た夢の世界を全ては思い通り
思い通りのはずの世界だった
彼女が作った世界はほんの少しの揺らぎで崩れていった
彼女を愛してくれるはずだった君は
彼女で無い人を好きになった
それがこの世界で最初の小さなそれでも深い傷
歯車はこの時小さな悲鳴をあげていた
彼女は全てを得ようとした愛も友情も
この世界では全て手に入る私は神様だから
そう心に言い聞かせながらまっすぐに歪みへはまっていく

そして彼女は勝ち取った
全てが在るべき形をした彼女の世界を
夢の世界の夢の中で
それでも
彼女の独りぼっちの暗くて広い心を埋めてくれる物は全て手に入る
愛も友情も
それは待ち望んだ全てだった
彼女が最初この世界で手にしていたはずの物だった
でも、結局届かなかった
手に入れた光は瞬間で手の中から飛び去って行く
それも輝きを取り戻すようにして更に強く光り輝きながら

「ずっと夢のままなら良いと思わない?」
「夢でもいいじゃん 一緒に来てよ」


彼女の声は届かない

「夢でも届かないの?」

心から零れた泣き声だった

彼女の夢は崩れていった

取り戻せない
手に入らない
夢の世界まで独りの自分を嘆く彼女にはもう
誰の声も届かない
友情を求めた人の声も愛を求めた人の声も
全て暗闇に吸い込まれて消えていく
堕ちた神様を救うのは
作り物だった君達なんだね
光を閉ざした彼女を引き上げるように包むように
愛は友情は彼女を支えている
神は決意する神としての自分を捨てる事を
自分の世界に帰る事を
愛は
最初から彼女へと向けられていた
それは彼女が定義した彼女ではなく
彼女の無意識が定義した彼女へ向けて最初から注がれていた
捨てたはずの自分は愛して欲しかった自分だった
友情は
夕日の射す部屋の中で泣いてる彼女を優しく包んでいる
「どうか この願いが一生叶いませんように」
悲しい願いを添えて友情は繋がりと共に送り出す
友として

目を覚ませば夢は終わる
そうして彼女はただの人間として
悲しい理不尽な世界に夢の世界の繋がりと共に踏み出していく
二度と出会う事のない
夢の世界の繋がりは証として彼女の隣にあり続ける

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あの夢をなぞって

僕は夢の中で出会った誰も知らない少女と恋をした
「待ってるからね」
少女はまるで花火のようだった

8月の朝夢に見た、今日から10日後の未来に行われる花火大会で僕は君と出会った
ただの夢 生まれてこの方彼女無しの僕が見た彼女と花火大会で、なんて悲しい夢だと思えばよかったのに 僕は彼女を探そうとした夢の中の人を
顔も名前も知らない夢の中の人を探そうだなんて僕はどうかしている
だけど探さなければいけないと思った 友達に笑われながら家族に呆れられながら
君と出会ったあの日から出会うはずの10日後まで毎日君を探し続けた
彼女は待ってると言っていた気がしていたから
・・・
結局当日まで君の事は何一つ分からなかった
有り得ないくらいのこの人混みからたった1人を探すなんて不可能だと普段の僕なら諦めていただろうでも何故か今日の僕は諦めが悪かったどうしようもなく 人混みに抗い進んで行く何処へか分からないただ彼女がいる気がした方向へ この先に君が立っている気がした
空に花が咲く大きな音を立てながら街の喧騒をかき消すようにように音という音を光が包み込んで行くそんな空の花の下に君は立っていたんだ
「やっと、会えた」
お互いがお互いを求め合い僕達の未来は重なった
別々の道を歩いていた僕達はあの日夢の中で重なった、ただ1回 一瞬の運命が僕をここへ君をここへ連れて来てくれた
僕達は2人揃って泣いていた出来る事ならこの涙はずっと流していたかった
君と同じ時間に存在した証のような気がしたから
空は明るく光り輝く音と共に無数の花が咲いては散ってゆく この世界のあらゆる音を光と共に連れ去って
光に願った僕達2人も一緒に連れ去って
連れ出して欲しかった
それがダメなら、せめてどうか終わらないで
そんな僕の願いは連続する無数の音に消されていく、そして音のない世界が広がった
君と僕の未来はまたお互いの道へと戻って行く
僕はきっと忘れない
2人で見上げた様々に輝く空を
空に咲く光に照らされた君の横顔を

大丈夫想いはきっと大丈夫伝わる

こうしてまた出会えた君へ

「好きだよ」

君は花火のように散った

....

from YOASOBI/あの夢をなぞって

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春を告げる白い華

君が居なくなってもう半年くらいかな
今は冬で寒くて寒くて敵わない
なんとなく君の部屋だった場所に足を踏み入れ
以前聞いたことのあった日記の話を思い出して
悪いと思いながらこっそり見ていた保管場所の引き出しから取り出す
最後のページに僕は全てを掴まれた

「春の雪」
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僕は遂に見た
春を告げる白い華を
空はオレンジに染まり日が沈むのを待っているという頃
つぼみがチラホラと見えるだけの桜の木の近くを通りかかった時
まだ散るには当分時間がかかりそうだなぁと思いながら
空を見上げている僕の目に飛び込んで来たのは
白い花弁が空を舞う姿
それはノノックと呼ばれる花で
春近くで特定の条件を満たした1日だけ花を咲かせ次の日には跡形もなく散ってしまうらしい
きっとそれは誰も知らない景色だとそう思った
こうして僕以外が見ることが無いような日記だけに残すのはあまりに綺麗過ぎたからかもしれないし
僕の中の思い出にしておきたかったのかも
それは花と言うより華だった
僕の頬に落ちたその華はとても暖かく優しさを形にしたみたいだった
殺伐とした世の中で美しく咲いて綺麗に散っていく
散っているのに華はどもまでも綺麗で優しくて暖かい
僕はその景色を死ぬまでに見れた事を人生で最大の自慢にしようと思った
僕の中で永遠に


君が最後に記した日記だ
残念ながら日記は君以外の僕が見てしまったけど
君しか知らないこの景色を僕はどうしようもなく見たくなった
君が言う人生の自慢を僕も作れたら良いと思った

空はオレンジに染まり夜の訪れを待っている
君が見た白い華はこんな空を舞っていたのだろうか
そこに手を伸ばせば君が立っている気がした
春を告げる白い華に魅入られていたあの時の君がそこに
居る気がした



・・・・・・

Hollow Veil/nonoc

nonocさんという方のHollow Veilという曲を僕が勝手にストーリーにしました
短時間で作り上げたものですがもし良いねと思ったらスタンプを押して行ってください
僕が一人で悲しく喜びますので笑
という事で
このシリーズ気が向いたら続けます
多分その内曲のリクエスト聞いたりするかもしないかも
ではまた

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プレゼント

知っている知っていた
「私最初から狂ってたんだ」
空虚な笑みを浮かべながらそう言う君を
見た事があった
俺はきっと気づいていたんだ
この子は普通ではないということに
気づいていながら気づいてない振りをしていた
君の為に?いや誰の為でもない俺自身の為に
今日の空は晴れている雲ひとつない
気持ち悪いくらい真っ青な空の下
今さら問うことさえ無駄な質問を彼女に投げかけるそれは多分どこかでまだこのやり取りが夢であるというありもしないオチが待っていると信じたかったのだろう
「いつからなんだ...」
彼女は淡々とそれでも内の中では何かを禍々しいモノを燃やしているような瞳で俺を見据え答えた
「最近からって言ってるじゃない全部初めからこうなる為に進んでたんだよ君が信じていた私は初めから君の中にしか居ない都合の良い幻だったの」
世界は不幸が連なり不幸の生け贄になった者達の血で出来ている
そんな論文を俺はどこかで目にした事を思い出していた
その論文にはこう記載されていた
世界に存在する幸福とは全て現実逃避が生み出す個人にとって最も都合の良い幻である

俺にとってのそれは目の前の彼女だ
俺を地獄から救い出してくれた心の底から好きになった
こんな俺でも誰かのヒーローになりたいと思えるのだとなれるのだと君は教えてくれた
君は俺が理不尽と戦う事が出来た原動力そのものだった
だけど
君という存在は俺の現実逃避が生み出した理不尽に理想という幻の衣を纏わせた死神だった
「これが私から君への最初で最後のプレゼントだよ私を好きになってくれてありがとうそして永遠に
おやすみなさい さよなら」

首に冷たい物が触れた
そして
最愛の人がくれた最初で最後のプレゼントで俺は終わった

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小さな一人のお話。

(何だかんだ言いつつ、続けています。スタンプ押して下さって、ありがとうございます。)

彼の保育園にも、恋する女の子達が存在しました
毎日毎日、誰が格好いい、あの子は優しいと、
保育園児なりに話していました

彼は保育園の女の子達と話す機会もなく、
話そうとも思っていませんでした

そんなある日
「あのこ、かっこいいよねぇ」
一人の女の子が彼の方を見て言いました

他の女の子達は彼の方を見て
「あのこ、いつも ひとりだし、なにを かんがえて いるのか わからないよ」
「でも、たしかに、かっこいいかも」
「プリキュアの おうじさま みたい」
口々にそう言いました

女の子達は、教室の隅にいる不思議な男の子に
声をかけることにしました

「こんにちは なにを して いるの」

彼はいきなり声をかけられて、驚きました
何とか返事を言おうとしますが、何て言えば良いのかが分かりませんでした

絞り出した一言
「こ、こんにちは」

緊張して困って、顔が真っ赤な彼を、
女の子達は可愛いと思ったのか、
満足そうに帰って行きました


実は、彼が真っ赤になった理由は、
もう一つありました

彼の初恋の相手がいたのです

何も喋らず、女の子達の後ろで微笑む、
おっとりとした彼女

友達を作らない彼には、初恋の相手がいました

彼の心の成長の証

初恋の相手については、また今度

小さな一人のお話。

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無様と言われる誇り

僕は僕が嫌いだ
自分が好きな人間などいるのだろうか
もしいるならきっと一生分かり合えそうにない

・・・・・・

自分嫌い君
そんな風に呼ばれる日がくるなんてね
ボヤいていたのが聞こえたよ
失礼な人だという印象以外抱きようが無い出会いだったろうけど嫌そうな顔はしなかった
それは遠慮か配慮かそれとも諦めか
それは君しか知らない

・・・・・・

僕は平等を信じない
だって僕自身がそれを知っているから
誰かにある何かを羨みそして己がそれを持たざる者だと自覚嘆く
もうそんな生活は疲れたから
嘆きも枯れきった僕には誰かの自慢は挨拶にしか聞こえない

・・・・・・

また死んだ顔してる
生き生きしなよって言うと相変わらず無愛想に返答してくる
嫌われたそうだね
それには意外なほど素直に初めて見る嫌そうな反応
君は嫌われたくなくて嫌われ者になったのか
同類じゃないか

・・・・・・

嫌われたくなくて嫌われ者に?
なぜ嫌われたくない振る舞いをする人が嫌われる?
そもそも僕は嫌われたくなかったのか
そうか
僕は僕のことなんて全然知らなかったんだ
そんなに臆病だったことを今知った

・・・・・・

臆病か
臆病者同士仲良くしようじゃないか
臆病者は臆病者の戦い方という物があるのだから
馬鹿正直にあっち側に行ってやる必要はないよ
真っ直ぐでいることに負けた我々はどこまでも曲がりくねればいい
歩きやすい道を選んではいけない理由はないさ
辿り着いた場所なんてどうせすぐ崩れる

・・・・・・


僕(私)達は臆病を誇る

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私が愛している

「大丈夫 あなたがあなたを愛さなくても私が誰よりも愛している」

彼女はそう僕に言い残して去っていく
ダークブルーの瞳には僕はどう見えているのかな
君は僕に呪いをかけた
それから僕は何度も君の呪いで死んだ
分からない事がある
君の呪いで死んだ時僕は必ず寂しそうにしている君を見るんだ
黒のコートにフードを深く被って顔は見えないけど
毎回見える君は確かに泣いていた
「私はあなたを誰よりも誰よりも愛し続ける」
そう出会う度君は言っていた
僕は君に何をしてあげたこともないし君とはここで初めて出会ったはずなのに
そう僕は君に問う
「あなたは私の光になってくれたの」
とフードの中で笑顔を浮かべた
不思議だった今までは恐怖を感じていたのに
その瞬間僕の中から恐怖は消えた
そして君は見えなくなっていた
一体君は誰なんだろうか
僕が自分を許せなくて自分を傷つけたいと思ったそんな時必ず君は僕の傍に現れて静かに抱きしめてくれた
暖かく包まれていた 自己嫌悪は包まれるように僕から薄れて消えてゆく
そして君は言った
「大丈夫 あなたは誰よりも優しい人」
「誰よりも誰かを救って来たのだから」
「次はあなた自身を救ってあげて」
知らないうちに眠っていたようだ
眠りから覚めた僕の手には紫の花を握っていた
君がくれたのだろうか

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優しい毒

誰にも好かれる奴
居るわけない漫画のキャラクター的属性を持つリアルワールド人は実在するか
答えは yesである
僕はたった1人知っている
何をするにも皆んなそいつを推薦する
絶対的信頼
時間さえあれば大勢に囲まれる
絶対的人気
何者をも寄せ付けない
絶対的頭脳
これで性格でも悪けりゃ多少の救いはあるが残念だが性格も超がつくほどの優しい奴
いけ好かないと思うだろうが俺はそいつが嫌いではない
不思議なのだありとあらゆる面で完璧という嫌われそうな要素の中でも最も強そうな要素の持ち主なのに
嫌いになれない
僕は何年もそいつと友達いや親友レベルかもと言えるほどの関係で居続けたなんとも心地いい
そういう毎日だった
だけど今になれば思う なぜ人であったはずのアイツに僕らの知らない顔が無いなどと思っていたのか
表の顔が整っていればいるほど裏は歪んでるものだ
摂理だ 人間の構造だ
そう我々は作り物なのだ 完璧な創作物はいつの時代も生まれないもの
気づくのが早ければ僕はアイツとちゃんとした親友だったかもしれない
歪んだ友情の果てに待つのは破滅だ
それもまた摂理だ 世界の構造だ
そしてその摂理通り 構造通り
僕達は破滅した アイツがこの世から消えるという形で
そして僕は今歪んでいる 酷く歪に
入口はあっても出口はない
僕は今一生の牢獄に後悔と同居してる
僕達2人は望んだ方向へ走ろうとして望まぬ方向を歩んでしまった
きっとそれぞれが目指した道は同じようで違う道だった
だけどたどり着いてしまった道は全く同じ結末を迎える道だったのだ
僕達はお互いにとっての優しい毒だったのだろう

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どんな夢だった?

ため息一つ 一日の終わりにいつもやっている
先輩の癖だ 何かあったんですかっていつも聞くけど
結局哲学うんちくを繰り出されて話を逸らされる
専攻科目のことになれば多分この人に勝てる人は早々いないだろう
そのくらい長いし 何を言ってるのか分からない
ただ話が上手いからか惹き込まれる 意味が分からないのにもう少し聞いてたいと思う
この前それを同級生仲間に話したら恋の始まりだのなんだのと言われて笑われたな
ただ否定も肯定もしなかった 僕は先輩が好きなのかどうか分からない 嫌いでない事は確かだが
僕にとってどういう存在かがなんとも言えない
とにかく不思議な人なんだ
ここに来てから1ヶ月くらい経つけど先輩と会わない日はないというか毎日会ってる
偶然だね なんて4回目くらいで嘘ですよねって言った
狙ってなきゃ全部偶然になるんだよーって持論を聞かされながら2人並んで歩く帰り道
なんでか分からないけど先輩と一緒にいると知り合いと会わないなんでか2人して別の空間にいるみたいな気分だ
本当にこの人には不思議という言葉が似合いすぎて怖い
でも楽しかった
傍から見れば先輩後輩関係は確実に逆に見られるくらい年齢に似合わない振る舞いをする先輩を眺めながら時々巻き込まれたりして時々哲学話を聞かされたり
そうしてると疲れてるのを忘れさせてくれるから
知らないうちに一日の中になくてはならない時間だ
しかし4月から加わった新しい時間割も昔と何ら変わらない時間割になる日は結構すぐやって来た
先輩と出会って2ヶ月目になる日の朝
珍しく先輩と会わない 行きも帰りもどこを歩いてもどこにいても神出鬼没だからねーなんて言いながらひょっこり現れていた人が突然居なくなるなんて怪奇現象だ
久々に会った同級生仲間にそれとなく先輩の話をしたら
聞くヤツ全員首を傾けて目を丸める
僕1人だけ違う時間を生きて来たみたいだ
浦島太郎の気持ちが痛いほど分かった

どんな夢だった?

結構楽しかったよ それじゃ


そう言って先輩はどこかへ消えて行った

不思議な人は最後まで不思議な人だった