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Trans Far-East Travelogue⑯

登り始めてからわずか1時間半で山頂広場に着いた
「あの途中で灯りが所々途切れて橋みたいになってるのが万葉の東歌にも出てくる多摩川、奥の夜景は西新宿…その向こうには俺の地元がある。そして、その更に奥には文京後楽園、桜や彰義隊で有名な上野の山とか下町にある俺の母校がある」と言って2人で故郷の方を観ながら東京で案内しきれなかった場所を解説するが,帰郷してすぐまた故郷に別れを告げて旅立つことを改めて実感し、涙を堪えてるのに、肩が震えてる
「辛い時は泣いたって良かよ。私が付いてる。むしろ,ここまで頑張ってくれてありがとう。地元の近くにいるなら早く地元に帰りたかったよね?それでも,私を選んでくれてありがとう」
その彼女の言葉で堰を切ったように泣き出す
「故郷の山の手台地をもっと見せたかった…1人の男として,東京で,地元でできることは幾らでもあったのに…そう思うとめちゃくちゃ悔しいな…仙台の大敗や博多の2連発の比じゃねえ」と言い切れず言葉に詰まると「貴方は凄いよ。長旅から帰って来たと思ったら,地元の近くで恋人が泊まるからって自分の帰宅を遅らせてまで好きな人に寄り添うなんて,そして自分の地元を離れてでも恋人が地元に帰るなら一緒について行くなんて、私には絶対できん。私はそんなカッコいい貴方が好きだよ」と言って抱きしめてくれるが、山頂で待機してた仲間の1人が茶化して「ノーコンでもカッコいいそこの君,これで涙拭けよ」と言って渡された巨人の黒ユニを見て彼女が「これ,黒ですけど」と返すので思わず「俺の彼女は糸井さんか?糸井さんは現役引退したけど、俺は君の彼氏やめるつもりはないからな?」と言ったら彼女も宮國投手みたいな眩い笑顔を見せてくれたので自然と涙が引っ込んだ
空が白くなり、押上のエセ武蔵(東京スカイツリーは隅田川よりも東、つまり旧下総国にあるのに高さは634mで語呂合わせでは武蔵になる)も見えた
と言うことは、もう間もなく日の出だ

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Trans Far-East Travelogue⑮

京王ライナーに揺られることおよそ25分、夕陽が反射する多摩川を渡る
「分倍河原に関戸の古戦場…この多摩川を挟んだ両岸だったよな…『夏草や兵どもが夢の跡』って俳句が似合うぜ」と呟くと「川を挟むのは合戦の常套だったけど、ここが鎌倉打倒の激戦地…今となっては見る影もないね」と言って頷いている
山梨の丹波山から流れて羽田に注ぐ大河を渡り聖蹟桜ヶ丘の駅に着く
そしてすぐに本日の目的地、高幡不動に着く
清和天皇勅願の元建立された由緒正しい寺の境内に入った途端俺のスマホが鳴り響く
「京八じゃなくて与瀬の駅で明日の朝待ち合わせにしよう。上に1人待機させる」「言わんとすることは分かった。幸い、俺達2人とも服装は動き易い上に運動靴履いてるし上着もあるから彼女に相談してOK出たらそれで大丈夫だ」と告げ,ゴーサインが出た旨を伝えて電話を切る
そして、彼女が好きな土方歳三の故郷を2人で3時間程歩いて巡った後再び京王線の駅に戻り,駅そばの駆けつけ一杯で軽い夕食を済ませて高尾山に向かう
清滝の駅の右にある登山道に入ってすぐ、「久しぶりに登るな…緊張するぜ」と呟くと「高尾山って標高低いんでしょ?そんなに緊張するの?」と返されるが「小6の時に見た初日の出以来の夜登りなんだ。頂上の朝日は言葉じゃ言い表せないくらい綺麗なんだよ。まあこんな綺麗な彼女が、筑紫の女神が側にいるから足踏み外さないよう気ぃつけねえとな」と言って笑うと「私、セイレーンじゃないよ」と言って彼女も笑い出す
皇居のある千代田区、我が故郷の新宿区に次ぐ東京第3の大都会,八王子市の街明かりが背中を照らしてくれる中、夜の1号路をひたすら登り、山頂を目指して歩き出す

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Trans Far-East Travelogue⑭

俺は地元の成り立ちを復習し、彼女は東京について新たな発見を得てそれぞれ満足した面持ちで俺の仲間達が待つ駐車場へ戻る
荷物の積み込みを行なっている新城の仲間達に「悪いな。待たせたか?」と訊くと「想定の範囲内さ。ただ、一つ問題が発生した」とリーダーが一言返す
彼の補佐役で中学時代の後輩だった奴が「先輩、怒らないで聴いてください」と慌てた顔で言うので「どうした?燃費の悪いキャンピングカーを2台も買ったからガス欠で動けないのか?」と訊くと「燃料代は充分にあります。それよりも松山の副長の彼女さんは先輩の元カノで、未だに寄りを戻そうと狙ってます」と真面目な顔で言われ、頭を抱える
そこで高雄の兄貴に「兄さん、それは本当か?」と確認を取ると「すまない。俺の確認不足だ」と土下座されるので「頭上げてくれよ。話が進まねえだろ確か、俺みたいに恋人いる人は何組かのカップルで纏めて一台に乗せて独り身はもう一台だったよな?」と訊くと「その通りさ。なら、松山組は別働隊にするか?」と訊かれるが「別働隊にしても、松山の奴等は免許ないだろ?新城のアイツも彼女持ちでこちらに来るはずだから誰が運転する?」と訊き返すしかない
「新城と松山は皆別働隊、岡山は君達と同乗でどうだ?」と提案され俺も彼女も二つ返事で承諾する
「多摩行って甲信越回って、そのまま西に突っ切るか?多分それが彼女さんの要望にも沿うと思うが」と言われ「それで頼む。伊豆は最悪新婚旅行で行けば良いから」と笑って返し、枕を始めとした旅の荷物をキャンピングカーの後ろの棚に積み込み、まだ新宿通りという名前の甲州街道を西に突き進む
「ここが四谷の大木戸で、少し先の建物が密集してるのが元々の内藤宿さ」と言ってノリノリで解説すると暫くして信号のない場所で車がいきなり停まる
「降りて京王乗って来いよ。お前、鉄道好きだし、幼少期は故郷の新宿と同じくらい多摩で過ごしたから京王線乗ってたんだろ?それに彼女さんが大好きな近藤勇や土方歳三の故郷も沿線だから水入らずの時間過ごして来い」と言ってもらったので「度が過ぎたら俺も妬くけどな。この時間だと3番線からの特急は厳しくても1番からのライナーだな。京八で会おう」と返して彼女と2人で車を降りて地下ホームへ行く
日は代々木のタワーの方から都庁に向けて傾きかけている

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Trans Far-East Travelogue⑬

日が昇り、故郷と暫しの別れを告げる時が来た
巨人ファンだけで構成される高雄岡山組一の兄貴分が手を肩に添えて直々に声をかけてくれる
「いよいよ出発だな。日本シリーズの忌々しい記憶が残ってるかもしれないのに、福岡や大阪に行かせてしまって、欧州から帰って来て早々長旅させてしまってすまない。代わりに、日本国内では温泉で体を休められるように調整してあるよ」とのことだ
「兄さん、俺は光輝くアジアの明日を照らす東京都庁がある新宿区の出身だぜ?地方出身の彼女を送り届けずに故郷に引っ込んだままなんてのは、新宿生まれのプライドが許さねえよ」と笑いながら返すと彼女が「貴方って新宿出身なの?牛込って聞いてたんだけど」とツッコむので、俺が「兄さん、今回の移動手段であの車買ったってことは、鹿児島到着の帳尻さえ合わせられたら、出発の時間変えても良いし、行程端折っても良いんだろ?悪りいけど、出発は歴博行ってからで良いか?」と確認を取ると「お前も大変だな。俺達は2台買ったから、最悪一台は北陸回り、もう一台は東海回りで西を目指しても良い。彼女には事情話して出発遅れると伝えるから、3時間で行って戻って来いよ。後ろにEF65積む余裕作っとくから」と言ってくれたので「EF65ってw青いはやぶさだからって、俺のチャリのことブルトレの電気機関車呼ばわりすんなよwサビ止めも積まねえと…ハンドルサビてっから」と言って笑い返し、そのまま彼女の手を引いて三栄町に向けて歩き出す
タイムリミットは残り3時間、すぐに行けるだろう

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Trans Far-East Travelogue⑪

3人仲良く談笑しながら歩くが、彼女が真剣な表情で「あんなに可愛い元カノと婚約の話まで出てたんでしょ?それなのに、どうして私を選んでくれたの?」と訊き高雄の仲間も「俺達も気になってるんだ。松山組の所にハリコフの娘、同じ頃高雄にロシアの3人来て、俺達も理由が分からなくて『ヨーロッパで鉄道旅してる本人に会って訊いてくれ。今から航空券取って1番早いのに乗ればパリにいる時に追いつく』って返しちまったんだよ」と言う
「それで4人ともフランスに…分かった、話すよ。俺のバックグラウンドが影響してるんだ。それで、君達は俺が幼少期から何に憧れてるか知ってるかな?それが答えみたいなもんさ」と返すと真っ先に「君は東京で生まれ育ったけど、お母さんのルーツは東京はおろか日本にないから三代揃って東京生まれの東京育ちという江戸っ子の定義から外れてることがコンプレックスで本当の江戸っ子に憧れてたんだろ?それは君が彼女さんいない時の会話で分かるよ。多摩弁を早口にしたような江戸っ子の訛りか丸出しじゃねえか」と求めてた答えを全て仲間が言ってくれたので「元カノ達と別れたのは他の人からすれば些細なことかもしんないけど、俺からすればめちゃくちゃイヤなこと言われたからなんだ」と言うと仲間が「江戸っ子の言葉は早口だから『ゆっくり話して』とか『君の日本語聞き取れないから英語に変えて』って言われて傷付いたんだろ?」と訊き俺が黙って頷くと彼女は「そんなことで?」と驚くがその後に仲間の補足を聴いて納得してくれた
「バックグラウンドも含めて『自分を理解して受け入れ、かつ大切にしてくれる人と付き合いたい』、か…君らしいな」という仲間の一言に頷き、「それは俺がずっと求めてきた理想のパートナー像だったんだ。言葉は悪いけどその前提として、ある程度の知識が身に付いた人であって欲しかったんだけど、元カノ達は肝心の知識が俺の求めるレベルに達していないのに愛情だけ重くて気持ち悪かった。でも、君は俺の理想通りのパートナーさ。だから、君を選んだと言えば納得してくれるかな?」と彼女に問いかけると「私を大切にしてくれるのは嬉しいんだけど、なんで私の身近な西日本の話題出さないの?」と訊き返されたので「プロ野球で巨人ファンの心を抉る事件の数々が西日本絡みだから」と答えるとさっきまでの重い話題から笑い話となり、花の15区の夜は更に更けて行く

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Trans Far-East Travelogue⑩

試合はかなりの乱打戦になり、結局負けた
「巨人負けちゃったけど、プロ野球ってこんなに面白かったんだね。こんな面白いと誰だって熱中するし、この楽しみが分からない女の子は振られるよね」と彼女が呟くので「まぁ俺は君がプロ野球の楽しみ知らないからって振ることはないけどね。俺達在京組は複数球団で皆が仲間でライバルだけど、西日本の球団、特に名古屋のドラゴンズ、大阪のタイガース、広島のカープは地元の人から大切にされててるからファンは熱くなるよなぁ」と返すと「私、それで振られたんだね。あの人、カープファンだから…でも、そのことはおしまい。貴方と一緒ならどんなことでも楽しめるかも」と言ってスッキリした表情で笑顔になった
「やっと笑ってくれたな。バッセンでは君の笑顔見らんなかったから心配したんだぜ?」と言って笑うと「昔貴方を振ってまで一緒になろうとした位好きだった男が野球部のピッチャーだったから貴方のストラックアウト見てると当時を思い出して怖かったんだもん。でも、貴方のお陰で新しい発見もできたし、打球が当たりそうな時庇ってくれたでしょ?カッコよかったなぁ…こんな私を好きになってくれてありがとう」と言って俺に抱きついて来る
「自己満足で作ったデートでも楽しんでくれて良かったよ。ただ、明日は君が行きたがってた三多摩寄れるか相談してみるよ」と言って早速電話で台北松山組に相談するが、彼らの応援する西武は今日勝ったので調子に乗ってもう呑んでいるのか電話は繋がっても呂律が回ってない
高雄組と合流して相談すると「三多摩寄るのは良いけど、寝袋とか用意しろよ?」と衝撃の一言が返って来る
「もしかして、東の川向こうに行けば借りられる所が多いアレ手配したのか?」と訊くと「御名答!事後報告だけど、俺達が台湾の原住民の仲間とのコネ利用して買った、飛騨と伊豆のアレ使うよ。それで甲信越回って北上して、関越から圏央で太平洋側出て伊豆、駿州回ろうかなと」と返して来る
「なら、山梨の彼処で良くないか?わざわざ石和まで降りて泊まるのか?」と訊くと「君があの温泉施設に愛着強いと思って最初に提案したんだけど、そこが好きならそこでも良いよ。今回の旅の主役は君達であって、俺達はそのサポート役だからね。那覇から先の主導権は俺達が握らせて貰うけど」と言うので「まぁ台湾は君に任せるよな」と返し、後楽園は笑い声に包まれる

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Trans Far-East Travelogue⑨

朝になり、タイムリミット30分前に家を出る
「スタンド〜超えて打球は〜遥かな夢と続く〜ゆけ〜山田〜新たな時代を〜♪選ばれし猛者集う地で〜強く咲く大輪〜肥後より携えし力〜♪今こそ解き放て〜♪闘志燃やして攻めろよ〜♪投打に輝き放て〜♪勝利をこの手で掴み取れ〜♪」対戦相手のスワローズの有名どころの応援歌を歌いながら自転車で四谷を目指して爆走する
彼女と合流後、最初のバッティングセンター(新宿歌舞伎町)で打撃練習とストラックアウトをしようとするが、彼女は使い方が分からないそうで、俺がお手本として打ち、彼女にはネット裏でバッティングを見てもらう
「筑紫の女神が微笑む〜♪彼女を惚れさす一振り〜♪確かに当てろ〜♪ぶちかませ〜」と彼女にも聞こえる大きさでスワローズでかつて活躍した選手の応援歌を替え歌して口ずさみながら打つと、いきなりヒット級の当たりが連発する
彼女が「お前の出番ゆくぞ〜♪敵を打ち砕け〜♪巨人に勝利の旋風巻き起こせよ-♪」と汎用テーマを歌っている
それを聞いてやる気になり、俺はチャンテ「勝ち取れ」を口ずさみ、ど真ん中に甘く入った最後の一球を仕留めてアーチを描く
「凄いね。最後の最後でホームランなんて。次は私の番ね」そう言って彼女が笑顔で話しかけてくる「小学生の頃遊びでやった野球以来、バッセンでは初めてだよ。さあ、行ってこい。俺はストラックアウトして来るから」と返して別のコーナーへ行く
「今はお付き合いできているけど、将来的に胸を張って堂々とあの娘の隣に立てるカッコいい旦那になるには今みたいなノーコンじゃいられないな」そう呟き、自慢の直球を投げ込みまくる
そのようにして2箇所目(神宮)のバッセンも巡り、3箇所目(東京ドームシティ内)に行く前に後楽園名物大観覧車に乗り込む
観覧車を降りて10分後、俺達の席の最寄りゲートに着いた
さあ、いよいよプレイボールだ

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Trans Far-East Travelogue⑧

彼女はホテルの前で、俺は実家の前でそれぞれ下車してから暫くすると、彼女から電話がかかって来るまずは彼女から一言「明日、空いてる?空いてるなら貴方に明日の予定任せようと思うんだけど」 「空いてるよ。バッセンでもどう?」「バッセンって?」「結構楽しく体動かせる施設さ。そっちから1番近いのは神宮の所だね」一連のやり取りでそう言うと想定外の質問が飛んでくる
「神宮に何かあるの?」「いっぱいあるじゃん。映画『君の名は。』で登場した施設の一つは神宮にあるよ。君と付き合う前に君のことほったらかしにして野球の試合で熱くなった時あったでしょ?あの時に観てた試合会場だったのもその中の球場だし、オリパラ東京大会で有名になった国立競技場もその前のラグビーW杯で有名な秩父宮ラグビー場もある。東京のスポーツの聖地の一つとも言える場所なんだ」と返すと「じゃあ、その後球場で試合観ない?東京シリーズみたいなんだけど」「まず、球場確認しないとね。明日は文京区だってさ」「文京区?何があるの?」「文京区は小石川!小石川といえば東京ドーム!人生の基本でしょ?」「セリフパクったよね?と言うか、東京ドーム?遊園地もあるんでしょ?行きたい!」そう言って彼女が喜んでるのを聞いて「歌舞伎町、神宮、スポドリでハシゴして観覧車乗って試合見れば良いな。よし、プランは大体固まったけど、チケットどうする?」「ネットで取れそうよ。ライトスタンドやね。え?もう明日のプラン決まったの?」「決まったよ。バッセンでガッツリ体動かせるお楽しみコースさ。明日迎えに行くよ」そう告げて電話を切ると、早速錆止めスプレーを用意して自転車を見に行く
「錆止めよし、ブレーキ良し。空気圧も良いな。あの娘のホテルの場所も分かってるし、迎えに行く30分前に出れば良いかな」待ち遠しくて思わず独り言が飛び出る
自転車整備しながら懐かしい曲をかけていると地元近くの高層ビルやタワーを背に西日が輝いている
「明日の準備はこれでよし。応援バットとタオル持っていけば良いけど、またあのフリップ見せつけられるんだろうなぁ…」そう言ってベランダに出ると数多の飛行機が列を成して東京湾に向け飛んでいるのが見える
「副都心近郊のタマワンやビル群のネオンと飛行機の光、やっぱり綺麗だな」そう言って恋が実る前のことを思い出し、物思いに耽って紅茶を淹れる
夜風と紅茶の相性は最高だ

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Trans Far-East Travelogue⑦

6人乗りと4人乗りの車に分乗する
俺と彼女は高雄組の2人と花蓮組のツートップと同じ6人乗りの方に乗り込む
「横浜って意外と良い街だったね」という彼女の一言に全員反応し、「そりゃそうだろ。なんてったって、横浜は俺や幕末の剣豪の故郷、武蔵の一部だからな。廃藩置県の時に県が変わったけど、元々は同じ武蔵国だったんだ」と俺が返すと「でも、トッポは除外しろよ?」と新城のリーダーが指摘するので彼女が「トッポってどこですか?」と訊き返す
新城(花蓮)組の副長が「大船と横浜の間の三駅、分かるだろ?」と問いかけるも九州育ちの彼女が答えられるはずもなく、流石にマズイと思って「その3駅は戸塚、東戸塚、保土ヶ谷だな。まぁ、東京出身の俺達からすれば常識だが、福岡出身の彼女には難問だ」と言ってフォローする
「福岡?内川と日本一奪った泥棒の街かよ」と先輩が吐き捨て、彼女は首を傾げ、俺に「何のことか分かる?」と囁く
俺は彼が大のベイスターズファンであることを覚えており、「確かに、君の好きな球団が彼女の故郷がホームの球団との間に奪われたものが多いのは紛れもない事実だ。しかし、こちらはあの球団に日本一の機会を2度奪われ、黒4どころか黒8連続で喰らって恥ずかしい思いしたし、そちらからは使い物にならない選手が多数送られてきたり、まともに活躍してくれない選手にはそちらで活躍されるし、挙げ句の果てには流行病に選手が大量感染して試合どころではない時にそちらをはじめとした複数球団に追い越されて最終的に三位争いまで持ち堪えたと思ったらそちらの四番にソロかまされてCS出られずにシーズン終了という屈辱を味わった。だから、あの球団だけを責めるのはやめようぜ」と言って諭すと先輩は黙り込み、岡山組の1人が「俺達8人をはじめとした台湾にいる仲間達皆東京出身だけど、応援してる球団がそれぞれ違って仲間内で争ったから同じ球団が好きな人達で纏まって別々の街で暮らすことになったんだよなぁ」と回想してる
「まぁ俺は君がどこの球団のファンだろうと関係なく君を大切にするけどね。君が『女の先輩』って呼んで尊敬してたあの人も夫婦で応援してるチーム違ったし」と言って彼女の頬に口付けすると、彼女は真っ赤になりながら窓を指差し「高層ビル見えたね」と言うので外を見ると故郷の西の高層ビル群が見えた
もう、故郷は近い