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1

タイムジャック3

0:00
そう画面に表示される瞬間
『始め!』
の掛け声よりも早く一斉に術の撃ち合いが始まる。
と言ってもそれがわかっていれば
かわすのは容易である。
何せ、ここに集まっているのは
<時>の能力者達。
術が直接的な攻撃では無い。
時を止める。
巻き戻す訳にはまだいかないので皆それを選ぶ。
あとはタイミングと術痕さえ見分けられれば十分に対処は可能だ(多分)
さぁあと1秒…
0:01を表示したモニターは
0:00に変化した。
放送のカフが入った音がする。
見た未来通りなら…
『始め』の合図よりも前に
術が起こる。
確か…
僕の右斜め40°前…それから…
景色が止まった。
その余波が起こる。
すかさずその波動の隙間に飛び込む。
横で同じ動きをする智也の姿。
「さすが、まずは第1関門突破かな」
「あぁ、お前もさすがだ」
術は回避できたようだ。
しかし気は抜けない。同じことができるやつはそれなりにいるはずだ。そいつが直接狙ってくる可能性もある。警戒心を解くな…
しかし予想に反してその関門クリアは多くない。
「あれ?おっかしいなぁ、確実に全員止められるように術のタイミングずらしたのに、なんで動いてるの?」
あいつが術の主か…
「まぁいいや、50人には達してなさそうだし、1人ずつ倒せば」
こいつ…狂ってる…
これが…【サバイバル】

3

タイムジャック2

「協力?」
“そうか、別に戦わない選択肢がないと言うだけで協力しちゃいけない訳じゃない”
「そう、明確な攻撃手段がないだろ?お互いさ」
「ま、まぁな」
俺は少し拳を作った。
「もちろん、それは超能力という意味だ、その拳はこの話に意味がない」
やはりバレている。こいつも本当に未来が…
「確かに協力した方が良さそうだ」
拳を解き、その手を彼に向ける。
「同じ能力同士だと話が早くて助かるよ」
彼もその手を掴んだ。
「お互いまだ名乗ってなかったな、俺は常磐守、よろしくな」
「僕は奥野智也、君とは仲良くなれそうだ」
『さぁ超能力者の原石達よ、準備はいいか?』
会場を先程の静寂に包む声。
『あと10分でスタートだ。存分に生き残りたまえ!』
部屋の壁面にモニターが現れ、タイマーが表示される。
「いよいよ始まるね」
「あぁ、やるしかねーな」
0:10
この辺りから色んな人間の思惑が頭の中に飛び込んでくる。
0:09
「僕らみたいな考えのやつもいるだろうね」
0:08
「どうかな…基本人間なんて自分勝手だからな」
0:07
時間を止める。または時間を早回しする。
0:06
色んな考えのやつがいる。
0:05
それを認知できるなら…
0:04
せっかく智也もいる
0:03
攻撃しなくたって
0:02
やりようはある
0:01
「来る…」
0:00
画面がその数字を表示した瞬間、
景色が全て停止した。
「さすが、まずは第1関門突破かな」

1

音が繋ぐ

「おはよう」
振り返ると君がいる。
おはよ、と返しつつスマホの画面を君に向ける。
「俺の好きなバンドじゃん!知ってるの?」
当たり前でしょ、すすめてきたのは君なんだから。
知ってるよ、と何もなかったように話すけど
つまりは、あの日の会話は忘れられている訳で。
少しだけ、ほんの少しだけ、寂しくなる。
「あぁ!ツアー情報出たんだよね!!!」
分かりやすく高揚する君を愛しく思う。
愛しい、なんて言うと好きな人みたいだけど
いやいや、彼のことは好きだけど、
なんか、そういうのじゃないんだよなあ。
「え、え、いつがいい?」
唐突な君の言葉にえっ、と言葉に詰まる。
一緒に行くの?と可愛げのない返しをする。
「え、行こうよ!」
君のそのありすぎる行動力が苦手という人もいると思うし、正直始めは僕もドン引きだったんだけど。
その行動力に、あの時の僕は救われたから。
溢れるワクワクを抑えるように
チケット、当たるといいけど
って口を尖らせてみた。
「神社通うわ!毎日!!!」
わけのわからない返しをしてきた君と
大好きなバンドのライブへ行って
それがきっかけで音楽にのめり込んで
僕ら2人がギターを持って、ステージに立つのは
もう少し先のお話。

1

理外の理に触れる者:魑魅魍魎の総大将 その③

人型から剥ぎ取った霊体組織を齧りながら、月は人型から示された道を進んでいた。
「うん……食感は良い……けど味は薄すぎるし、何より量が足りない……」
自分の目方の半分程度はある霊体をみるみるうちに腹に収め、最後の一かけらを飲み込む頃、漸く目的地に到着した。
「おー……おっきい家」
固く閉ざされた門を蹴り、施錠を確認してからその上を軽々と跳び越え、前庭に蔓延る雑草を枯れ朽ちさせながら進み、ほぼ何の障害も無く母屋に到着した。
「ノックしてもしもーし。ヤバいのがいるってんでご相伴に与りにきましたー」
引き戸の入り口もまた当然のように施錠されており、月はそれを蹴破って屋内に侵入した。
屋内には幼い少女のすすり泣く声が響き渡っており、月はその音源を探して屋内をしばらく歩き回る。
「ん、ここか。トツゲキー」
やがて音源たる一室を発見した月が、現在彼女が居る廊下と室内を隔てる襖戸を蹴破ると、30畳ほどの広間の中央付近で幼子らしき人影が入り口に背を向けて蹲っていた。先ほどから聞こえてきている泣き声は、その人影から発されているようである。
「……擬餌よ、一つ教えておくと」
月は一足に人影の背後まで跳び、それが振り向く前に頭部らしき部位を捕え、床面に叩きつけ取り押さえた。
「今どき、廃墟で泣き声が聞こえて心配して近付くような奴などいないぞ」

1

親友3

いつも何かを拒むような顔してる君が
「遊びに行こうよ」って言ってきた。
学校は?なんてつまらない返しをしてしまったけど
別にいいじゃんって何にもなかったみたいに
君は学校とは真逆の方向へ歩いていく。
小走りで追いかけて、どこに行くの?って聞いた。
「どこがいい?」
少し考えて、どこでもいいよと笑う。
「じゃあ映画にしよう」
みんなが授業を受けてる時間に
僕らはアクション映画を見た。
ホラー映画を見た。
恋愛映画を見た。
映画日和だねって2人で笑った。
きっと君が、今日映画に誘ったのは
学校をすっぽかして連れ出してくれたのは
僕の何かに気づいていたからで。
そういうやつなんだよなあって
胸がギュッとして少しだけ、泣きそうになる。
夕日が沈み始めて、学校が終わる時間帯。
今日はありがとう、なんて呟いてみたけど
なんのこと?って笑われた。
きっと最近の、僕の、口癖の真似だと思う。
学校サボっちゃったね、なんて僕はまだ優等生。
「学校なんて、別にいいよ」
思い出に、なった?って君が笑いかけてくれるから
思い出に、なったって笑い返してみる。
明日も僕らは歩道橋の真ん中で待ち合わせをして
明日はきっと学校へ行く。
「また、遊ぼうね」
そんな日々が、なぜか泣きたくなるほどに
嬉しくて、大好きなのは僕だけかなあ