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廃都鉄道 right 1

ーーーガタン。

心地良い振動に目覚めると、まだ見慣れない街並みと、数名の乗客が目に入った。
どうやら、電車に乗っているうちに、寝落ちてしまったらしい。

『次は〜、廃都大鉄塔通り入口〜、廃都大鉄塔通り入口〜、お出口は左側です。』

車内アナウンスが響き、乗客の一人がいそいそと荷物をまとめ始めた。
自分も鞄を開けて、財布の中身をそっと覗いた。

(やっぱり駄目か〜…)

今の自分の全財産では、どう頑張っても次の次、廃都大鉄塔前駅で降りるしかなかった。
本当は武蔵野門前まで行きたかったのだが、無いものはどうしようもない。

列車はまもなく、廃都大鉄塔通り入口に停車した。
一人の乗客と入れ違いに、いかにもチンピラです、といった感じの若者が乗ってきた。
若者は少し車内を見渡すと、突然、向の座席の男に掴み掛かった。

「おい!お前、この前は散々やってくれたなぁ!」
「何だよアンタ!もう契約は破棄されただろ!」

どうやら男は傭兵で、この若者と何かあったらしかった。
そして、あれよあれよと言う間に、殴る蹴るの乱闘騒ぎになってしまった。
慌てて隣の車両に移ろうと、身を屈めて、忍足で車両を繋ぐ扉へと急いだが、遅かった。
ガキン、という嫌な音に振り返ると、もう、自分の鼻先までナイフの切先が迫っていた。

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円環はみだし魔術師録 杖 解説編3

昨日の続きです。
読まずとも本編に影響は御座いませんので御安心ください。

6、杖の作り
大抵の杖は「芯」となるクリスタル、大部分を占める木、留め具や装飾としての金属類で構成されています。
主に木で杖を作り、その先に金具でクリスタルを取り付ける、というデザインが定番です。
定番のデザインはあるものの、使う魔術や本人の特性、職種によってデザインは異なり、多種多様なデザインが存在します。
例えば、対人戦闘の多い騎士団所属の魔術師は、「芯」であるクリスタルの損傷を防ぐため、杖を太めに作り、中を空洞にしてクリスタルを入れる、というデザインを好む人が多い様です。
他には、杖の先に吊り下げる型、杖にはめ込む型などがあります。
杖は基本的にオーダーメイドで作られるため、他者の杖を使うのは至難の業です。
芯であるクリスタルの位置や個体差によって、魔力の流れる方向や流れやすさが異なるためです。

7、杖のシステム
杖のシステムは、持っている部分から魔力を流し、クリスタルを経由させて先端に集める、というのが基本的なシステムです。
杖を使うことのメリットとしては、魔術の照準を合わせやすい、魔力の純度を上げる、などがあります。
また、魔術陣の組み込まれた杖であれば、その魔術の詠唱を省略できます。

8、特殊な杖について
この世界には幾つか特殊な杖が存在しているため、御紹介します。
まずは先述の詠唱省略系の杖です。
こちらは主に召喚魔術の魔術陣が組み込まれている場合が多いです。
理由としては、召喚魔術は時間がかかり、詠唱が長くなりがちで、かつ長時間一定の魔力量を保つ必要があるため、詠唱省略が大きなメリットとなるためです。また、それに付け加え、召喚魔術以外の魔術は基本的に訓練によって無詠唱展開や省略詠唱展開が修得できることも大きな要因です。
次は剣で作られた杖です。
基本的に剣と魔術を同時に使う場合、銀などで作られた魔力伝導率の高い剣を杖代わりにするか、普通の杖を使用した魔術で剣を操るか、の二択となります。
それは、杖のシステムを組み込んだ剣は剣として機能せず、剣の機能を組み込んだ杖は魔力が流れづらかったためです。
しかし、この世界に一振りだけ、どちらの機能も完璧に備えたものが存在します。
その名は「エスト・アンバ」。

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円環はみだし魔術師録 杖 解説編2

先程の続きです。
なお、こちらも先程同様、読まずとも本編をお楽しみ頂けます。

補足:先程、「魔術師イユジュニスタ・ウィディスコの愛用した杖は円盤型であったと言う説がある」という記述の後に「杖の普及は二百年程前」と書かれていますが、これは「杖の『一般への』普及の歴史」であり、杖という呼称ではなく、システムや材料も違うものの、杖に準ずる補助器具自体はそれ以前にも存在していました。分かり辛かったと思います。申し訳ありません。

4、杖の材料1
主に魔力伝導率の高い物を使って作られており、大部分には木が使用される事が多い。
木の魔力伝導率はクリスタルに劣るが、クリスタルで作ると重くて脆くなってしまい、何よりとても高価になってしまうため、木が選ばれている。
また、訓練用であれば、魔力伝導率が低い金属が選ばれる事が多い。
尚、金属製の杖は勿論重いので魔術訓練と同時に筋トレも可能である。
そして多く使用されている木、クリスタル、金属の伝導率は左から高い順に
クリスタル>木>金属 である。但し、銀は木と同程度、物によっては木以上の伝導率を記録する場合がある。
金属にも魔力伝導率の高低があり、上から高い順に、
銀(白銀・黒銀を含む)

青銅

その他の金属          となっている。
更に、魔力を含んだ魔力化金属も存在するが、非常に珍しく、また、魔力の質によっては反発が強く、杖には使えない可能性があるため未知数となっている。
杖に金色を使う魔術師は多いものの、大抵は銀を変色させて金色に見せているだけである。

5、杖の材料2
杖の「芯」となるクリスタルは、人工的に精製された物と、自然にできた天然石がある。
伝導率は全体的に天然石の方が高いものの、特定の魔術においては人工の方が優れている場合がある。
人工のものは、純度が高いもの程伝導率が高いため、敢えて低純度のクリスタルを使用して商品を売り、後日メンテナンスに来た客からメンテナンス代をぼったくる業者が居るので注意が必要。
人工クリスタルは伝導率こそ天然石に劣るが、特定の魔術に特化させることができ、加工も楽で、何より安価なため、最近は純度の高い人工クリスタルを選ぶ魔術師も少なくない。