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非現実ーおとぎ話ってそういうものー ⑤

そんな2人のことを、ローズとリリーはもちろんよく思っていませんでした。とくにリズに対して、とても怒っていました。2人はいろんな方法でヘンリーとリズを邪魔しようとしましたし、リズにもたくさんの嫌がらせをしました。リズはとても優しいですから、なにかの間違いだと思ってとくに気にせず暮らしていました 。でもヘンリーは2人のいやがらせに気づいていました。そして、そのことをヘンリーが知らないと思ってローズとリリーが近づいてきていることにも。
王さまとお妃さまももちろん気づいていました。2人はリズとヘンリーがせっかく結ばれそうなのに邪魔をさせるわけにはいかないと、ローズとリリーを遠い田舎の別荘にしばらく泊まらせることにしました。素敵な男性方とのパーティーが毎晩あると聞かされた2人は、喜び勇んで出かけていきました。
さあ、これでヘンリーとリズの邪魔をする者はいなくなりました。2人はこれから、相手の良いところや悪いところを知り、長い年月をかけて受け入れあっていくでしょう。そしていつの日か本当に夫婦になるかもしれません。もしならなくとも、2人ならお互いをいいパートナーとして、生涯付き合っていけるでしょう。
誰もが結婚するだろうと思っていたカップルが破局するように、一生の友だちだと思っていたひとといつしか疎遠になってしまうように、先のことなんて誰にもわかりません。
けれど、願わくばすべてのひとが、そのひとだけの幸せで満たされていますように。

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〜二人の秘密〜長文なので時間がある時に読んで下さると嬉しいです。

最近、先生が校長になるという噂が流れている。
手を伸ばしてもスルリと抜けていく先生に、少し寂しく思っていた。

廊下の角を曲がろうとすると声が聞こえた。
現校長の声だったので、隠れて会話を聞く。
先生と話をしていた。
“先生、校長になる気はありませんか?”
『今、答えを出さなければなりませんか?』
先生は質問を質問で返す。
“いやいや〜。今でなくていいんです。考えておいて下さい。”
『わかりました。考えておきます。』
会話が終わりそうだったので、私は静かに、でも急いで、踵(きびす)を返した。

私はお気に入りの窓に腰掛け、空を眺めていた。
『またここにいたのか?』
先生の声がするので振り返る。
「あ〜、先生。なんか久しぶり?」
『昨日会ったばかりだ。』
「そうだった、そうだった。」
『何かあったか?』
「別に何もないよ?」
『またここに来てるし、何もないと言ったときは大体何かある。』
「じゃあ、本当に何もないんだけど、1つ聞いていい?」
『あぁ。もちろん。何だ?』
「先生は校長になるの?」  『え?』
「先生、校長になるの?」  『何で?』
「噂がウジャウジャしてる。」
『私が校長になると君に何か不都合があるのか?』
「別にないよ?」
『じゃあ何でそんな事を聞くんだ?』
「先生が昇格すれば、おめでたいよ、そりゃあ。でも、今みたいに一緒にいれない。先生がどんどん遠くに行っちゃう気がする。ただそれだけ。」
『そうか。ただ、私は校長になるつもりは無い。』
「本当?」
『あぁ。本当だ。君もそう言ってくれているし、踏ん切りがついたよ。』
「何でならないの?校長。」
『私には似合わぬ職だろう?笑 それに、今のままで私は十分満足だからな。』
「ありがとう。」
『何でお礼を言うんだ?』
「今のままで良いって言ってくれたから?」
『何なんだ?それ(笑)』
私達は少しの間笑い合った。

先生が、これ以上スルリと抜けてしまわないように私はそっと“レプラコーン”にお願いをした。

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〜二人の秘密〜長文なので暇なときに読んでくださると嬉しいです。

「げっ。風邪引いた……。今日の授業、休まなきゃな。」
私は寮の部屋から担任に電話をかけた。
「1時間目、先生の授業なのにな……。」
          ︙
1時間目。
『おいっ。あいつ、どうした?休みか?』
“えっ?あ〜、はい。風邪引いたらしいです。”
ある生徒がそう答える。
『そうか……。欠席はひとりか? 授業を始める。』
          ︙
          ︙
放課後。
「暇だなぁ〜。ラジオ体操でもしようかな〜。」
そう考えているときだった。
コンコン。
ノック音が2回聞こえた。
「はぁぁぁ〜い!!」
返事をすると扉が開いた。
『何だ。元気じゃないか。心配して損したぞ。』
「えぇ〜。心配してくれたんだね、先生。」
手にはホットミルクの入ったカップが2つとチョコレートの乗ったお盆を持っている。

『見舞い持ってきた。』
そう言いながら、持っていたお盆を数センチ上にあげる。
先生からの“心配”が少し嬉しかった。
「ありがと、先生。暇じゃなくなったよ!(笑)」
先生はチョコレートをホットミルクの中に入れ、
魔法を使ってスプーンでかき混ぜる。
「先生の魔法は便利だね。」
『便利だけじゃないさ。』
そう言いながら、ホットチョコレートミルクになったカップを差し出す。
そして、“ニヤリ”ではない本当の顔で少し笑った。
「先生にはその顔が似合ってるわ。その顔が一番ね。」
先生は照れくさそうに笑い、ホットチョコレートミルクを一口飲んだ。

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〜二人の秘密〜長文なので暇なときに読んでいただけると嬉しいです。

部屋の扉から少し顔を出す。
「あっ。先生?……ちょっと相談があるんだけど。」
私の学校には寮があり、もう12時を回っている。
『何だ?こんな時間に。いくら“寮だから”と言っても遅すぎるんじゃないか?』
「うん。だから相談なんだってば…。」
『ほら、こっちに来い。他の教師に見つかるだろう?』
「あっ、うん。ありがとう。」
『相談とは何だ?』
『何かあったか?  ……まさか虐めか!?』
最高に質問攻めをしてくる。
「うん。違うから話し聞いて?」
『あっ。すまない。』
少し首を傾けて目を覗き込んでくる。
「あのね、寝なきゃいけないのに寝れないの。」
「…いや、違くて。眠いのに寝たくないの。…だから寝れない。」
『そうか。私にもあったなぁ、そんな事。』
「でしょうね(笑) だから聴きに来たんだもん。」
先生には、私とは違うが昔いろんな酷い事があった。
『なら、私の部屋を使うといいさ。』
先生は唐突に切り出す。
「えっ?何で?寮あるのに?」
『私が子守唄でも歌ってやろう。』
「いや、私がここで寝たら、先生何処で寝んの?」
『こんなに大きなベッドなんだ。2人で寝れる。』
大体の教師部屋はベッドは大きくキッチンさえある。
「でも、子守唄なんかで寝れるの?」
『きっとひとりだから寝れないんだろう。』
『ほら、寝ていいよ。』

私達は背中をくっつけて寝転んだ。
背中で先生の温もりを感じながら、子守唄を聴く。
ショパンだったかモーツァルトだったか、子守唄はとても綺麗だった。
久しぶりに感じた人の温もりで、
子守唄が終わる前には私も先生も眠っていた。

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〜二人の秘密〜長文なので時間があるときに読んでくださると嬉しいです。

トントン。私は先生がいる部屋の扉を叩く。
『先生?入ってもいい?』
爆発音とともに、
「ちょっと待て」という声が聴こえる。

5分ほど経つと扉が開いた。
「お待たせ。」
『先生、また魔法の薬学してた?』
「あぁ。少しだけだ。」
先生は魔法を使った薬学を“隠れた専門教科”としている。
先生の使う魔法の薬学はとても綺麗で素晴らしい。
『今日は失敗したの?』
「掛け合わせができると思ったのだが何処かで間違えてしまったようだ……。 片付け、手伝ってくれるか?」
『えぇ。もちろん。その代わり、チョコレートね。』
「わかってる。魔法の事は誰にも言うなよ。」
『もちろん、わかってるわよ。』
私は魔法使いでも魔女でもない。
いや、普通はみんなそうだ。でも私は、夢のような彼の秘密を知っている。

手伝いをしながら彼に問う。
『ねぇ。先生の魔法の事、私にバレたけど何もないの?お仕置きとかさ。』
「君が黙ってるから何もない。私も何も言わない。」
『誰かが魔法を使ったら、“魔法の存在がバレた”って事がバレるんじゃないの?』
「あぁ。もうバレてるだろうな。」
『大丈夫なの?』
「君が秘密にしてくれているんだ。何もないだろう。」
私は“そっか”といい一息つく。
『だいぶキレイになったんじゃない?』
「そうだな。元通りだ。」
『良かった 良かった。』
「そういえば、何か用事があったのでは?」
そう言いながらチョコレートを渡してくれた。
『えっとね〜……。 忘れた……。』
「まぁいいさ。思い出してからまた来るがいい。」
彼はホットミルクを差し出す。
『ありがとう。……魔法の事、先生にお仕置きがなくて良かったよ。』
先生と話したかっただけとは言えなかったが、帰宅のチャイムがなるまで話し合っていた。

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禁忌

禁忌、というものがあるらしい。
触れることも見ることも許されない、見ることができないからそれであるかも分からないけど。
君もよく知っているだろう。侵してはならない領域。ほら、白雪姫はりんごを食べてはいけない。ラプンツェルは塔から降りてはならない。
法律とかではないよ。あれは人と人とのお約束事。
禁忌とはそうではない。多分、私やあなたの本質を揺るがすのだろう。
人間の本質を損なうのだろう。そうなのかもしれない。
そういうものだ。禁忌とは。
侵してはならない。
侵してはならないよ、その先に何が見えようとも。奇麗な空や、ほら、花園が広がっていようとも。見てはいけない。目を背けよう。
目を背けなければならないよ。変な気を起こさないように。教育だよ。私とあなたのため。
言った通り、私やあなたの大事な柱が揺らいでしまうから。
とにかく。いけないことをしてはいけないよ。当たり前のこと。
見てはいけない。踏み入ってはいけない。指の隙間から覗くのもいけない。惰弱な精神が邪魔をするだろう、そういうものだ。人間とは。
人間とは、そういうものだ。脆弱な。
人間は脆弱だが、だからこそ禁忌を忘れてはいけない。
忘れるな。
真っ当な人間は、決して禁忌を忘れない。
私もあなたも、真っ当でいるのが正しい。
正しいことを、人はするべきだ。
正しくないことをしてはいけない。
禁忌を侵してはならない。
これは鎖ではない。私とあなたを守る命綱だ。
あなたを守るためだ。
禁忌に対して触れたいとか見たいとか、絶対に考えてはいけない。
絶対だ。

分かったら、さあ。
正しいことをしようじゃないか。