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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ①

寿々谷市中心部のショッピングモールには”イベントスペース”がある。
建物1階の真ん中、いわゆる吹き抜けの真下に、広々としたスペースがあるのだ。
ここでは年末にお歳暮、夏にお中元と色々な催事が行われることが多い。
常に何がしかのイベントが行われているのがイベントスペースだが、基本的にわたしたちのよなコドモにとって興味のあるイベントが行われることは中々なかった。
しかし、今日ばかりは違ったのである。
「”ZIRCONフリーライブ”か」
ショッピングモールのイベントスペース近くの柱に貼られたポスターを見ながら師郎は呟く。
「今日の3時からここのイベントスペースで開催だってさ」
赤いウィンドブレーカーを着た耀平はそう言って頭の後ろに手を回す。
紺色のパーカーを着てフードを目深に被った黎は静かにうなずいた。
しかしネロは何の話かよく分からないように目をぱちくりさせる。
「ねぇ、”じるこん”って何?」
ボクよく分かんないんだけど、とネロは耀平の上着の裾を引っ張る。
耀平はえ、知らない?と驚く。
「最近話題のご当地アイドルって奴だぞ」
寿々谷を拠点に活動してるっていうさ、と耀平は言う。
しかしネロはよく分からないのかポカンとしている。

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終末を巡る_13

琥珀はそのまま落下した。…が、途中で落下が止まり、尻あたりに痛みが走る。
「きゃんっ!!」
_林檎、林檎をあのまま落とすわけには…!
振り向くと、蜘蛛がその脚で尻尾を掴んでいた。蜘蛛の背中の上で背中合わせになって脱力している人間を見て琥珀はぞわぞわした感覚に陥る。
「ガルルルルッ!!」
琥珀が思い切り威嚇をすると、人間は意識を取り戻したように飛び起きた。その反動で蜘蛛の顔が上へ上がり、尻尾を掴んでいた脚が離れる。


できるだけ風の抵抗を受けようと努力する林檎の首根っこを、琥珀はぎりぎり甘噛みすることに成功した。琥珀はそのままかなり無茶な体勢で林檎を庇いながら地面に墜落する。
『こはく』
『……すまん…しばらくは、動けそうにない…』
『んーん、あやまることない。こちらこそごめん、ありがとう』
たどたどしくも林檎はそれだけ言って、琥珀の顔や身体を舐めてやった。
『…更に下に来ちまったな…』
『あんぜんならいい、やすもう』
『…ああ』
林檎の温かみを感じながら琥珀はゆっくり尻尾を振りつつ目を閉じる。
林檎も目を閉じて琥珀のお腹に頭を乗せた。

誰も入りたがらないような真っ暗な穴の中、世界の真相に触れかけた狼と兎は、寄り添って寝ていた。