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Trans Far-East Travelogue㉙

場所によっては鉄道大国である日本の心臓部、関東と言えど電車の本数が少ない関係で、明日の目的地を早く決めないと困るので嫁に訊いたら、「貴方の思い出の場所が良い」と言うので、電車のダイヤと相談して神奈川県方面へ行くことにしたが、時刻表を見て思わず「勘弁してくれよ」と叫んでしまう
ターミナル駅が身近な場所にある俺にとって、鉄道の利便性はどうしても目的地までの速達性とイコールになるので、ダイヤ改正で優等種別が途中駅にもガンガン止まるようになった小田急や東急線、JRは不便極まりないため湘南方面は論外だ
しかし、京急も日中最速達の「グリラピ」こと快特が思いっきり減便されている上に快特のほとんどが途中の久里浜止まりで、しかも久里浜での乗り継ぎも不便になっていて、終点までは特急ばかりであることに頭を抱えていると、路線図を見ていた嫁が「横須賀中央で降りて三笠見て、特急までの時間稼ぎすれば?」と提案してくれた
最悪、横須賀中央から各駅停車に乗る羽目になっても少し先にある堀之内という駅で乗り換えれば、特急で三崎口を目指せることは時刻表も過去の経験も示しているため嫁の提案を承諾し、お得な切符の使用を前提としてプランを練るが、ここで思わぬ障壁が立ちはだかる
特典付きか否かを問わず、切符がどれも以前よりも値上げしているのだから無理もない
思わずため息混じりに「俺の財布も京急か」と呟くと、嫁が「京急電車のメインカラーは赤、ナンバリングのイニシャルはKK…金欠(Kin Ketsu)のKKで赤字…つまり、財布も京急だとお金が無いってこと?」と訊くので「バレちゃったか…東京モンは金持ちだと思われてるから見栄張ろうとしてたんだけどなぁ…バレたモンは仕方ないか」と笑って返す
すると、嫁が「マレーから殆ど貴方の奢りだったよね…そりゃ金欠にもなるよ」と言って笑ってるので「君の前ではカッコいい男でいたいからな」と笑って返し、気付いた時には日付も変わってたので起床事故を起こさないようにする為にも消灯する
「ライアンの隣にはつば九郎」と言って嫁がいきなり俺の布団に入って来たのでお互いに抱き合うように寝るとなぜか予想以上にグッスリ眠れて予定通りに起きられた
さぁ行こう、俺の青春の集大成とも言える場所へ!

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タイムジャック7

「お前が…俺の術のタイミングをズラしたのか…」
智也は歯を食いしばりながら言う。
「察しがいいな、一瞬お前の時を止め、俺のいた位置にこいつがいるタイミングで解除した。そうすればお前の術はこいつに当たる」
やっと思い当たるシーンが浮かんだ。
あの時の…あれは俺への時間停止じゃなかったのか…
あれをかわさなければ…
いや、そうすればその時点で捕まっていたか
「言っただろう、ここでは能力が全てだ、能力を使う、かわす、そんなことは猿でもできる。大切なのはどう使わせるかだ、自分の術だけじゃなく、相手も使う。正しく支配者だ」
う…ウザイ…
しかし、言っていることは事実だ。
相手の思うようにやられた…
ここからどうやって…
俺たちは今、2人ではなく1人が2つあったに過ぎない状態…どちらかが利用されるのは必至。
ならどうやって…
今更こいつと仲良しこよしとかごめんだし…
でもそれじゃ…勝てない…
変わらなきゃ…いけない…
「なぁ智也、お前もう隠してることないよな…」
「さっきので最初で最後だよ、言ったろ、守を貶めるつもりはなかったって」
相手から目を離さないため、智也の顔は確認出来ないが嘘をついていないのは十分伝わった。
「オーケイ…ならこっからは息合わせていくぞ…」
「OKっていうか、元々そのつもりだったけどね」
心なしか、さっきよりも会話のテンポがあってるように感じた。
「作戦会議は終わったか?」
「あぁ、こっからは第2ラウンドだ」
「かかってこい…」
相手は左手でこちらを誘っている。
「いくぞ!」「うん!」

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音が繋ぐ

「おはよう」
振り返ると君がいる。
おはよ、と返しつつスマホの画面を君に向ける。
「俺の好きなバンドじゃん!知ってるの?」
当たり前でしょ、すすめてきたのは君なんだから。
知ってるよ、と何もなかったように話すけど
つまりは、あの日の会話は忘れられている訳で。
少しだけ、ほんの少しだけ、寂しくなる。
「あぁ!ツアー情報出たんだよね!!!」
分かりやすく高揚する君を愛しく思う。
愛しい、なんて言うと好きな人みたいだけど
いやいや、彼のことは好きだけど、
なんか、そういうのじゃないんだよなあ。
「え、え、いつがいい?」
唐突な君の言葉にえっ、と言葉に詰まる。
一緒に行くの?と可愛げのない返しをする。
「え、行こうよ!」
君のそのありすぎる行動力が苦手という人もいると思うし、正直始めは僕もドン引きだったんだけど。
その行動力に、あの時の僕は救われたから。
溢れるワクワクを抑えるように
チケット、当たるといいけど
って口を尖らせてみた。
「神社通うわ!毎日!!!」
わけのわからない返しをしてきた君と
大好きなバンドのライブへ行って
それがきっかけで音楽にのめり込んで
僕ら2人がギターを持って、ステージに立つのは
もう少し先のお話。