皇帝の目_9
耳をつんざく奇声が上がった。器用にチトニアの肩あたりに捕まっている梓を案じ、チトニアは梓を潰す勢いで両手に包み、腹に当てて蹲る。
「ちょっ、チトニア!!せまっ、ちょ、手どけてくんない!?」
焦った梓がチトニアの手の中で暴れ出した。
「わわ、ごめんね」
奇声が漸く途切れ、部屋中に散乱している粘液もその緑色を失い始めている。先程の慌てぶりが嘘のように突然落ち着いた梓は、チトニアの手のひらからビーストを見下ろした。
「身長戻らないね」
「とどめを刺してないからだろう。…多分」
チトニアにビーストの眼球を露出させてもらい、梓は両手で果物ナイフを持ち、ビーストに向けて自由落下した。
「ぐえ」
その声を発したのはビーストではない。落下の衝撃に驚いた梓である。ビーストは音もなく絶命した。
「やったよ梓ぁ!ナイス〜っ!!」
チトニアが再び潰さんばかりに梓を持ち上げて頬擦りしだした。
「あっちょ、潰れるって」
そう呟いたところで、二つのことに気づいた。一つ目は、この病室に人が集まっていること。二つ目は、身長が戻りかけていることである。