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鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches. Act 10

幻影の上に着地したウグイスは崩れていく足場でよろけて地上に転がり落ちる。ソラは思わずウグイスに駆け寄った。
「…決着は着いたようね」
幻影から離れた所で戦っていたスカーレットはポツリと呟く。オレンジは後ろを見て黙って和傘を下ろした。
「やったねウグイス!」
ソラがウグイスの手を取って飛び跳ねるが、ウグイスは真顔でそうねとだけ答える。ソラはそっけないな〜と笑うが、バーミリオンはいつものことでしょーとソラの肩に手を置きカナリアは静かに頷く。その様子を見ていたシルバーにも、スカイやグリーンが近寄ってきた。
「…姉さんの言うことも分かるわ」
幻影はかつてあたしたちと同じ魔女で、仲間だったとスカーレットは不意に呟く。オレンジはスカーレットの方を向く。
「あたしたちより長く生きている姉さんにとっては、大事な存在だったのよね」
でも、とスカーレットは続ける。
「あたしにとっては今いる仲間たちの方がずっと大事だから」
あたしは彼女たちのためにも戦っているのよ、とスカーレットは目を細める。
「姉さんだって、妹たちも大事な存在でしょう?」
スカーレットはにこりと笑って首を傾げる。オレンジは黙って俯いた。
「…わたしは」
わたしは、かつての仲間たちも大事だからと彼女は震えながら呟く。スカーレットは暫くその様子を見ていたが、向こうでグリーンがねーさまー!と手を振っているのに気付くと笑顔で手を振った。
「今行くわ」
スカーレットはそう答えると、オレンジに対しこう声をかけた。
「今のあの子たちみたいに、姉さんとあたしがまた一緒にいられる日が来ることを楽しみにしているわ」
オレンジはハッとしたように顔を上げる。だがスカーレットはもう既に妹たちの方へ向かっていた。オレンジが振り向いて彼女たちの方を見ると、魔女たちはわいわいと話に花を咲かせていた。
「…スカーレットったら」
オレンジは独り微笑みながらそう呟いた。

〈おわり〉

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鉄路の魔女 〜Megalopolitan Witches. Act 9

「嫌よ」
オレンジはにやりと笑うと刀で押し返してスカーレットの鎌を弾いた。
「っ!」
スカーレットはバランスを崩して後ろに倒れるが、その最中にスカイ、グリーン‼︎と叫んだ。
後方に控えていた2人はそれぞれ打刀と太刀を携えてオレンジの前に躍り出る。そのままスカイとグリーンはスカーレットに斬りかかろうとしていたオレンジの刀を受け止める。オレンジはまた後方に飛び退く。しかし息つく間もなくスカーレットが鎌を構えて飛びかかった。
「‼︎」
姉妹はまた鍔迫り合いになる。互いの武器で2人は押し合うが、突然スカーレットがオレンジの腹に蹴りを入れた。
「⁈」
オレンジの手から刀が離れ、オレンジは地面を転がる。オレンジは起きあがろうとしながら和傘を再生成するが、ここでスカーレットが叫ぶ。
「シルバー! 地上の魔女たち!」
今の内に幻影を!というスカーレットの言葉に一瞬ウグイスたちは戸惑うが、シルバーが幻影に向かって飛び込んでいったことで彼女たちも走り出す。
「待ちなさい!」
オレンジは彼女たちを止めようとするが、スカーレットが鎌を持って斬りかかってきたので和傘でそれを受け止める。
「今のあなたの相手はあたしよ!」
スカーレットはそう言ってオレンジとの戦いを再開した。
そしてシルバーたちは幻影に飛びかかる。
シルバーはナイフを次々と生成して幻影に突き刺して動きを鈍らせ、ソラは大剣で幻影の前脚を切り落とす。バーミリオンとカナリアは槍とマシンガンで無数にある幻影の目を潰していく。魔女たちの猛攻によって、幻影は少しずつ体力を削られていった。やがて幻影の動きが止まった所でウグイスが高く飛び上がって右手にチャクラムを生成する。そのまま彼女はチャクラムを幻影に対し垂直に向けたまま地上に落下した。チャクラムは幻影の首に突き刺さる。
「{*;>|‘}$]>]|]*]$[・‼︎」
幻影はつんざくような悲鳴を上げると動かなくなった。そして蒸発するように消滅していった。

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視える世界を超えて エピソード9:五行 その⑬

「それは辞めといた方が良いんじゃねッスか、シラカミさんよぉ」
後ろから鎌鼬くんが声をかけてきた。白神さんが面倒そうに振り返り、彼の方を見やる。
「その人、種枚さんも目ェ掛けてますんで、あの人と喧嘩する羽目になりますよ?」
「やぁーだぁー! 千葉さんはわたしが囲うのー!」
放電しながら自分を抱き締め、白神さんは反抗した。電流で身動きが取れない。
「いやマジでお願いしますよ。俺、お目付け役任されたんで、2人に喧嘩されると100パー巻き込まれるンス」
「し、白神サン」
自分もどうにか口を開く。
「ここは間を取って、その、自分は不可侵ってことでどうですかね。いきなり白神さんのものになるのはちょっとアレだけど……白神さん以外のものにもならないってことで」
「む……それなら、良いかな……」
そう呟き、白神さんは自分を解放してくれた。電気にやられて完全に麻痺しきった身体がその場に崩れ落ちる。
「……そういうわけで、鎌鼬くん。種枚さんに言っておいてくれる……? そうしておかないと、自分が死にかねない」
「了解ッス。じゃ、俺は失礼します。お大事に」
白神さんに抱えられて帰途に就きながら、鎌鼬くんにどうにか会釈を返した。