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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑨

「……テンちゃん、まずい」
ビルの屋上で、ボンビクスが呟いた。
「どうしたの、お姉ちゃん?」
「糸を逃れる人がもう1人出てきた。多分、私より『上』から時空を握られてる。どうしよう……くぁちゃんの結界術は私の糸からしか守れないから、やられちゃうかも……」
姉の言葉に、アンテレアは一瞬考え込んでから口を開いた。
「お姉ちゃん、くぁちゃんと初めて会った日のこと、覚えてる?」
「うん。怖い先輩に絡まれてた時に、くぁちゃんがその人をボコボコにしてくれたんだよね!」
「その時にね、くぁちゃんが言ってたの。『お前らがいて都合が良かった』って」
「そういえば言ってたね? でもなんで?」
「私も気になって、あとで聞いたの。何か、くぁちゃんの刀の中に、2個の能力があるやつがあるんだって。『イショートー』だっけ?」
アンテレアが、にぃ、と笑う。
「くぁちゃんの刀の中にね、私たちみたいな子を守ると強くなれるのがあるんだって。だから、お姉ちゃん」
アンテレアの言葉に、ボンビクスは目を輝かせた。
「テンちゃん、行こう! くぁちゃん助けに行くよ! 結界お願い!」
「りょーかい!」
アンテレアが、新たに双子を範囲内に収める小さな結界を生成する。ボンビクスの魔法の発動と同時に、2人は屋上から飛び降りた。
ボンビクスは糸をクッションにして着地し、そのまま甜花学園を覆う結界に突入する。
「これで……自由に糸を使える!」
ボンビクスは双子の身体を糸でまとめ、校舎に向けて糸の先端を射出した。外壁に接着した糸を引き、伸縮性を利用して一気に跳躍する。
「お姉ちゃん、くぁちゃん見つけた!」
「分かった!」
糸を操り、双子はロノミアの前に着地する。
「くぁちゃん、助けに来たよ!」
「くぁちゃん、守って!」
突然の双子の出現に、場が一瞬固まる。
「お……お前ら、何つータイミングでで出てきてんだよ……最悪だ」
ロノミアの言葉に、双子は不安げに振り返る。ロノミアは頭を抱えながらも、口元には笑みを浮かべていた。
「……最高のタイミングだ……!」

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魔法少女学園都市レピドプテラ:天蟲の弔い合戦 その⑧

「ぐっ……時間が足りない……!」
ササキアが呟きながら、身体を起こす。
「あー? 今のを耐えるのかよ?」
「私は、皆に信頼されている……。それに応えるため、折れるわけにはいかないんだ!」
毅然と言い返し、ササキアは再び盾を構える。受けた刀傷は、既に治癒されていた。
「わーお、治癒能力まで搭載済みかよ……とんだ意地っ張りだ。こりゃ骨が折れるぞ?」
ササキアが盾を前に突き出し、突進を仕掛ける。
「ところで知ってるかい? 生徒会長さんよ」
ロノミアが、左手の刀を掲げる。それ――“緋薙躯”の刀身は根元から失われているように見える。否、正確には『視認困難なほどに細長く伸長している』。
「一度伸ばしたものは、必ず縮めなきゃならないんだよ」
“緋薙躯”の刀身伸長が解除され、超高速で元の長さに縮んでいく。ロノミアは先端付近を変形させ、スパイクを形成することで、縮小の過程でササキアの首を捉えられるようにしていた。スパイクがササキアの首の後ろに迫る。
(獲れる……!)
直撃の瞬間、スパイクは虚空で不自然に砕かれ、ササキアを傷つける事無く“ヒナギク”は元の形状に収まった。
「あ……?」
「……どうやら、間に合ったようだな。この『絡みつく魔力』が時間をも拘束していたのだろうが……残念だったな。『時空に干渉する』魔法の持ち主程度、この学園にも揃っている」
校舎の2階の窓が開き、1人の魔法少女がふわりと飛び降り着地した。
「会長、ごめんなさい! いきなりのことで対応に時間がかかりました!」
「助かった。奴が下手人だ」
蝶の羽根を思わせるシルエットの和装に身を包んだその魔法少女――ニファンダ・フスカが、ササキアの隣に並ぶ。
「あれが悪い人なんだ? 流石に私が出し惜しみしてる場合じゃないし、本気で行くよ!」

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 23.キリン ⑥

「ちょっとした、興味って奴?」
そう言って師郎はにやりと笑ってみせた。
その様子を師郎の左隣から不思議そうに黎が覗き込み、前を歩くネクロマンサーとコマイヌは立ち止まってこちらを見ている。
わたしは思わずポカンとしてしまうが、師郎は上着のポケットから濃いピンク色のキーホルダーを取り出した。
「ま、あの少年はコレ置いてってるし」
届けてやらにゃいかんだろ、と師郎はそれを眺めつつこぼした。
わたしは何も言えずその様子を見ていたが、やがて師郎が行くぞと言って歩き出す。
ネクロマンサー、コマイヌ、黎も前を向いて歩き出し、わたしもそれに続く。
暫く歩いて、わたし達は人気のない階段へと向かった。
そしてわたし達は階段を下っていった。
階段はほんのり薄暗く、人は誰もいなかったのでわたし達の足音だけが響いていた。
…と、わたし達の前を歩いているネクロマンサーとコマイヌが1階と2階の間の踊り場で立ち止まる。
わたし達の目の前の踊り場には、先程師郎とぶつかった少年が壁に背中を預けた状態でうずくまっていた。
「…」
少年はわたし達の気配に気付いたのか顔を上げるが、わたし達の姿を見とめた途端にひっと震え上がった。