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鉄路の魔女:夢破れてなんちゃら その①

電信柱の上で蹲るように眠っていた鈴蘭は、朝の眩しさに目を覚ました。
凝り固まった手足を解すために大きく伸ばし、そのままバランスを崩し地面に落下する。
「ぶげっ…………いたい……」
強かに打ち付けた後頭部をさすりながら立ち上がり、鈴蘭は歩き出した。ガードレールをひょいと跳び越え、未だ始発も動かない早朝のBRT専用道路の上を進む。
目的地は、とある踏切跡。最近は毎朝通う、ある種『お気に入り』となったそのスポット。その遮断機の上に腰を下ろし、右手首を見る。
普段はポンチョ風の衣装の下に隠れている機械の右腕。その装甲の下は、部分的な廃線によって不完全に幻影化している。BRTへの移行が無ければ、影響はこの程度では済まなかっただろう。
そう考えながら右腕をしばらく眺め、鈴蘭は再びその腕を衣装の下にしまった。これまで生きてきて、人間を観察して得た知識によると、彼らは時間を知りたい時に手首を見るらしい。それが『腕時計』という外部装置を必要とするところまでは気付けないまま、小首を傾げてただ時が過ぎるのを待つ。
数十分後、始発バスが真横を通り過ぎた。
「や」
短く呼びかけつつ右手を挙げる。当然答えが返ってくるはずは無く、鈴蘭は周囲を眺め始めた。
時間の経過とともに、少しずつ、本当に少しずつではあるが、人通りも増えてくる。
そして、1つの軽いエンジン音が近付いて来るのに気付き、鈴蘭は表情を輝かせてそちらに目を向けた。
そちらからは1台の原動機付自転車が近付いて来て、1度減速してから踏切跡を通過する。
「やぁ、少年!」
その運転手に、先ほどよりも明るく呼びかけ、右手をひらひらと振る。気付かず去っていく後ろ姿を見送り、一瞬の思案の後、鈴蘭は遮断機から飛び降りた。

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視える世界を超えて エピソード8:雷獣 その⑨

「ああクサビラさん、最期にお友達とおしゃべりする時間をもらうよ?」
「……好きにしろ」
白神さんの問いかけに答え、種枚さんが1歩退いた。一息ついて、白神さんの方に向き直る。
「ねえ千葉さんや。1個だけ、正直に答えてほしいんだ」
「……何でしょう」
白神さんの質問が何なのかは、既に察しがついていた。深い藍色の虹彩に縦長の瞳。微笑を浮かべた口から伸びる鋭い牙、さっき攻撃を受けた際に身体を庇ったのか、上着の袖の破れた穴から覗く、滑らかな栗毛の毛皮。パチパチと音を立てて、彼女の身体の周りに目視できるほどはっきりと流れている放電。
「千葉さんや。わたしのこと、怖いと思う? 正直に答えてほしいんだ。『怖い』って、そう言ってくれたら、わたしは人間に混じっているべきじゃない。大人しくクサビラさんに殺されるよ。それが正しいことなんだから、わたしは気にしない」
「…………」
正直に答えるとしたら、たしかに『怖い』と言わなくちゃいけない。ヒトじゃない存在の恐ろしさは、実体験として知っている。友人として接していた人が、『人』ではなかった。その事実に戦慄するなという方が無茶な話だ。
「…………全く怖くない、とは言いませんよ。妖怪だっていうなら」
「そっかー」
「でも、それでも白神さんは自分にとっては大事な友人です。そんな白神さんを失いたくない。……それに」
種枚さんに目を向ける。
「白神さんなんかよりよっぽど恐ろしいモノ、自分は見慣れてますから。だから大丈夫、白神さんは怖くなんかありません。可愛い可愛い私の友人ですよ」
「ち、千葉さぁん……!」
種枚さんがどんな反応を示すのか、注意を向けてみると、種枚さんは後方の自身の足跡を眺めていた。少しずつ火の手が広がりつつある落葉に向けて適当に腕を振るうと、落葉が大きく舞い上がり、火もかき消された。

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鉄路の魔女 〈設定〉

この書き込みは企画「鉄路の魔女」の〈設定〉書き込みです。

〈設定〉
・鉄路の魔女
鉄道路線へ対する人々のイメージから生まれる少女の姿をした“なにか”。
大抵子どもにしか認識・接触できないが、稀に大人でも認識・接触できる者がいる。
自らのイメージ元の路線へ対する人間のイマジネーションが少しでもあればその姿を保つことができる。
同じく人間のイマジネーションを糧とする“幻影”には敵対的。
自らのイメージ元の路線に対する人間のイマジネーションを消費することで様々な行動が可能で、戦闘時には固有の武器の生成が可能。
名前としてイメージ元の実在・現存する鉄道路線のラインカラー/車体カラー名を名乗り、二つ名として「〇〇(モチーフとなる実在・現存する路線名)の魔女」を名乗る。
イメージ元の路線のラインカラー/車体カラーにちなんだ華やかな衣装・容姿を持つ。
イメージ元の路線が同じ会社の“魔女”は互いのことを“姉妹”と認識する。
イメージ元の路線が通る街に出現することが多い。
人間のイマジネーションが尽きない限り不老不死。
なぜ少女の姿をしているのかなど謎が多いが、彼女たちはほとんど語ろうとはしない。

・幻影
“鉄路の魔女”たちの敵。
そのどれもが禍々しい姿をした巨大な怪物。
“魔女”たちと同じく人間のイマジネーションを糧にするが、それを欲するあまり人間のイマジネーションを根こそぎ奪ってしまい、彼らを廃人化させてしまうことがある。
そのため“魔女”たちからはよく思われておらず、討伐の対象となっている。
多くの人間が住む都市部に集まりがち。
その正体は、廃線になった路線のイメージから生まれた“鉄路の魔女”の成れの果て。
廃線になったことで人々から忘れ去られ、自らのイメージ元へ対する人間のイマジネーションを失うことで姿を維持できなくなると彼女たちは“幻影”化する。
幻影になってしまえば元の人格は失われるし、本能の赴くままに人間のイマジネーションを何へ対するものなのか見境なく喰らうようになる。
これに対抗できるのは“魔女”のみである。

という訳で設定集は以上になります。
何か質問などあればレスをください。
では、皆さんのご参加楽しみにしております。