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LOST MEMORIES CⅨⅩⅧ

また謎が深まっただけだ。滅多なことでこの言葉は使いたくないが、絶対、正真正銘、あればチャールズである。
その微笑みに触発され、無性に腹が立った瑛瑠は、おへそでお茶が今まさに沸いている状態で質問攻めだ。
「じゃあどうして私はお兄ちゃんと呼んでいたの!?」
「どうしてあなたは私をパプリと呼んでいたの!?」
「お母さまだってお兄ちゃんと読んでいたわ!!」
「あのチャールズは誰!?」
「あなたは誰なの!!」
「私は誰!!」
はいはい落ち着いてくださいと宥めるチャールズは、ぐずる子供をあやすママだ。ホットミルクを加えてくれる。そしてスプーンで蜂蜜を掬ってかき混ぜるまでの流れる所作で、瑛瑠はいとも簡単にあやされてしまった。
「そもそも、私とお嬢さまでは似ても似つかないでしょうに。」
空気が浮上したため、瑛瑠も軽口を叩く。
「そうね、どうせ私はチャールズの顔の足元にも及びませんわ。」
ありがとうとは伝え、口許に運ぶ。拗ねた口調にチャールズは苦笑いだ。そもそも髪色も眼も違いすぎますよと言われる。
そう言われて思い出す両親の顔。基本瑛瑠は父似である。そういえば、母は白髪で碧眼であった。髪と眼の色が違うと、やはり抱く印象は変わるもので。
そうしていきついた先は、母とチャールズが似ているということ。
母を疑うわけではないが――
「チャールズ。あなた、隠し子?」

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実家暮らし

たくさんのお金はないけど
信じられる家族がいる

不便はあるけど
不満はないよ

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きみのぶんしん

世界中の
あの子と同じ洗剤を
生産中止にしてほしい
隣を通った人の匂い
その度
思い出しちゃうから

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将来

最後に笑うのは自分だから。絶対見返してやる。

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すぐに枯れる金木犀のように儚い君の命は、今どこにあるの?

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LOST MEMORIES CⅨⅩⅦ

少しでも期待した自分が馬鹿だったように思う。明日、英人と何を話そうか。
「ただ、」
瑛瑠が思考を移す前に口を挟むチャールズ。
「先程のお嬢さまの予想とやらを否定するつもりはありません。」
肯定もしませんが,と間に髪の入る隙間も作らずいれてくる。
しかし、少なからず他人に話しても良いだけの内容ではあったということで。
少し道が開けた気がして、浮上する思いがする。
その気持ちに背中を押され、先はスルーした、でもずっと気になっていたことが音になる。
「チャールズは、私のお兄ちゃんなの?」
どんな答えでも瑛瑠は戸惑ったと思うけれど。
チャールズは
「違いますよ。」
そう言って微笑んだ。

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ワンシーン

秋風に揺れたロングスカート
金木犀に色づく木の葉
「この季節が終わったらお別れだね」

転校
それは君をより感傷的に見せていた

「離れるときが来るなんて」
「この街も季節もあなたとの想いでも」

想いでなんて離さなくていいじゃない
なんなら、
君の心のホチキスで僕を繋ぎ止めてくれないか?

0

怖い

怖い
怖い

今まできずいて来たものガラガラと音を立てて崩れていく気がする。
そんなことを頭で考えてしまっている。

言うと決心していても君を前にすると言えない。
逃げてしまう。

やっぱり怖い

1

繋ぐ今夜はステイプラー

感傷的になったがために
空っぽになった涙腺に
クマを溜め込む午前2時

環状線を走り廻る快速列車
2、3両間の緩衝材のなかで
ロングスカートに顔をうずめて
昨日と明日を行ったり来たり

3

ラムネ瓶

からん
からん
空っぽのラムネの瓶
透き通った新橋色

ころん
ころん
どんなに指をのばしても
あのビー玉が
どうしても
取り出せない

すぐそこにある
指先だけなら
触れることもできる

もう少し
もう少し

嗚呼
どうして
どんなに頑張っても
ビー玉だけは
取り出せない

まるで人の夢
まるで人の心

ならいっそのこと
叩き割ってしまおうか

でも
壊したくないんだ
傷つけたくない

からん
からん
届かない

ころん
ころん
手に入らない

どうしても
どうしても

残ったのは
影ばかり


0

あなたがいるなら

君がいたから
今の僕がある

孤独で凍えていたあの日々に
温もりをくれた

今はどこに居るのかも分からないけど
何があっても忘れないと言い切れる
そのくらいあなたは
僕の光だった 希望だった

いつか出会えると信じて
今日を歩いて行こう

どんなに不安な未来だって
あなたが歩みを止めない限り
同じように歩き続けれるから

いつまでも
Thank you for you

2

LOST MEMORIES CⅨⅩⅥ

今度は皮肉げに言う。名状しがたい色とは、皮肉だったのかと妙に納得する反面、確かにお姫様抱っこやハグしかり、罪深い行動をさらりとやってはのけるが、フェミニストチャールズを最低と言う女性がいたとは。例の彼女か、その彼女関連か、聞きたいのに聞けない瑛瑠がいる。
「だから、確かに質問内容にも多少は困っていますが、それ以上にお嬢さまにそんな顔されることに困っていたんです。」
まあ、私に否があるのですがと応えるチャールズは、立派な軌道修正士だ。結局聞けなかったことにささやかな残念はあったものの、もう少しお互い探る真似を止めるようになってからでも良いかと胸に落としておく。
「やはり、現状についてはまだお話しできません。動きが出たらお話しします。」
「……昔のことも?」
「はい。」

5

絆創膏

僕は知っている
君の手の甲の絆創膏が
君を覆い隠していることを

ホチキスのはりが刺さったの
どんな使い方してたんだよって
僕は笑ったけれど
僕は知っていた
絆創膏を替えるそのしたに
見覚えのある
小さな傷跡があることを

感傷は
終着駅じゃないよ
風呂の残り湯じゃないよ
夜明かしの酒じゃないよ
その手の絆創膏じゃないよ
そんな下らない言葉は
とうの昔に飲み下して

やっと気づいたんだ
僕は
君を知りたかった
隠された秘密も全部
大事なところも全部
激しい痛みも全部
それを全部覆って
僕だけが知る君を

僕は
君のマスクになりたかった

僕は
君のスカートになりたかった

僕は
君の絆創膏になりたかった

0

泡沫

それは
音もなく
弾けて消えた

守る隙さえ見つからなくて
壊れたあとは
何も残らない

何事もなかったかのように
水面は凪いでいる

またひとつ
弾けて消えた

ほら、またひとつ

どうせなら
僕と一緒に遊びませんか



ぽつり



最後のひとつが
弾けて消えた



残ったのは
空虚な僕だけさ

0

無題

君は僕を置いていった
長い秋色のスカートを翻して
僕は感傷的な気分をホチキスでつなぎ留めて
一人で俯いていた
秋が過ぎて 冬がきても
まだ厳しい季節が続くんだ
見上げた夕焼けが僕の胸を焦がした
この気持ちが
切ない
ってことなんだ

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即興詩。

きみがホチキスで留めたままのスカート
裾を引き摺って歩きだしたのは雨降りの
感傷的と云うことばのよく似合う昏い夜


(出来がイマイチなのでもう一つ描きます)

2

この国は季節の環状線

冬の明け方に破ったフレアスカート
内側に織り込んでホチキスで留める
綴じ込めた思いが弱かったのか
履いてみたら銀色で肌を傷つけた
痛みで覚ました感情は
まだまだ冬には染まらない

0

一瞬

雨が地上に落ちてくる時間よりも
短いかもしれないほんの一瞬。

目が合って。
にこってしてる君の笑顔が見られたから
もうそれだけで頑張れる気がするのは

僕が単純だからなのかな。笑

1

夢と幻と希望

あの日あのときあの場所で、スカート3つ、魂みっつ
最後の日へと向かう今に、誰かがホチキスか何かで繋ぎ止めてくれれば良かったのに...

スカート3つ、魂ふたつ
もう感情的には語れないけど、最後に残ったぼくの夢

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楽譜と風と秋の匂い

ホチキス止めした楽譜をいつも抱えていた君は歌がとても上手い人で。

流れるように
なんてありふれた言葉だけれど
そんなふうに唇から歌が紡がれる。

誰かにいちいちホチキス止めするなんて面倒くさいと言われたとき、
君はこう言っていたね。

「作者の気持ちも私の気持ちもここに釘付けして、最後の日にはお客さんの目を耳を、心を釘付けするためのおまじない」


秋の葉が感傷的な風に舞う頃
なんてかっこつけすぎと笑われたけれど

そんな頃
君はスカートを風に揺らしながら
遠くへ行ってしまった。

もう君の歌を隣で聴くことは出来ないのか
なんてため息を吐いたあの日から
一体いくつの秋が巡ってきたかな。


上京してきて初めての夜。
秋の風が少し強い夜。
大通りの隅っこでギターを抱えて歌っていたシンガーソングライター。

彼女も歌詞を書いた紙をホチキス止めしていた。


何故だか
君だとわかったんだ。

ホチキス止めする人なんてこの世界にはいくらでもいるだろうけれど


あの日と同じスカートを風に揺らして去っていった
流れるように歌を歌う君だって。