「そうは言っても10年前だし、細かいところまでは僕も覚えていない。瑛瑠の話を聞いて、そんなことがあったかと思うくらいには、記憶も薄い。」
まっすぐ英人は見つめてくる。
「僕が、そのエルーナだ。10年前に会ったこと、僕は覚えている。
――僕のことは忘れた?“パプリ”。」
パプリ。そう、呼ばれた。
心臓が、どくりと波打つ。
でも,と言う英人の顔は明るくはない。
「大人は、都合の悪いことは隠したがる。僕はまだ、何もわからなかったから。」
たぶん、大人にいいように言いくるめられたのだ。だから今では、何が自分の本当に見たものなのか、覚えていることなのか、わからないと言う。
「でも、ひとつだけ確かなのは。」
目元がふっと緩んだ。この顔は、見たことがある。
「君は、僕が10年前に守ると誓ったお姫さまだってことだ。」
相手の機嫌が悪い時ってあるでしょ
なんか話しかけないでオーラを出してるでしょ
なんか近寄りがたいでしょ
なんか面倒くさそうだからほっとこうって
どこかに行ってしまうでしょ
それがお互いのすれ違いの始まり。
その人の最低な所と向き合えなきゃ
最高の付き合いはできないんだよ。
光ったって付加価値あまり無いよね。きらきら光る水晶だって二酸化ケイ素の塊だし、ダイヤモンドにいたっては、ただの炭素。カーボンですよカーボン。白熱電球?所詮はガラスとタングステン鋼の複合体じゃないですかw
ところでいぶし銀って良いですよね。
人間だって同じようなもんです。(主観)
美月視点
通り魔は無事に結月姉さんによって確保された。
で、そいつの取り調べを時雨さんがしている。
私たちは隣の部屋でその様子を見ていた。
「やりたくなった。」
そう通り魔が言った。その時結月姉さんは悲しそうな目をしていた。気になったけれど、聞く勇気がなかったため聞いていない。悲しそうな目の理由を。あの日、私を助けてくれたこの人がそんな顔をしているところを直視することができないので、私は部屋を後にした。
思い出すあの日の事。とある事件によって親を失い、兄もいなくなってしまった、私は雨にうたれてた。
(このまま私は死ぬかな?)
そんなことを考えていた時、あの人は現れた。
ねぇ、
あの月は
半分欠けているの?
それとも
半分残っているの?
どっちなんだろう。
だれか、教えてくれないか。
「覚えてないのか、とはどういうことですか。」
先のお姉さんの台詞が垣間見えたためか、英人は少し顔をしかめた。
「“高圧的な態度はタブー”。」
瑛瑠も同じ表情を浮かべる。
「“最後まで話す気がないなら、思わせ振りな発言はNG”。」
切り返し、そんなやりとりをして、少し笑う。
「これ、僕たちには難しいんじゃないか?」
「そうかもしれません。」
瑛瑠は紅茶を口にし、ほっと息をついた。
「さっきの、言うつもりのなかった、出てしまった言葉なのでしょう。
聞かなかったことにしましょうか?」
でないと、しつこく聞いてしまいそうだから。
英人は首を横に振る。自嘲じみた笑みを浮かべていた。
「いや、自分の言葉には責任を持つ。」
お姉さんの影響は大きい。
「それは、実際にあったことだ。」
瑛瑠の心臓が跳ねた。
ふと外を見れば
もう暗くなってるね
この前まで夏だったのにな
おかしいななんて言いながら
今日も家へ
帰ろうか
higherなラブにlikeをして
リズム合わせて君とテレポート
やっぱりloveだ、キスを贈ろう
スキップで振り返ってほら
笑ったのラブソング口ずさんで
おかしいかしら明日も未来も
いらなくなった捨てちゃいたい
飛び出したベランダ
BGMは君がよく歌うあの歌
リップサービス弾んじゃう
だってラブもキスもステップも
魔法が解けたシンデレラのように
まぼろしだった、あいもかわらず
やっぱりlieだ、キスをして
超未来カグラ。
世界最先端の科学技術を持つ、超巨大都市。
地方からの若者の著しい人口流入のおかげで人口は現在億を超えるともいわれており、その経済はめまぐるしく上昇を続けている。無尽蔵なポテンシャルを持つ怪物都市、との異名も。
街を貫く高速交通網。天を貫かんと聳え立つ巨大ビル群。あちらこちらに人ならざる無機質な体を持つ者――自立型AI搭載ロボットの姿。道の脇にはホログラムの掲示板。眺める人の眼鏡には、AR機能が搭載されている。道行く人々の表情は明るく、そこには塵の一つさえ落ちていない清潔感のある街並み。どの店にも活気があり、働く人の目には未来への希望と憧れで満ちている。
まさに世界第一位の経済力と推進力を誇る、”怪物都市”だ。
――だった。15年前までは。
超未来カグラはただ唐突に、その世界一位の玉座から引き下ろされた。
それは超未来カグラの科学力が落ちたわけでも、他国の勢いが上回ったわけでもない。
争っていた相手がいなくなってしまったのだ。彼らの世界から。
いや、超未来カグラだけがいなくなったというべきか。
15年前のある日、超未来カグラは謎の違和感に包まれた。いつもとは空気が違うような、天がいつもより青く高く見え、都市外周部から吹く風は変に荒んでいる、ボタンを一つ、いや、その半分を掛け違えたような、妙な違和感。まるでもともとここにはいなかったような、世界に自分たちだけしかいないような、不思議な孤独感。
誰もが不安そうな顔で空を見上げ、何が起こっているのかを知りたがった。
小さな女の子が、不安がる小さな手を母親の手に隠す。
抜けるような快晴が、逆に気味悪く感じられた。
―――――
世界観の説明回なります。次回で終わる予定。
舞台は巨大都市、超未来カグラ。どのような環境で白鞘君と八式先輩がこの世界を生きているのか。興味がある方は是非。