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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 2.コマイヌ ⑨

「あの~…」
わたしのこのつぶやきに、師郎が反応した。
「あぁ、黎のことだろ? アイツ元々そんな喋んねーから。だろ?黎」
当の本人は無言でうなずいた。
「元々そーゆー奴だからねー黎は。分かっててボクらもやってるしー」
ネロは黎の方を見る。彼らはかなり仲が良いようだ。
「…とりあえず、異能力のことは大体分かった、かも…」
「うそこけ、本当は全然だろ?」
ネロはわたしをちょっと睨みつける。まさにその通りだった。
「とりあえず、異能力は生まれつきとかじゃなくて後天的なものであることと、発動すると目が光ることは分かった」
おかげで、初めて会った時と今でネロの目の色が違う理由が分かった。
「…でさ、ネロの能力は、『記憶を消すこと』?」
ふと思ったことを尋ねてみた。
「あれはボクじゃなくてネクロマンサー。『記憶を消す』というよりかは『記憶を奪う』が正しいかな」
「え それってすごくない?」
わたしの反応に、ネロは冷たく返す。
「…別に異能力があってもなくても変わらないよ? あと補足だけど、ネクロマンサーの能力は『過去その場にいた人やモノの記憶や、今いる人やモノの記憶を扱える』能力」

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パンとばらの話

わたしに水と
少しばかりのパンをください
それだけが私を生かすのです

どうか、どうか
わたしのこの大きな”よくぼう”というものを
満たしてはくれませんか

生きるためなのです
あなたの手はパンを小さくちぎって
わたしに投げるだけでいい
ゆびを水で濡らして
わたしの唇を潤すだけでいいのです

わたしが生きるために望んだ
はるかに高く乾燥したよくぼうが
わたしのうちで眠ってしまう前に
叶えてやってはくれませんか

なにせわたしは
目の前に置かれた一銭の価値をも知らないのです
何の意味を持つのかを知らぬのです

生きるためには水とパンが必要なのです
本では腹も満たせません
鉛筆は一度も削られておりません

わたしにパンをください
わたしに水をください
この僅かなおカネと引き換えに……

もしあなたが恵んでくれたなら
わたしは生きるためのおカネで
ばらを買いましょう
パンの代わりにばらを
水の代わりにばらを
あなたとともに頂くのです
ばらの棘と花びらを食すのです
そのときわたしは本当に満たされる
わたしの胃はばらで溢れかえる

パンをください
水をください
少しで構いません
生きるためなのです
いまはばらを買うおカネもないのですから

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匂い

あぁ、またこの匂いが
僕の記憶に残る匂いが
鼻をくすぐる
好きなのに、大好きなのに
何故か切なくなる匂いが
またこの季節が
大好きなのに大嫌いな匂いが
泣いてしまいそうになるよ
君を思い出す匂い

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元人間は吸血鬼(仮)になりました。 #0

手を引かれてついた先は、洋館のダイニングのような場所だった。
「で、なんであんたがここにいるのか知りたいんだよね。」その言葉に、私は頷いた。
そのあとには、信じがたい、言葉が聞こえてきた。
「多分、それは、あんたが吸血鬼だからでしょ。」
「は?」
「は?、じゃねえよ。」
「そうだよ〜。見た目完全に人間だから、吸血鬼とルシフェルぐらいだよ〜。今の姿のまま生きてたら、美味しかったのかな〜。」
「おい、変態キョンシー。」
恐ろしい会話が続いた。
「人間って怪物になるんですか?」
「生前に、よほどの、大罪を犯さない限りはならない。それか、怪物の血を吸うとかしないと、ならない。」
マジか。
「と、ところで、お二人の名前を教えてほしいのですが、いいですか?」
「じゃあ、それぞれ自己紹介すっかー。まずは、私から。私の名前は、風花ーーふうかーー。見ての通り、ゾンビ。魔法は一応使えるけど、そこのキョンシーほどじゃない。」
「これでも、風花は、上級のゾンビだからね〜。
私は、キョンシーの雨月ーーうづきーーだよ〜。大抵の魔法は使えるよ〜。」
「雨月も上級のキョンシーだからね。」
「私は彩月ーーさつきーーです。多分、吸血鬼です。魔法はわかりません。これからよろしくお願いします。」
夢か現実かわからないが、とりあえず、この場の空気に合わせることにした。

【続く】

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ふしぶしがいたい

ヘルプ、ヘルプ
筋肉痛なんだ
だーれ、か、助けて
い、たたた、た

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アイラブユウの続きから

午前3時に目が覚めて見たのは、部屋を泳ぐ魚だった
窓を開けてベランダへ
早く飛び出して、君の手を引いて、早く外へ行きたい
目の前が星だらけだ、飛び交っている
暗雲を突き抜けて、遠くまで
繋いだ手も無重力になったら
もう二度とベットからだって落っこちない
もう二度と怖い夢なんて見ないよ

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とても深い長い夢

「早く忘れてよ」
目を開けた先に見慣れた天井
さっきまでの君は夢
薄いカーテンの隙間から漏れる光
顔を振るわせて
扉を開ける

「早く忘れてよ」
忘れたくても忘れられない
あの日の君が
目を閉じればまた
ループする
「そうじゃない」
もし言えたなら
僕の未来は...

突然の別れに 動揺しか出来ずに
傷ついた君に何も出来なかった
長くて深い夢
作りモノの世界だとしても
君にちゃんと伝えたいんだって
信じてもらえるかな

「ボクを信じて」
叶わない届かない君に
こんな言葉で変わるなんて
思わないけど
あの時出来なかった事を
今させて欲しいんだよ

とても長い深い夢

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儚い

春の夕暮れのあなた
オレンジの空
夕日が沈めば逢えなくなるね
明日なんてすぐなのに
こんな気持ちにさせたあなた
何も知らず普段通り
嬉しそうに笑ってるね

苦しい 悲しい夜を越えて
あなたに出逢えた
朝は儚く
すぐに夜が私を呼ぶわ
今夜も嫌い 嫌い

日が昇るまで
その小さな時間さえ嫌
朝焼け空を眺めて
晴れかけの空 昇りかけの太陽
朝日が昇ればまたあなたに逢えるのよ

私の気持ちはいつもあなた
あなた以外見えない
真っ直ぐにあなただけを見て

長くて もどかしい夜を越えて
儚い夢の様な朝がくるの
時を止めて
そう願うほど
すぐに夜が私を呼ぶわ
今夜はあなたの側にいさせて

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バグさん

幸せな夢を見た。
それはそれは幸せな。
でも目を開ければ
そこには真っ暗な現実があった。
ねぇ、バグさん。
私の夢だけじゃなくて全てを食べてよ。
じゃないと私、
夢に縋ってしまいそう。

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はなばな

また今度という約束を 勝手に投げて
投げるだけ投げたのは僕なのに
あなたのやさしさがこわくて
逃げだしたくなる さよならの花々

あなたの思うような僕じゃないよ

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強制

ほら、あたしのことを
かわいいって言いなさい
最近、ぜんぜん言ってくれないじゃないの
君があたしを見て言ってくれないから
あたしは柄にもなく泣いたりして
恥ずかしいけど
もう虜だから

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信じきれない

明日飛行機に乗るから
墜落事故で死ぬかも、と思う。

そして

今こうして生きているのは
当たり前じゃないという
当たり前のことに気づく。

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ねえ

いつもみたいに笑ってよ
泣いた顔なんか見たくないんだ

そうなの
嬉し泣きなの
じゃあいいや
僕も一緒に泣いてあげる

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好きだよ

おはよ、ただいま、暇だよ、かまって。
可愛い、遊ぼ、楽しい、面白い。
私にたくさんの幸せをくれる君。
会えないし、電話しか出来ないけど、好きになったらいけないけど好き。
恥ずかしいから言わないけど。困らせるから言わないけど。ほんとに、好きだよ。

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アンパイ

気付けば大人になっていた。
でも、変わらないものもあって、私はそれを抱えながらまた歩いていくんだと、そう思っていた。
そう信じていたんだけれど。

現実は甘くないようで、変わらないものも、捨てなければいけないようで。
そうしないと、大人になれないようで。
誰かの言う通りになんてするもんかって、思っていたのに。

結局私は敷かれたレールの上を歩く。
その方が安心だから。
その方が幸せだから。

それが正しいとも、間違いとも言えない。
だって自分の人生だから。

それで良いなら、きっと良いんだよなあ。