「はぁ…」
「ほら、とりあえず行くよーっ」
亜理那はあきれるわたしに目もくれず、廊下の端にある階段を下り始めた。
まぁ、いっか。このままつっ立ってても意味ないし。
わたしはそう声に出さずに呟いて、彼女のあとを追うように歩き出した。
しばらく階段を下っていくと、亜理那は踊り場のところで足を止めた。
そこには焦げ茶色の髪を1本の三つ編みにした女子生徒が立っていた。
「ハルカ! 連れてきたよ!」
ハルカ、と呼ばれた少女は、わたし達の方を振り向く。
「亜理那…ってその子」
彼女はわたしの姿を見て顔をしかめた。
「なんで不見崎(みずさき)さんが…」
彼女は訝しげにわたし、そして亜理那に目を向け言った。
「アレ? ハルカ、サヤカと知り合いなの?」
「知り合いも何も…」
彼女はあきれたように呟く。
だが亜理那は、どうして彼女がそんなことを言うのか分からないのか、わたしがいる方を振り向いた。
「おい、どうしたヨースケ。お前があいつから逃げたそうな顔してたから隙を作ってやったが、何故あいつから逃げるんだ?」
影の薄い少年が二段少年に問いました。
「いや、自分でもよく分からん。けどあいつは何かヤバイ気がする。人間として必要な何かが決定的に欠けてる気がするんだ。あと普通にでかくて怖い!」
「だから何故逃げる?仮にも同級生だろ」
「いやー、よく分からん異能を持ってる俺らとしてはあんまりバレちゃいけない気がすんのよ。あいつは絶対俺らの異能について訊こうとしていたぜ」
「ふむ。じゃあ逃げた方が良いかもな。って、あいつ追い付いてきたぞ」
後ろを見ると、すぐ後ろにまであの大男は迫って来ていました。
「やべえぞあれ!やっぱ体格差的に逃げ切るのは無理だって。一歩当りの距離が違うもん!仕方ねえ、ヨータロー、俺に負ぶされ!」
「おお、やるのか、あれ」
ヨータロー、と呼ばれた方が何とかヨースケ、と呼ばれた二段少年の背中に取り付くと、次の瞬間には二人の姿は大男の真上にありました。
「ぬ、やはりお前ら……!」
大男が驚いている間に、二人は着地し、逆方向に向けて全力ダッシュを始めました(ヨータローもヨースケの背中からもちろん降りています)。
「くそう、逃がすか!」
大男が追おうとしましたが、その時またあの「カツン」という音が。そちらを大男が見て、やはり何も無いと確かめてから向き直ると、やはり二人は遠くに。
「ええい面倒くさい、こうなったら奥の手だ」
そう言って大男は右手を地に付き、力を溜めるような動作を始めました。
ニュースを見ていてふと思う
今生きているということは
いつか死ぬということ
この先どんな生き方をしても
いつまでも続かない
だからこそ今自分がやりたいこと
好きなことを楽しみたいと思う
終わりがあるから楽しめる
冷房のおかげで暑さは大丈夫でしたが、
人にうなされ、自分にうなされた夏休みでした。
私の人間は、全く完成が見えてきません。
私が遠回りをしているようでなりません。
むしろその場に寝転がって、道楽に興じているに違いありません。
そんな自分は間違っているので嫌いです。
嫌いです。
嫌いです。
嫌いです。
嫌いです。
好き、の一滴もなく、
嫌いです。
嫌いです。
嫌いです。
嫌いです。
すべてが夏の夜の夢であればいい。
暑さにうなされた悪夢であればいい。
しかし生憎、快適な冷房は夏に夢を見せることを許してくれませんでした。
冷えた四肢に、夢や希望が詰まっているとは思えません。
皮膚の下をめぐる血液の中には濃度の高い澱が蓄積されているようで、
起き上がるのにも一苦労。腰を上げるのにも一苦労。
ペンを上げるのだって一苦労なのです。
冷たい血液でした。
夢のない夏でした。
悲しいとは言いません。
私が得たものといえば虚しさだけでしょう。
その虚しさが私のひと夏に蓄えた財産なのです。
こんなものは要らなかった。
ずきんっじゃないのに
どくんって
わたしの心は大きく鳴って
じわって浮かんだ
なみだがほんとの気持ちをうつしてるの
気づきたくないから
なみだを拭うの
でももう知ってるの
わたし
あなたがすきです
海
祭り
初恋
プール
小説
青春
ああ
そらへ
そらへ
そらへ
そらへ
と
ん
で
い
け
きみが冷たくなっていた
この夏の河原の向こう側
裸足で迎えに行こうとすると
足の裏から綺麗に切れた
醒めない夢とたかを括って
迎えに行けないなら向こうに行こうと
木で括るの鼻じゃなくて首のほうで
夢か現か足元に溜まった水溜まり
映ったそっちの景色は綺麗で
幸せそうなきみの水遊び
そろそろ干上がる頃かもな
来年も飽きずにまたくるかもな
何か叫びたくなるときがある。
でも、何を叫びたいんだろう。
そういうときに限って、真夜中。
つまらない。
夜は、何か世界から隔離された感じがする。
静寂が昔の記憶を引っ張り出して、視界がぼやける。
なんとも言えない中間の感情が
夜にえぐられて、ひとりを重くする。
秒針の音が大きく聴こえる。
架空の遠くの風景を想像して、苦しくなり、寂しくなる。
昼との空気感に差がありすぎて戸惑う。
どうも夜は苦手だ。
わたしはアナタの痛みが解らない
あなたもワタシの痛みが解らない
それでもワタシのそばにいて欲しい
アナタがいてほしい