「…にしても随分あっさりと言ったわね」
「ん、何か文句でも?」
鷲尾さんの何気ない言葉に、ネロが反応した。
「文句って…てか、そこアンタが反応するトコ? 関係ないんじゃ…」
「…関係なくねぇよ…」
不意にネロの声色が変わった。
「…確かにボクが突っ込むところじゃないけどさぁ…でもよぉ…」
ネロは静かに言葉を続けながら鷲尾さんに近づく。
「でもそれはボクの勝手で―!」
嫌な予感を察したのか、耀平が身じろぎした。
でもその頃にはもう―
「―ストップ」
急に鷲尾さんがネロの腕をつかんで言った。
「…私をなめないでよね」
そうニヤリと笑った彼女の目はいわゆるベビーピンク色に光っている。
「―っ」
「私の”ハルピュイア”は『触れた生物の思考を停止させる』ものなの。こうなれば”ネクロマンサー”の鎌も引きずり出せないわね」
悔しそうな表情をするネロを見ながら、彼女はその腕をぐいと引っ張った。
ちょっとした
希望ひとつで
明日も1日
生きれちまう
何が素直で
何が天邪鬼
馬鹿にされたら
それで負け
好きって
殺されそうなくらい強い感情に
無理矢理奪った君の青春を心で噛んだ
一挙一動全てが刺さって抜けなくて
心は痛くて優しいからまた君の心を
無視してしまうんだ
我儘な僕だからもう言ってしまいたい
君を僕だけのものにしたいなんて
君はまた笑うんだろう
朝焼けた街はほんの少し生ゴミの匂い
出勤する人々 今から帰る人々
ごめんなさい
なんだか生きていてごめんなさい
という気持ちだ 何に?
どこにも溶け込めはしない
地に足はつかない
羽もないのに浮いてるみたい
蹴飛ばす準備をしているのさ
深呼吸して
革命の確率はジョーカーの数によるぜ
実は手札に揃っているの
気づいてない?
仕組みをひっくり返してしまうのに
三秒もいらない
生ゴミのパレード
サイレンが鳴って
壊すために壊せ
それで何が悪いのさ
あなたがいるだけで
眩しい世界
あなたがいるだけで
涙が出る世界
生きているだけで
悲しい世界
まっ更にして 作り直すよ
傷だらけになっても今更だろ
思い通りにやりたい放題にやるのに
来世まで待つ必要はない
息つく間もなく行き着く果てまで生き足りなくなくなるまで行くよ
この悲しみにもう用はないからね
僕は貴方の騎士であることを望んだ
いつまでも傍に控えていることはできないけど
貴方の拠り所になることはできる
踊り方を忘れてしまったという貴方の
深紅のリコリスをカーペットに
満天の星空の下で
手を取ろう
月下の貴方が誰よりも美しいと知っているから
いらっしゃいま…
ってまたお前か
もうお前の相手するのは疲れたよ
帰ってくれよ
客にそんな態度は良くないだって?
俺はお前を客だと思った事はない
いつも何にも買わないどころか
余計な物まで置いていきやがる
店に物を置いてく奴なんて客なわけあるか
忘れただけだって
そんなわけ無いだろ
忘れものなら取りに来るはずさ
お前はよく来るが
持って帰った事なんて一度も無いじゃないか
だから今日はそれを取りに来たって?
嘘だろ。
持って帰れるもんなら持って帰ってみろよ
お前が置いていったこの大量の山を
おい、待てよ。何で帰ろうとするんだよ。
しかも、また忘れ物だぞ。
おい、待てよ!冗談じゃない。また、置いていきやがった。
これらを俺にどうしろと言うんだよ。
そろそろ普通の営業にも影響が出てくる。
俺はどうしたらいいんだよ。
秋の風、さらさらと
頬を掠めたらもう一度、
あなたの横顔を思い出す
絡めた指も
抱きしめてくれる腕も
鼓膜をくすぐるその声も
こんなにこころが
あったかくなるんだって
初めて知ったの
もらったことばも
おくったことばも
毛布の中にくるんで
今夜は爪先に
あなたの色を塗って眠るよ
「けどまあ良いや。せっかくのこのこ現れてくれたんだ。今度こそこの次元から消えてもらうぜ」
ヤタガラスがその右手をヌエに向けた。しかし何も起きない。
「……チッ。またか。ホント、お前何なんだ?どんな能力を使うのかも、とにかく異端ってこと以外まだよく分かってないし、全体的に不気味で不可解なんだよな」
「だからいつも言ってるだろう?『不可解こそ俺の能力の本質だ』ってさ」
ヌエが楽しそうに返す。今度の一人称は『俺』のようだ。
「まあ今度こそ上手く行くかもしれないぜ?物は試しだ、もう一度やってみろよ」
「ええ、嫌だね。どうせまた失敗するんだ。無駄なことはしたくないんだ」
「いや、自主的能力者抹殺とかいう究極の無駄は見ないふりですかや」
突っ込んだのはマリアだ。
「まあまあまあまあ。もしかしたら今度は何か起きるかも知れないじゃない?やってみなって!」
強く推すヌエに負けて、遂にヤタガラスもしぶしぶ再び能力を使うことにした。
「どうせ無理なんだろうが、そんなに言うならやってやんよ!消し飛べ異端者!」
能力がヌエに到達する瞬間、彼の目が何色かに光ったように見られた。そして、その直後には、彼は跡形も無く消えていた。
「……何だったんだ。これまで五回やって全部見事に失敗してたんだぞ。なぜ今更消えるんだよ」
「別次元に吹っ飛んだだけだって。けど何で消えたんだろうねー?消えない方に五百円とか思ってたのに」
「賭け金どこに払うんだよ」
「さあ?しかし何故に消えたんでしょ?予想外」
「全くだ。まさに不可解だよ」