あたしいまどこ
いつ出発しようか
ああもう行かなきゃね
アレも足りないコレも足りない
伝えきれない
伝えることすらわかんない
なにがしたいんだろう
慕っちゃうから約束された関係が欲しいって
そんなにおかしいことじゃないでしょ
貴方じゃなけりゃ
人差し指口に指して
どうか誰も黙っていて
2人で迷う麓
独りで放りこまれたあたし
「お兄さん方、何をしているのですか?」
それは、今まで聞いたことがない、とても静かで、とても冷たい声だった。
その声に思わず全員がその声の主の方を向いた。
そこには、彼がいた。無表情なその目はとても冷たく、男達を見つめていた。それのためか、自然とその空間はより、一層冷たくなったように感じた。舞は思わずその雰囲気に身震いした。
「くっ、その服…お前、あそこの学生か…ちっ。」
「こいつらには、敵わねぇ、学生に見えて力は化け物だからな、こっちが危険だわ」
男達は、舞の手を壁に投げつけるように話すと足早に階段を登り消えた。しばらく沈黙が続いたあと、舞は恐る恐る彼の顔を見た。無表情だったが、先程の冷たい空気は消えていた。彼は男達の足音が消えるまで全く舞の方を見なかったが、音が消えるとサッと階段を降り、舞の元に駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか?お怪我はございませんか?」
彼は少し微笑みながら舞に話しかけた。舞は少し顔が熱くなるのを感じつつお礼を言った。
「あ、ありがとうございます。あの、この前も会いましたよね、えっと…」
「お久しぶりです。自己紹介をしていませんでした。若槻優樹と申します。貴女は?」
「舞です。ほんとに、色々ありがとうございました。あの、若槻さんは大学生…とかですか?」
「いえ、まだ高校2年生です。でも、よく大学生と間違えられます。」
「そうなんだ!私と同じだね。良かった、少し肩の荷がおりた…。」
優樹の顔もさっきより和らいでいるように見えた。
「自分のことは呼び捨てでいいですよ。では、私はこれで失礼します。どうぞ、お気をつけて。」
そう言うなり、優樹は素早く音無しに階段を駆け上がっていった。舞はしばらく踊り場に佇んでいた。
あの日、もし、再び彼と出会っていなければ、舞の人生は平凡な日々だっただろう。
公園での出来事から、一ヶ月が経った。舞の学校は夏休みに入り、舞はクラスメイトとショッピングセンターで買い物をしていた。その帰りのことである。いつも乗るバスの時間まで余裕があった舞は地下の書店に寄ることにした。地下へ向かう階段はどことなく薄暗く階段を降りるたび靴の踏み締める音が響いた。そして、踊り場まで来た時、それは起きた。書店まであと少しというところで舞は数人組の男に囲まれた。足元に酒の缶が転がっていた。
「よ〜お!姉ちゃん〜、わざわざ階段使うなんて、えらいね〜!」
「な、なんですか、やめてください。」
「てか、これって運命なんじゃね?よかったらさ、今から俺らと遊ばない?本ばっか読んでねぇさ〜ははは!!」
「や、やめて…」
舞は恐怖を覚えつつ地下の書店に向かおうと間をすり抜けた。しかし、遅かった。右も左も一瞬にして囲まれた。1人は銀色に光るものを持っていた。
「あ〜あ、釣れねぇなぁ〜、こうなったら力ずくで連れてっか!!」
「や、やめてください!!だ、誰か!助けて!!」
その時だった。
数十分後
「優樹…。それを、世間では、「一目惚れ」って言うらしい。君はその方に一目惚れしたんだ。」
「ひとめぼれ…。そうか、聞いたことがある。しかし、世間ではこのような感情を米の銘柄に例えて言うのか?」
隼斗は今、笑いを堪えることに必死だった。だが、とうとう限界だった。
「き、君は…ははは!!天然にも程があるぞ!!ははははは!!!米の…品種…って…。」
「ん?…?あ、いや!違う!少し疲れていただけだ!やめろ〜!それ以上笑うなぁ!!」
その後、お互い笑った。それは、もう、傷口が傷んでいることもわからないほどに。
「…。はぁ、笑った、笑った。」
「…。はは、一生の不覚だ。」
「…。」
「…。」
そして、ふと静寂になった時、優樹がポツリと言った。
「生きれるといいな…。」
「あぁ…。そうだな。」
酒と煙草のできない年齢のうちに、一つちょっとした企画を開きたいと思うので、参加してもらえれば幸いです。
テーマは「異能」。この語を広辞苑で引くと、以下のように出ます。
『人にすぐれた才能。』
そういうわけで、今回のテーマが指すのは、飽くまでもただの人間の起こし得る範疇で、人並外れた才能や技術のことです。人間にできること、人間にできると思うこと、理論上()人間にも可能なこと、またそれが可能な人間をテーマに、小説やらポエムやら、どちらともつかない散文やらを書いていただきたいのです。
期間は5月いっぱい。参加してくださった方は、タグの一つを『異端児たち』としていただければ、参加を確認します。
皆さんの想像力に期待しております故、是非に奮ってご参加ください。
満月はかつて望月と呼ばれた
読んで字のごとく、誰もがその満たされた姿を望んでいた。
しかしいつしかこの名前は衰退していく。
どうして?
満たされることは無くなり
“望み”から“夢”へと変わっていったからだ。
満たされない現代人は
満月に沢山の名前を付け
見上げ、その姿に夢を見る。
屋上に取り残された俺、もとい私は
その場に座り込み、数秒考えた。
“さてと…目立つって言ってもどうするか…”
あれこれと案は出て来るがどれも『いじめ』を連想するものばかりで想像するだけで吐き気がしてしまった。
「ひとまず、髪でも振り乱して遅れて行けば御の字だろ」
そう言ってゆっくりと腰を上げ歩き出した。
その頃教室では
「おい、青路、どこ行ってたんだよ」
「悪いな、少し朝から体調が悪くて屋上で休んでた」
屋上から来たことを見られていても大丈夫な嘘をつく
「あれ?屋上ってことは青路、あの陰キャにも会ったのか」
「え?あぁ闇子ちゃんか、うん、会ったよ」
隠せと言われたがここでわざとらしい嘘をつく方が疑われる気がして普通に答えた。
「朝のことといい、青路、あの時何があったんだ?」
「んー、秘密かな」
今度はわざとらしく誤魔化した。
たとえどんなに小さなことであってもあの場でのことを知られる訳にはいかなかった。
「かなって…お前そんなキャラじゃないだろ」
「可愛く誤魔化したって無駄だからな!」
そう言いながらも2人とも笑っていた。
「ほら、授業始めるぞ」
教師が入ってくる。当然闇子はまだ教室にはいない。
「あれ?青路、あの陰キャとあってたんだろ?まだ来てなくね?」
「青路、まさかお前…」
2人は予想以上にあっさりと
『桐谷青路が喪黒闇子に何かをした』
というイメージを浮かべてくれた。
しかも幸いなのは私がまだ何もしていないことだ。
「そんなに酷くはしなかったつもりなんだけどなぁ」
ここでもわざとらしくそのイメージに乗ってやる。
しかし今回はみんな信じるだろう。
これでいい、計画は怖いほどスムーズだ。
to be continued…
「生まれ変わったら何になりたい?」
『何でもいいけど君には会いたいかな』
M市基地男子寮のとある一室
隼斗は先程から隣でずっと机に顔を埋めたまま、1ミリも動かないルームメイトをあっけに取られながら見ていた。
事の顛末は簡単に言えばこうである。隼斗が部屋の自分のベットで寝ていると、ルームメイトである優樹が帰ってきたのだが…。どこかいつもと様子が違う。なぜなら、いつも誰よりも冷静沈着でほとんど無表情、無感情なあの優樹が若干頬を赤らめ、かつ微笑みながら、帰ってきたのである。それも、束の間、一瞬で無表情に戻り、そのまま机に突っ伏した。彼をこんなにも動揺させているものは一体なんなのか、隼人はただただ、気になるばかりだが、あいにく本人は微動だにせず、早30分が経った。個人の事情を探るのはあまりしたくはないが、長年、苦楽を共にしてきた仲間として、優樹をこんなにも動揺させているものが気になった隼斗は意を決して声をかけることにした。
「なぁ、優樹、あのさ、ちょっと、聞きたいことが…」
「隼斗〜!!助けてくれ〜!!」
「うん!?」
優樹に抱きつかれるままに、勢いで激しい音ともに隼斗は床にぶっ倒れたのであった。
彼はサッと屈み舞の顔を心配そうに覗き込んだ。
「大丈夫ですか?何かあったのですか?」
舞はごまかしにならないと思いつつ下を向きながら横に首を振った。舞はさらに何か聞かれるのかと身構えたが、彼は意外にもあっさりと「そうですか。今日は熱中症注意警報が出ているようなので、お気をつけ下さい。」と言うなり、足早に去っていった。
淡々として、大人ぽいのに、どこか寂しそうな後ろ姿に舞はどこか胸が締め付けられる感覚と同時に心臓が高鳴る感覚がした。
踏切に足を止められていると、ふと、目の前の少女に惹き付けられた。手提げの通学バックをリュックのように背負い、ヘッドフォンをした、ストレートボブの女子高生である。ただそれだけなのに、なぜこんなにも惹き付けられるのか。踏切が上がり、少女は歩き出した。スマホを操作し、彼女のイメージに合った曲をかける。もう少し彼女を見ていたい。少し遠回りして帰ることにする。ヘッドフォンをしているからであろうか。いや、そうじゃない。彼女を構成する、すべてが惹き付けるのだ。少女が一瞬振り返り、顔が見えそうになる。いいや、君は、振り返らなくていいんだ。その後ろ姿から想像するのが楽しいのだから。今度は、にわかに少女が足を止める。バス停だった。完璧だ。ここに、1枚の絵画が誕生した。手提げの通学バックをリュックのように背負い、ヘッドフォンをした、ストレートボブの女子高生が、バス停でバスを待つ。なんと美しいんだ。感嘆のため息がもれる。しかし残念なことに、ここで彼女とはお別れだ。怪しまれぬよう彼女を横目に見ながら通り過ぎる。とてもいい時間を過ごさせてもらった。礼を言うよ。
いつの間にか、彼女をイメージしてかけた曲は終わっていた。