北の山々を乗り越えた風が 四季を早送りさせる。 窓を叩いていた雨粒も いつのまにか、遠い過去。 この夏なにをしたか、 なにができたか。 忘れないだけじゃ きっといけないよ。 キミが知らない明日と キミがいない昨日と 世間は何一つ変わらないけど 僕の記憶から 1ピクセル、 キミの香りが 消える。
冷えた夜風。 左手で星を結び、 右手にビール。 嫌な思いをぐるぐると 流し去ってしまう苦味が 今日は役に立たない。 誰かを救いたいなんて たいそうなものではない。 誰かを笑わせてあげたいなんて 自己満に浸りたいわけではない。 ただときに、 なにも変えられなかった そんな自分の無力さが そんな言葉の軽さが 無性に腹が立つだけだ。 背中に積もる缶の数だけ 僕は世界を 君を 壊したくなるよ。
ホチキスの針一つ立たせるのと同じくらい 人の心を繋ぎとめておくのは難しい。 木枯らしに舞うスカートを押さえるのと同じくらい 人の心を映すのは難しい。 感傷的? いいえ、 現実を見ただけです。
触れれば届く、 そんな距離を 話せばわかる、 そんな想いを 見れば映る、 そんな面影を 香れば綻ぶ、 そんな世界を 気づかないまま 零れ落としてしまった 私を どうか、慈しまないでくれ。 慰めないでくれ。 その優しさが 怖いんだ。 まだ、笑ってくれたほうが 救われるのかもしれない。
自分のことは、話さない。 人には話させて。 自分のことは、認めない。 人のことは丸ばつはっきりさせるけど。 自分のことは、見せない。 人のことは見てるけど。 一生、こうやって大事なことは 何一つ言えず、 伝えたいことは 何一つ伝わらず、 拠り所も寄り添うことも 不器用を言い訳に 独りで生きていくんだろうね。 泣きたい夜と 笑えない昼の 真ん中で。
サングラスをかけたまま、 珈琲ひとくちだけ。 風が吹いた、17時
夏が終わる。 バケツをひっくり返したような雨が 夏日だった街を潤す。 コンビニの窓から眺める無数の粒が 妙に 忘れないで、 って夏が泣いてるようで もの悲しくかんじる。 読み終えた雑誌を置き ツナマヨか紅鮭か いつものように悩んでから 家路を急ぐ。
カサッと音がして振り向くと 君も振り向いた とっても乾燥した海苔の巻いてあるおむすびを 持って哀愁を含んだ目で微笑んでいた 「これ、美味しいんだよ?」 何で君はそんな顔したんだろう?? その意味なんて僕に解るはずなかった
. . . 「運命の対義語って、何だと思う?」 . . .
わたしたちの心臓は、夢は、足音は、 自分でないだれかのためだったとして それでもコーヒーは苦いままで きみの頭上にはきっと星がふる なつかしさは痛くて、やさしさも痛くて、 ぼんやり浮かぶ目映さだけが あの日の空に残っている気がする つないだ手の温度なんかよりずっと きみの瞳の奥にある世界が知りたかった さよならが上手くなったふりをして だれかのため が集まった街で息をしたら わたしもいつか本当に きみのためのなにかになれると思っていた