うたうたいの独り言
木枯らしに揺れる、街路樹。
黄色い絨毯を君は急ぐ、
そんなに急ぐと危ないのに、
そう思った瞬間に、
落ち葉に脚を取られて
君はよろける。
フーッと息を吐いて
お花屋さん、
八百屋さん、
雑貨屋さん、
順々に回る。
たくさんの荷物を抱えた君が
ようやく帰って来る。
遅いじゃん、と言えば
ごめんごめん、と買った花を生けながら言う。
すごい久しぶりだったから心配したよ、と
不機嫌に言ったが、
風が強くて落ち葉が多くてね、と掃除しながら言う。
本当だ、風が強い。
寂しい香りが風に乗って花をつく。
それから君と黙って見つめあう。
…陽が傾きかけて
もう行くね、と君は言う。
もう少しだけ…
また会いに来るから、君はそっと触れて言う。
それから小さな声で一つ呟き
立ち上がり歩き出す。
その手を引いて止めたかった。
君をそっと抱きしめたかった。
何分でも何十分でも見つめあっていたかった。
動かない身体がもどかしい。
君の香りが見えなくなった後、痛感する。
『思い出した。僕は死んだんだった。』