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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 2.コマイヌ ⑫

「もう面倒くさいしいいじゃん、この通りベラベラ喋っちゃったし、そもそもある程度時間が経って定着しちゃったから、下手に記憶を奪えないよ。―記憶は人間の人格を、魂を構築する。それを下手に改変すれば、そいつだけじゃない…社会だってブッ壊す可能性があるんだ…」
どことなくこの言葉に、彼女が”ネクロマンサー”を名乗る理由があるような、そんな気がした。
「あ、そうだ―ちょっと聞いていい?」
わたしはふと、さっき聞こうと思ったことを尋ねた。
彼らの視線が、すっとわたしに注がれる。
「みんな仲いいけどさ…どうして?」
全員が、ほぼ同時に吹き出した。
「どうしてって…なぁ?」
「こうなってるのも多分縁とかってやつだろ?」
「そもそも、縁じゃなかったらこうも年齢層バラけないだろ?」
「それな」
薄々気づいてたけど、みんな歳違うの? じゃあなんで…
「この街異能力者多いもん…みんなここに集まっちゃうから、自然とこうなるよ」
ネロがショッピングモールの床を指さしながら言う。
「ここ結構田舎だからな~どーしてもここに…」
「学校のヤツに出会った時が一番嫌だ」
「それな、おいおいどこの誰だよとか聞かれそうだしな…」
またわたしのことを放置して話を進めているから、わたしはさっき気になったことを質問する。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 2.コマイヌ ⑪

「…一応黎はちゃんと喋るからな」
驚きが顔に出ていることに気付かれたのか、師郎が真顔で言う。
黎自身は喋れないとでも思っていたのかと言わんばかりに冷たい視線を送ってきた。
「…なんか、すごいね…わたしなんかよりもずっとすごい」
「いや別にすごくなんかねーよ。某マンガや某アニメや某ラノベに出てくるヤツよりずっと地味だし、第一日常生活やっていく上では出番あんまないし」
わたしの誉め言葉に、耀平は苦笑する。わたしはそうかなと首を傾げた。
「なんだかんだ言って1番実用性あんの黎じゃね? 暗視効果なら暗い中でも便利じゃ…」
「現代社会生きる上ではあまり出番ない。あっても停電時。ぶっちゃけ師郎のが1番役立つだろ… 逆に実用性1番ないのは多分ネロの」
「ちょ、黎それはヒドイよ!」
師郎の発言を否定しながら、しれっと毒を吐いた例に、ネロは抗議する。
「んなこと言ったら1番使用率低いの耀平じゃん? ボクはちょいちょい『他人に能力使ってるとこバレたから証拠隠滅してくれ』って頼まれるけど、耀平のその能力はあんま使い道ないじゃん!」
「あるわ! 落とし物したときとか… あとさネロ、今回は自分の証拠隠滅忘れてるぞ」
多分わたしのことを指摘され、ネロは頬を膨らます。

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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 2.コマイヌ ⑩

細かく説明されると逆に意味が分からなくなる。困り果てたわたしに気付いたのか、耀平が補足してくれた。
「ま~どうやら人とかって一瞬でも1つの場所に留まってると、記憶というか感情ていうか…その手の”何か”を残していくんだってさ。それがこいつには見えるらしい」
へぇ~とわたしはうなずいた。
「じゃ、耀平や師郎は? 何か持ってるの?」
その何気ない質問に、ネロは眉を寄せた。
「…それも聞くのかよ」
「え、だって気になるじゃん」
まぁまぁまぁと耀平はネロをなだめた。そしてわたしに向き直る。
「おれのは―おれのヤツは”コマイヌ”っつーんだけど、『モノや人の行動の軌跡が見える』能力」
へーすごいじゃん、思わずそう呟くと、本人は少しわざとらしく照れた。
「で、俺のが『他者から見た自分の姿や聞こえる声を違うモノに見せたり聞こえさせたりする』能力。ま、要するに『他のモノに化けてるように見せたり聞こえさせたりする』能力だよ。―そして能力者としての名前は”イービルウルフ”。それで―」
師郎に続いて口を開いたのは、なんと―
「―『暗闇の中でも昼間と同じくモノを見ることができる』能力、要約すれば『暗視』がオレの能力。もう一つの名前は”サイレントレイヴン”」
急に黎が喋りだしたから、わたしは肝心の話の内容を理解できなかった。

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我が家の風呂場は壁に鏡が貼り付けられている。ある日私が頭を洗って、髪を流したとき、ふと鏡を見ると、鏡の中の私がニタニタ笑ってこっちを見ていた。
『やあ君、突然悪いけど、私と入れ替わる気は無いか?』
その時は寝ぼけてでもいたのか、何故かこのおかしな状況にもすんなり対応出来た。
「もし入れ替わったらどうなります?」
『敬語なんて止めてくれよ。同一人物だろ?』
「そんな気がしないですね」
『まあ特に変化は無いさ。そっちの記憶はこっちにも来るし』
「それ意味あります?」
『自分が主体となって行動することに意味があるんじゃないか』
「で、入れ替わったらやっぱり性格も逆になったりします?」
『そんなのあるわけ無いじゃん。ファンタジーじゃないんだから』
「思いっきりファンタジーの存在が何言ってるんだ」
『もし性格が反転したとして、例えば君には優しい面もあるし乱暴な面もある。柔軟かと思えば変に頑固にもなる。何も変わりゃしないよ』
「それもそうか。けど私はもうしばらくこっちにいたいんだ。今やってるゲームがもう少しでクリアできるからね。こればっかりは自力でやり切らないとつまらない」
『そう。少し残念だが、君が嫌だと言うなら無理強いは出来ない。気が向いたら言ってくれ』
「ところで、私と随分口調が違ったけど」
『……ごめんなさい結構無茶してあの喋り方してました』

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以下、会話のみで成立した短編小説

「やあ少年」
「む、何者だ貴様。我が居城に不法侵入とはなかなかの度胸だな。私は古臭き男尊女卑思想支持者だから、女には容赦しないぞ」
「なに、その辺は大した問題じゃない。…よく私が女だと分かったね」
「確かに貴様は髪も短くその若干痛いマント…いや、この場合はローブと言うべきか?それのせいで体型もよく分からぬ。しかもその低い声。常人ならば男と見紛うかも知れん。しかし私の女嫌いは相当のものでな、女は直感で分かるのだよ」
「ほう。そりゃすごい特技だな。まあどうせその性格のせいで女子が寄って来ない故の僻みも混ざっているのだろうが」
「して、何の用だ。私は今、憎き魔王を葬り世界を救うのに忙しいのだ。こればっかりは微塵も気が抜けない。下らぬ用事なら不法侵入の現行犯で通報するぞ」
「無駄だ。この家の電話線は既に切ってあるし、通信阻害電波を周囲に流した。外に連絡はつかないよ。勿論後で直す」
「何だって⁉もし私がやっていたのがオンラインゲームだったら、貴様を一生許さないところだったぞ!」
「まあまあ落ち着き給えよ少年。そんなこともまた、些細な問題なのだから」
「で、本当にお前何の用だ?そもそもお前は何者なんだ?突然私の部屋に現れおってからに」
「私は…そうさな…君にも分かるように言うと、うん。そうだ。私は未来人だよ」
「ほう、それなら納得がいく」
「信じるんだ…」
「で、何年後から来た?五年か、百年か、それとも二千年か?」
「大体七十億年後から」
「嘘をつけ。七十億年後には地球は肥大化した太陽に飲み込まれているとか何とか何処かで読んだことがあるぞ」
「ばれたか。実は今からおよそ二百五十年後から来たんだ。どうだすごいだろう!」
「ふむ。その頃には私はもう死んでいるな」
「無視かい?」
「で、お前が何者かは分かった。では用件は何なんだ?とっとと済ませて帰ってくれ。落ち着いて魔王討伐できない」
「無視なんだね…。ああそう。君には宿題をちゃんとやるように忠告しに来たんだ。ちゃんとやるんだぞ?」
「何だ。そんなことのために来たのか」
「うん」
「悪いがそれだけは私のプライドが許さん」
「君阿呆なの?」
「案ずるな。テストでは点数とれてる」
「うわー嫌な奴」
「用事が済んだなら帰れ帰れ」
「分かったよ。それじゃさよなら」